【そろそろBLのこと知ってみませんか?】いまさら聞けない商業BLの世界!「アニメイト編集部BL塾」開校【前編】
近年盛り上がりが急激に加速している「ボーイズラブ(通称、BL)」。20年以上前は秘匿性の高かったジャンルが、過渡期を迎えていた。
ところが、アニメイトタイムズ編集部員の石橋さんはほとんどBLに触れてこなかった様子。BLの知識はほぼないに等しい。アニメイト社員ともあろうものが、このままでは波に乗り遅れてしまう。やばい、やばすぎる。
……ということで、「アニメイトタイムズ編集部員にBLのアレコレソレを教えて!」と急遽助っ人を要請。「アニメイト編集部BL塾」と題して、BL塾の開校に踏み切った。
今回の企画では、BL通のライター・阿部裕華が先生役となり、BLの世界をいちから初心者の方に向けてご案内。BLを知りたい! もっと深く知りたい! と思っている読者のみなさんは、石橋さんとともに生徒気分でお楽しみを。
※BL事情は諸説あるため、本企画には個人的見解も含まれています。
※一部、R-18の作品も紹介しています。
<登場人物>
●阿部裕華
フリーのライター。本企画の助っ人。石橋さんの飲み友達。BL愛好歴15年。『好きなものは好きだからしょうがない‼』に衝撃を受け、BLへ沼落ち。黒髪メガネ受けが登場する商業BLマンガは一通りチェックする。今回の先生役。
●石橋悠
アニメイトタイムズの編集部員。HIPHOPと百合と某王国を愛する。アニメ化したBL作品などを少し見てはいるが、ズブの素人と言っていいレベル。今回の生徒役。
連載:BL塾
アニメイトタイムズで連載中の「BL塾」が書籍化決定! 表紙イラストは森下suu先生! 書き下ろしを含めた決定版です! アニメイト特典は表紙イラストのカラーペーパー!連載バックナンバー
画像をクリックすると、関連記事にとびます。そもそも「BL」とは?
石橋:今日はよろしくお願いします。阿部さんをお呼びしたのには理由がありまして……。恥ずかしながらアニメイトタイムズの編集部員ではあるものの、全くBLに詳しくなくて……。
今、BLはいろんな楽しみ方ができるようになってきて、「BLが好きです」と大手を振って言える機会も少しずつ増えてきているじゃないですか。これからさらに「BL」というワードを聞く機会が増えると思っています。
だから、この機会に読者のみなさんと一緒にBLの勉強ができればいいなと。じゃあ誰に聞こうかと考えたときにパッと思いついたのが阿部さんだったんですよ。なので、教えてください!! センセイ!!
阿部:先生と呼ばれるのはおこがましいのですが……うれしいです! ちなみに石橋さんはBL作品をどれだけご存知ですか?
石橋:以前、BL作家のやまねあやの先生の取材に行くことがあって、『ファインダーシリーズ(※1)』は全部読みましたね。あれはなんかエロかったなぁ……。
あと職業柄、アニメ化になったBL作品もある程度チェックします。『ギヴン(※2)』『抱かれたい男1位に脅されています。(※3)』、あと『ヤリチン☆ビッチ部(※4)』(笑)。
▼石橋が担当したやまねあやの先生のインタビュー記事
https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1443159831
※1:ファインダーシリーズ
リブレ出版の『Be x Boy GOLD』にて連載中のやまねあやのさんの漫画作品。フリーカメラマン・高羽秋仁と実業家兼裏社会の実力者・麻見隆一の関係性を描いた作品。まるで接点も共通点もなかった二人が体を重ねる度に心が惹かれ合っていく描写が巧妙に描かれる。
※2:ギヴン
新書館の『シェリプラス』で連載中のキヅナツキによる漫画作品。2019年にテレビアニメ化。主人公・佐藤真冬を中心としたバンド仲間たちの恋愛模様が描かれる。TVアニメでは佐藤真冬を演じた矢野奨吾さんが作中のバンド「ギヴン」としてCDもリリースした。
※3:抱かれたい男1位に脅されています。
リブレの『MAGAZINE BE×BOY』にて連載中の桜日梯子さんの漫画作品。「抱かれたい男ランキング」1位を5年連続獲得している俳優・西條高人とそのランキングの座を奪った新人俳優・東谷准太がとあるきっかけで体を重ねてしまい、恋愛に発展していくストーリーが描かれる。2018年にはTVアニメ化も行われた。
◆『抱かれたい男1位に脅されています。』作品情報
◆アニメ『抱かれたい男1位に脅されています。』公式サイト
※4:ヤリチン☆ビッチ部
「Pixiv」にて連載されているおげれつたなかさんの漫画作品。主人公の高校生・遠野高志が全寮制の男子校・私立モリモーリ学園に転校し、性行為を目的とした「ヤリチン☆ビッチ部」に入部してしまうストーリーが描かれる。そのタイトル名の通り、盛っている作風が話題に。2018年にまさかのアニメ化を果たした。
◆『ヤリチン☆ビッチ部』作品情報
◆アニメ『ヤリチン☆ビッチ部』公式サイト
阿部:まさかの『ヤリ部』! 結構エッチなシーンがあるのに。
石橋:がっつりは見れなかったですけど(笑)。なので、BLに抵抗はないです!
阿部:ということは、BLが何の略かというのは……?
石橋:これはさすがにね!「ボーイズラブ」ですよ。
阿部:さすが、大正解!
