「神楽坂怪奇譚『棲』体感型配信怪奇譚」朴璐美×佐倉綾音×早見沙織インタビュー│失敗しようがなにをしようが、その瞬間に丸ごとを賭けることが“舞台”
8月15日(土)から17日(月)までイープラスの配信サービス「Streaming+」で配信される「神楽坂怪奇譚『棲』体感型配信怪奇譚」。本作は声優の羽佐間道夫さん、朴璐美さんがプロデュースを手がけ、劇作家である藤沢文翁さんが“神楽坂”“泉鏡花”“怪奇譚”のキーワードから書き下ろした作品となっている。
アニメイトタイムズでは本作の配信を記念し、8月16日(日)13時からの公演で泉鏡花役を演じる佐倉綾音さん、女役の早見沙織さん、そしてプロデューサーを務める朴璐美さんを交えた鼎談インタビューを実施。役者として感じる舞台の魅力や、withコロナ/afterコロナ時代における演劇の新たな可能性を探っていく。
その瞬間を一緒に体感できる時間
ーー「体感型生配信」という今回の企画の背景について教えてください。
朴璐美(以下、朴):コロナ禍となった当初はデジタル配信についてもよく知らず、これまで“舞台=生”という意識しかなかったので「もう私がやりたいことはできなくなってしまったのかな……」と思っていました。
いつもお世話になっている演劇関係者の方たちがコロナ禍で演劇がなくなり、他の仕事をしなければいけないという状況を聞いた際にも「私に何かできることはないか」と考えたのですが、その時には構想もなく、重い腰が上がらない状態だったんです。
その後、羽佐間道夫さんから「璐美、劇場が悲鳴を上げている。何かやってくれないだろうか。」とお話を伺って。86歳の羽佐間さんにそれを言われたということは、奮起しなければいけない時なのだと感じて決意を固めたのですが、以前無観客での朗読劇をした際、“今の瞬間のものが1か月や2か月先に配信される”という感覚にある種の気持ち悪さを覚えたことがあって。
そうして「“生”とはなにか?」ということを考えていくうちに、「その瞬間を一緒に体感できる時間」なのだと思ったんです。だからこそ、今回の企画では生配信にこだわりたいと。とはいえ、アーカイブは残すんですけどね(笑)。
ーー「その時間帯は忙しくて観劇できない」という人にとっても、アーカイブが残るのは安心ですからね。
朴:そうですね。まだ生活が不安定な方もいらっしゃると思うので、トラブルがあった際などでもアーカイブを後から見ていただければ嬉しいです。
また今回の劇に関しては、一回見てわからなかったことも、アーカイブで二回目を見た時に「あの女の目線はこういうことだったのか!」と補完される情報もあると思うので、もし可能であれば、一回目は“生”で体感していただき、二回目で納得していただければなと思います。
ーー早見さんは今回の企画のお話があった際どのように思われましたか?
早見沙織(以下、早見):私は同じ現場で璐美さんとご一緒させていただいた際に今回のお話を伺ったのですが、前段階として、そのお声がけをいただけたことがとても嬉しくて。「こんなことが2020年に起こるんだ!」と一つ人生の大きな山場を迎えたと感じるくらいだったんです(笑)。
普段の現場でも、璐美さんがマイク前でお芝居をされている姿を後ろから見ているだけで気持ちがすごく高揚して。
朴:やばい、なにが欲しいんだろう(笑)。
早見:(笑)。でもその嬉しさの反面ですごくプレッシャーも感じていて。私はしっかりと世界観を作り込んだ今回のような舞台演劇の経験は乏しいので、そういった意味では未知数なチャレンジだなと。
プラスして、これまでの環境から一変して皆さんが一度ストップし、これから先のことを世界全体が考えている状況の中で、どんな形であれ、私は一人の役者として魂をお届けできる璐美さんが考えたこの生配信という表現のスタイルについていこうと思いました。
朴:ちょっと待って! 逆にプレッシャーかけてる!?
早見:違います違います!(笑) 今のお稽古の中でも、綾音ちゃんと二人で魂をぶつけ合える素晴らしさを感じ始めています。
ーー佐倉さんはどのような経緯で今回のお話を受けられたのですか?
佐倉綾音(以下、佐倉):私も同じ作品の現場で璐美さんとご一緒した際に「ちょっと一緒に楽しいことやらない?」とお声がけをいただいて。
朴:なんかおじさんみたいな誘い方だよね(笑)。
佐倉:(笑)。私、璐美さんに覚えていただく以前に他の作品でご一緒したことがあるんです。その時に璐美さんがポイっとゴミ箱に投げたものが入らなくて、隣にいた私がスッと拾ってゴミ箱に入れたら「ありがとう〜!」と言ってくださって。隙のない難攻不落のイメージだったお姉さまに話しかけてもらえたことがすごく嬉しくて。
私の母も璐美さんのことが大好きなので、その夜に「今日一言だけだけど朴さんと喋っちゃった〜!」「すごいじゃん!」というやり取りをしました(笑)。
それくらい勝手に慕っていた先輩だったので、そんな方に今回お誘いをいただけて、私も沙織さんと同じく“人生の山場”を迎えた気分でした。
早見:ゴミ箱のところでもね(笑)。
朴:ゴミ箱の件は本当にごめんなさい!(笑)
佐倉:そんな二度の山場を経て(笑)、二つ返事で「ぜひご一緒させてください!」とお返事をさせていただいて。
でも、私の中で朗読劇はいまだにしっくりきていないジャンルなんです。以前一度だけ別の作品に出演させていただいた際にはとても良い経験ができたんですけど、「今後は本当にご縁があった時だけにしよう」と考えていて。こんなにも早くそのご縁が訪れるとは思ってもいませんでした。
私がもともと舞台や顔出しの仕事から逃げてきたような後ろめたさを抱えてきたところもあって、自分の中であまり積極的になれるコンテンツではないのかなと勝手に思っていたんです。でも今回いろんな要素が加わり、お相手に決まったのが事務所の先輩でもあり、友達のように接してくださっている沙織さんで。それがとにかく嬉しくて。
早見:ご縁だよね。
佐倉:今は毎日台本を持ち歩いて、超前向き体勢でとてもハッピーに過ごしています。
朴:可愛いなぁ……泣けてくるよ!(笑)
早見:いろんなエピソードが出てきて面白いですね(笑)。