夏アニメ『日本沈没2020』上田麗奈さんインタビュー|未だ嘗てない難易度の役へのチャレンジに役者としての腕が試された
涙と鼻水を垂らしながら挑んだシーン
――アフレコ現場で言われたことで、今でも印象に残っていることはありますか?
上田:朝の収録だったので、お昼は時間があるときに現場のみなさんと一緒に食べてたりもしたんですけど、アフレコが終わって、お母さん役の佐々木(優子)さんとお話したときに、私がずっと悩んでいる中で、さらっと「や~、人は本当に大変なときは泣かないからねえ」っておっしゃってて。
はい……! と(笑)。
一同:(笑)。
上田:そうです、確かに! ってなって。
よく監督方からも、「ここでは歩はまだ泣かないです」といったディレクションを頂いていました。こんなに大変で、それこそお父さんが大変なことになったりして、悲しくなってもいいはずなのに、悲しんでる暇がなかったんだ、と佐々木さんの言葉で気付けました。
ディレクションを受けて一生懸命やっていたつもりだったんですけど、しっかりと理解はできていなかったなとそのとき感じて。あの一言は私にとってはすごく大きかったですね。
――あの年齢であれだけの人の死を見てしまうと切り替えができなさそうなものですが、今のお話を聞いて、そうするしかない、選択肢なんてない極限状態だということを再認識させられました。
上田:そうですね。生きるために前に進むしかないってことなんですよね。
――お話を聞いていると、もう一度観たくなってきました……!
上田:私もそんな気持ちになって(笑)。「もっかいやりたい!」と。
一同:(笑)。
――そういったビジョン、想像力が頭の中にある監督はやはり天才ですね。
上田:本当にそう思います。そしてその周りを固める役者さん、スタッフのみなさんも、そのビジョンをしっかり把握していたわけですから……本当にすごい現場でした。
――心身ともにとても大変なアフレコ現場だったことが伝わってきます。自分のモチベーションを保つために意識したこと、やったことなどは何かありますか?
上田:もう全然なにも思いつかなかったので、とにかく不安な気持ちで毎週アフレコに向かって(笑)。
ほかの作品ももちろんそうなんですけど、一生懸命台本を読みました。この作品に関しては特に何度も何度も読み返しましたね。
とにかく準備をたくさんするということしかできることがなかったんです。それでも及ばないことばかりでしたけど、そういう風に頑張りました。
――お疲れ様です……!
上田:いえいえいえ! そんな。
――それだけの苦労があっただけに、最終話のアフレコは、悔しさもありつつ、達成感もあったんじゃないでしょうか。
上田:ありましたけど、一番最後に録ったシーンが泣いているところだったんです。歩はずーっと泣かなかったのに最後に大泣きするというシーンで、私はそれをアフレコの途中でやるとたぶん次にいけない、というのがなんとなくわかっていたんです。絵理子さんにお願いして、「このシーンだけ最後に録っていただいてもいいですか?」とお伝えして。
みなさんがクランクアップされたあと、ひとり残って鼻水をずびずび垂らしながら、涙をぼろぼろ流しながら大泣きしていたんですけど、そうしたら、みんなとの思い出がどんどん溢れてきて。
終わった達成感とか、苦しかった、悔しかったと思うこと以上に、家族、仲間への「愛しい」気持ちで最後は終わりました。
歩も「どこでよりも誰とが大事」ということを言っていましたけど、まさしくその通りうだなと。
――すさまじい思いがラストシーンからは伝わってきました。2回目になりますが本当にお疲れ様です……!
上田:(笑)ありがとうございます。
――終わったあとも、普段とは違う不思議な気持ちだったんですね。
上田:そうですね。やっぱりリアリティのある作品だというのもありますし、苦しみながらも歩とともに歩んできた期間があったので、自分が歩なのか上田なのか、もう最後は分からなくて(笑)。ふわふわしながら帰りました。