「神楽坂怪奇譚『棲』体感型配信怪奇譚」朴璐美×佐倉綾音×早見沙織インタビュー│失敗しようがなにをしようが、その瞬間に丸ごとを賭けることが“舞台”
失敗しようがなにをしようが、その瞬間に丸ごとを賭けることが“舞台”
ーー尺八・能管・笛など、日本の伝統音楽が演出に組み込まれているのも本作の注目ポイントの一つですよね。
朴:生の音がすごいんですよね。怪談といえば尺八であり、演奏を担当される元永拓さんが本物の音を出してくださるので、そのセッションに誘われるのではないかと。
早見:誘われますよね。実際の舞台も目の当たりにして、綾音ちゃんの姿が見られないような構図になっていたので、ヒリヒリとしたものを最後の最後まで背中で感じていくのかと(笑)。
あとはカメラへのアプローチというのもあるので、初めての感覚をいっぱい味わえるのではないかと思っています。
朴:今回私も初挑戦の生配信なので、これまで自分の目で見て作り込むことができていたものを、カメラを通して伝えることの難しさに四苦八苦していて。本当にものづくりは一人ではできなくて、演劇という総合芸術は人の想いが重なってできるものなんだなと改めて痛感しています。
カメラの中でも、単なる朗読劇を配信しているという形ではないものをなんとかできないかと模索している段階ですね。
佐倉:私も今リモートでお稽古を重ねていて、いかにこれまでの自分が生の人間の相手に頼ってきたのかをまざまざと痛感しています。ほんのコンマ数秒のタイムラグが私には耐えきれなくて「早く沙織さんの生の声をききたい」「璐美さんに生でディレクションをして欲しい」と。
リモートでは璐美さんに質問が全然できないんですよ。ききたいことはたくさんあるのに、私には隔たりが大きすぎて。私がリモート飲み会とかを一度もしたことがないからかもしれないんですけど。
朴:私もしたことないよ! “リモート飲みの帝王”みたいに思われてるかもしれないけど(笑)。でも割とリモート稽古でもいけるんだなと思って。
佐倉:私がデジタルに対しての順応力が低いからですかね(笑)。
朴:古いパソコンを引っ張り出してきたり(笑)。綾音ちゃんが最初iPhoneでやっていたから「タイムラグすごいから、パソコンでやったら?」と言ったら……。
佐倉:10年以上前に親が使っていたパソコンを引っ張り出して(笑)。
早見:使えなかったんだよね(笑)。でもカメラ越しに皆さんの日常がちょっと覗けたりもして面白かったです。
佐倉:山路さんが璐美さんにカレーを持ってきた時は「ヒャー!」となって(笑)。
早見:“新婚さん感”を感じましたよ(笑)。
朴:「自慢してるわけじゃないんだよ?」ってね(笑)。
佐倉:あとはすごく真面目に璐美さんがディレクションしてくださっている時に後ろに猫ちゃんが通って、私はそっちに目がいってニヤニヤしてしまって(笑)。
朴:なんで笑っているんだろう?と思ったらね(笑)。
早見:たまらない映像がたくさんありましたね(笑)。
ーー最後に配信を視聴される皆様へメッセージをお願いします。
佐倉:新しい試みということで、私も全体像を把握するのはこれから、もしくは本番になるのではないかと予想していますが、“想像もつかないなにか”を皆さんに体感していただけることを目指してお芝居を詰めていきたいと思っています。
“生だからこそのもの”と“生ではないからこそのもの”があると思うのですが、“ちょうどその間の空間”に皆さんをお連れできればと思っているので、よろしければお時間を作っていただき、お付き合いいただければと思います。
早見:綾音ちゃんの言うように、配信ではあるのですが“生”なので、その熱量を感じていただきたいと思います。そして、昔から知っている綾音ちゃんと二人きりで舞台に上がってぶつかり合いができることがすごく嬉しいですし、こんな機会も二度とないのではないかと思っていて。
