凛×原田謙太による新ユニット「ダ・ヴィンチ:ポワロ」| 島崎貴光Pも交えてクロストーク「この曲を聴いた子どもたちが、いつか“懐かしい”と思ってもらえたら」
――ダ・ヴィンチ:ポワロというユニット名は、どういう意味を持っているのでしょうか。
島崎:このアニメからスタートしたお話だったので、最初は「この作品のためだけのユニット名にしようか」って話もあったんです。
でも、アニメ側のある担当のかたが、「このプロジェクトだけで終わったらもったいないので、新しいアニソンユニットとして、ご自由に名前をつけてください」とおっしゃってくれたんです。とてもありがたいことでした。
それであれば、ちょっと珍しい名前にしたいなと。というのも、凛のプロデュースをはじめた15年前は、まだ「凛」という名前がそこまでメジャーではなかったんですね。毎回「凛」という漢字を説明してましたから。いまは増えてきているので、それも踏まえて、今回は少し変わった名前にしようと。
もともとダヴィンチという言葉は頭にあって。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ダヴィンチ・コードなどからのインスピレーションだったんですが、そのようなことを凛に話したら「私はポワロが好きだ」と言い出して。
凛:イギリスのテレビドラマの『名探偵ポワロ』が大好きなんです。
島崎:「じゃあ、くっつけちゃえばいいんじゃない?」と。それでこのユニット名になりました。はらけんには、後からの相談になってしまったんですが、「オッケーです!」と(笑)。
原田:ぜんっぜん、なんの問題もないです。僕はユニット名はなんでも良いタイプなので、島崎さんもそれを分かっていたんだと思います。歌えれば、ゆでたまごでも、雑草でも、本当になんでもいいんです(笑)。
――ユニット名はあくまで記号というか。でも、新ユニットをいちから組もうとしたら、ここまでスムーズにいかないと思うんです。この三人だからこそのチームワークなのかなと思いました。
島崎:そうなんですよね。ユニット名もそうですが、ビジュアル面、曲、個性のバランス……そういったことを考えこみすぎてしまうと思うんです。
僕は二人の声が大好きなんですね。二人にはいろいろな曲を歌ってもらってきていますが、毎回、想像を超えたものを届けてくれる。
スーパーボーカリスト同士ですし、あの僕がミックスしたときの、ワクワク感をそのままぶつければ大丈夫だろうなと思っていました。
――圧倒的な声量という意味でも、本当にぴったりなおふたりです。原田さんの声はポジティブさのようなものも秘められていて。凛さんは、ネガティブさを跳ね返すようなエネルギーがあるように感じています。お二人は、お互いの声をどのように捉えていますか?
凛:はらけんは陽のエネルギーがあるなと思います。私はポジティブとまではいかないかもしれません(笑)。
島崎::凛はネガティブガールですからね(笑)。でも闇を闇で切り裂くような、そういったパワーがあるのが凛で。はらけんは熱さを持ったボーカリストなんですが、根底はすごくマジメで謙虚で。その繊細さが歌では解き放たれる。
凛:小心者という意味では似ていますね(笑)。根は一緒というか。
原田:一緒ですね。マジメではないですけど(笑)。
――(笑) 島崎さんがおふたりのまとめ役になってるんですね。
原田:そこは助かっています。気を遣わないようにしてくれているんです。僕のことをさきほど散々褒めてくださいましたが……
島崎さんこそ、凄いかたじゃないですか。「はじまりのうた」(SMAP)をはじめ、たくさんのヒット曲を生み出している。でもすごくフランクな方で。サシで海釣りに行けると思います。海釣りは、本当に心を開いた人としか行けないので。
島崎::釣り、やらないんだよねぇ(笑)。
原田:海釣り、やられないとのことで、この話は終わりました(笑)。でも、僕はそれくらいの勢いでリスペクトしてます。
このメンバーだからこその心強さ
――「僕らがヒーロー」を聴いたとき、おふたりはどのような印象を持ちましたか?
凛:島崎氏節全開の曲ですよね。アニメの方向性に合わせたものになってて、かつ、さわやかで。
原田:デモで音源をいただいたときと、完成した音源の印象が結構違うんです。ベーシックは変わらないんですが、完成した曲には疾走感がプラスされていて、速く聴こえるんですよね。
実際の音の、このBPM130台くらいのテンポ感が、僕はあまり得意じゃないんですよ。バンドマンなので、8ビートで、BPM180~200弱のスピード感がいちばん気持ちよく聴こえるんですよ。
島崎:ああ、なるほど。僕は小室哲哉さん、凛は浅倉大介さんが好きなので、好きなビートの感覚が近いんですよね。大体BPM130~150台の16ビートです。はらけんは、バンドの8ビートの縦軸でガンガン歌ってきているので、苦手と感じてしまうのも無理はないかもしれません。
凛:勢いでいけないところがあるから、たしかに難しいテンポ感ではある気がします。
――実際に歌ってみていかがでしたか?
原田:ある程度、自分のなかでイメージを膨らませていったので、歌入れがはじまってしまえば……簡単とまではいかないですが、イメージ通りに歌うことができました。
僕のなかでライブのイメージが浮かべば歌えるんです。「親子でノリノリで、実はお母さんのほうがのってる!? 」とか、凄くリアルに想像できて。そうすると、自然と歌が生き生きするんです。
凛:現場的には和やかなムードでした。「一緒に歌えてよかったね、やっと一緒にできるね!」と言ったら「本当だね、楽しもうよ!」ってはらけんが言ってくれたことを覚えています。一緒に歌って、熱くなって。本当に楽しい時間でした。
――以前凛さんにインタビューしたとき、「レコーディングのあと、うまく歌えたのか考えすぎてしまう」というエピソードを教えてくれましたが、二人で歌うときでは、心強さもまた違うものでしたか?
▼以前のインタビューはこちら!
凛、紆余曲折の10年を経て完成させた念願の1stアルバム『凛イズム』
凛:心強かったですね。いつも歌う時は「このあと死んでも悔いの残らないものを」と思って、全力で歌っているんです。100パーセントの“それ以上”を出したいから、どうしても自分の力を疑ってしまうんですが……
はらけんのポジティブな雰囲気に救われて、自分の最大限の力を出すことができました。好きなように歌って、お互いのクセもうまく重なって。どっちの声も生きてて、良い響きだなと思いました。というか、なんか面白いなって(笑)。
原田:僕も同じことを思いましたね。ここまで綺麗に混ざるものなんだな、面白いなと。なんでなんでしょうね。歌いかたは違うけど、声に同じような成分があるのかなって。
島崎:ああ、確かに。ふたりは本来、歌いかたが全く違うんです。複数の方が歌う場合、ミックスすると、どうしても音のバランスが合わないことがあるんです。でも今回はまったく問題なく録ることができた。もしかしたら、周波数や倍音の問題もあるのかもしれないなぁ……。
――興味深いお話ですね。それは島崎さんでも分からないものなんです?
島崎:分からないですね。だから面白いですよ。
原田:面白いですよね。僕はビブラートしてますけど、彼女はこの曲ではあまりかけていないですし。
凛:だからしゃくり成分は全部私で。
島崎:そこもビックリしたんです。サビは、はらけんのビブラードが途切れた瞬間に、凛のしゃくりがくる。ふたりとも、ビブラートもしゃくりもできますし、特に役割は決めてなかったんですよ。
先に凛が録ったんですが、はらけんはそれを聴いて、本能的にビブラートにしたのかもしれないですね。プロの音楽家のかたや、作曲家を目指されているかたが、少し目線を変えて聴くと面白い曲だと思います。