阿部:“男の子(boy)”どうしという意味に取られることも多いのですが、“大人の男性(men)”どうしの恋愛作品も含めて「BL」と呼びます。
石橋:百合(※5)と同じで「BL」はあくまでも創作の中の世界のことを指すんですよね。
※5:百合
女性どうしの関係性(恋愛関係も含む)を描いた創作ジャンルの通称。ちなみに石橋の聖書的作品は『マリア様がみてる』『青い花』『ささめきこと』。
阿部:その通り。創作物というのが前提で成り立っているジャンルです。
そして、あとで詳しく言うんですが、はじめに言っておくと“BLは性描写が含まれている作品が多く存在”しています。
石橋:やっぱりエッチなジャンルなんですね。
阿部:すべてがとは言いませんが、その前提を念頭に置いてお話していきます。
石橋:エロがエンターテインメントになっていることがまずすごい……!
阿部:そうなんです。そして、そんなBLを好きな我々を、世間一般はこのように呼びます。
阿部:勘違いされる方も多いのですが、オタクの女性・男性だからBLが好きなのか、というと違います。
石橋:これは読者のみなさんも経験したことがあるかも。僕もそこそこオタクやってきましたけど、ちょうど「腐女子」という言葉が流行った時期に、オタクのことをよく知らない人から「お前も腐ってるの?」と言われたことがあります。
阿部:ここ勘違いされやすいんですよね。そもそも腐女子の言葉が生まれたのは「何でもすぐにBLと紐づけてしまう自分たちは腐っている」という自虐から(諸説あり)ですが、「BLが好きなことは後ろめたいことじゃない」という人も最近は増えています。
石橋:「腐女子」って、文字面は良くないですけど、口に出すとキャッチーなんですよね。「フジョシ」って言いやすいもん。だから流行ったのかも。
阿部:語呂がいいですよね。あと、リアルと結びつけてしまう人が少なからずいるのが呼称の理由かもしれません。創作物として割り切って楽しむことが重要ですからね。
私個人としては腐女子・腐男子の表現が嫌なら「BL愛好家(愛好者)」と呼べばいいのでは? と思っています。
石橋:いいですね! オシャレな感じがします(笑)。好きという気持ちは等しく素晴らしいですから。
BLを好きな理由は多様
阿部:そんなBL好きが「なぜBLを愛しているのか」。
阿部:上に挙げたのは、あくまでも私や、私の周りにいるBL好きな女性から聞く理由の一部です。最近では、BL好きな男性も増えているので、彼らはどのような感覚で楽しんでいるのか気になるところですね。
石橋:たしかに……。僕のライター仲間(男性)でもBL好きがいますよ。カワイイ女の子を見るのが好きな女性って多いじゃないですか。そういう風にイケメンを見るのが好きな男性もいるんですよね。
恋愛感情とか性的興奮を覚えるとかではなく、単純に美術品を見るかのような感覚で、カッコいい男性を見るのが好きなんじゃないかなと。
阿部:なるほど! BLはたくさんイケメンが拝めますからね。
そんな感じでBLを好きな理由は本当にさまざまで、正解はありません! みんな違ってみんないい。そして、ハマり方も人それぞれです。
阿部:分かりやすく説明するために「商業」と「同人」にわけて説明していきます。ちなみに私は「商業BL」が好きです。どっちも好きな方もたくさんいます。
石橋:「商業BL 」と「同人BL」は何が違うんですか?
阿部:「商業BL」は基本的にオリジナル作品が中心です。また、年齢制限を「コンテンツによる」と記載しましたが、小説・マンガ・ドラマCDは基本的に性描写があっても制限はありません。本屋さんなどのお店で普通に買えます。
性描写の割合や性的対象者の年齢によっては制限がつくこともありますね。対して、映像作品は性描写があれば制限がつきます。
一方、同人BLはオリジナルもありますが、二次創作(※6)が多いです。今回の企画での「同人BL」は、二次創作BLを指しています。そして、性描写があれば年齢制限がつきます。
※6:二次創作
主に、存在する作品の設定、世界観、キャラクターなどを利用して、個人的な創作を行うこと。
阿部:さらに数年前までは、非公式商業アンソロジー(※7)というかなりグレーなコンテンツもありました。これは業界でも著作権などで問題になって、最近ではほぼ出版されていないんじゃないかなと。ただBLの歴史としては語らないといけないなと思います。
※7:非公式商業アンソロジー
二次創作作品を一部の出版社がコミックスとして刊行していた作品群。当時の同人文化やBL文化の盛り上がりによって生まれたものだが、法的にグレーなところも多々あり、問題視されることも。こちらはまた別の話題となるので、詳しい言及は避ける。アンソロジーとは、いくつかの短編(読み切り)作品をまとめた作品集のこと。
石橋:ああ〜見たことあります!
阿部:中身は同人だけど、出版社が販売しているコンテンツです。本屋でも普通に買えてしまう。しかも、性描写があっても年齢制限はついていないという。
石橋:そういえば、いとこのお姉ちゃんが子どもの頃、某人気妖怪ものバトル漫画が大好きで、持ってない絵柄のやつを本屋で見かけて読んでみたらキャラクターどうしのBL本だった……という話を聞いたことが。
話を聞いたとき、なんで同じ棚にエッチなやつが!? と思っていたけど、そういうことか……!
阿部:古本屋だと同人誌は売れないけど非公式商業アンソロは売れてしまうので、子どもの頃に間違えて手に取って「中身がBLだ!」となっていた人の話はよく聞きますね。ここから同人BLの沼に落ちていった人も多いんですよ。
石橋:なるほど。そういう入口もあったんですね。
阿部:商業と同人では、買うコンテンツも楽しみ方も変わってくるので、最初にどのBLコンテンツと出会うかがその後の活動に大きな影響を与えてくると思います。
石橋:アヒルのひなが最初に見たものを親と思う感じですね。
阿部:たとえは置いといて、そんな感じです(笑)。今回は、商業BLに焦点をあててお話していきます。