この1日を本当に見ていただきたいと思いますし、どの日程でもその役者さんの“人間としての深淵”が垣間見えるのではないかと思いますので、ぜひ全日程お楽しみください。よろしくお願いします。
朴:コロナ禍の当初、まさか自分が配信を手がけることになるとは思ってもいませんでした。でも、コロナ禍だからこそ配信に手を出したんだと今は思いますし、考えさせられることもたくさんあって。
「これからの表現形態はどうなっていくのか?」ということを危惧するだけではなく、新たなものづくりを日々実験とトライを繰り返しながら、自分の体ごとぶつかり、体感していくことで築いていきたいという想いがあるんです。
今回どうしても“生配信”にこだわった理由が、私の中で「作ったものを後で配信・放送するというものは、舞台には存在しない」と思っているからで。失敗しようがなにをしようが、その瞬間に丸ごとを賭けることが“舞台”なんですよね。その定義だけは絶対に壊したくなくて。
もちろんやりたいことやテクニカルなことを考えれば、編集して後で配信する方が良いのかもしれない。それでも私は“生”を届けたいですし、見てくださる方々にも、“今ここで行われているこの時間”を共有して欲しい。
アーカイブは残しますが、ぜひ皆様にも“生”で。今この瞬間違う場所にいたとしても、役者とスタッフが気持ちを一つにしてやっていることを見て感じていただきたいんです。
この作品は一人の人間のものづくりへの執念であり、狂気なんですよ。それは原作者の藤沢文翁が語っている「人間が一番恐ろしい」ということで。その恐ろしさは誰の中にもあって、私はその狂気をポジティブなエネルギーにも変えることができると思っているんです。
その「なんとか繋がろうとしている」「なんとかものづくりをしようとしている」「なんとかなにかを産もうとしている」その様を皆様に見て感じていただき、「よし、明日やってやろう!」という気持ちになっていただければと思っています。
ぜひ一人でも多くの方々に“生”で見ていただき、そして“後”でアーカイブを見て補完していただければと。たとえ失敗したとしても、それはライブだからです。そしてこの二人は噛みません!
佐倉:ちょっと! 最後にデッドボールが!(笑)
早見:カ、カ、カ、カマナイ……(笑)
朴:ぜひ一番良いところで盛大に噛んでいただきたい(笑)。でも、その丸ごとをお届けできればと思います。
インタビュー・文:吉野庫之介
佐倉さん&早見さんコメント動画
「神楽坂怪奇譚『棲』体感型配信怪奇譚」作品情報
イントロダクション
2020年8月、盆───
神楽坂怪奇譚「棲」が生配信で蘇る…
「生」であることにこだわる LALSTORY
様々なジャンルの達人たちが集い
配信でしかできない「生」に挑戦し
観る者の”感覚”を貪る…。
現実とも虚構ともつかぬ
妖しくも奇妙な世界に
きっとあなたも
泉鏡花と共に誘われるであろう。
配信スケジュール
8月15日(土)
13:00公演 <泉鏡花役>畠中祐 × <女役>伊礼彼方
16:30公演 <一人二役>関智一
20:00公演 <泉鏡花役>榎木淳弥 × <女役>小野賢章
8月16日(日)
13:00公演 <泉鏡花役>佐倉綾音 × <女役>早見沙織
16:30公演 <一人二役>山路和弘
20:00公演 <泉鏡花役>斉藤壮馬 × <女役>福山潤
8月17日(月)
13:00公演 <泉鏡花役>緒方恵美 × <女役>相葉裕樹
16:30公演 <泉鏡花役>井上和彦 × <女役>安原義人
20:00公演 <泉鏡花役>梶裕貴 × <女役>濱田めぐみ
<ナビゲーター>
羽佐間道夫 朴璐美
<尺八・能管・笛生演奏>
元永拓
神楽坂怪奇譚 「棲」体感型配信怪奇譚 オフィシャルサイト
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【Streaming+】神楽坂怪奇譚「棲」体感型配信怪奇譚のチケット情報