『映画 ギヴン』中澤まさともさん、江口拓也さん、浅沼晋太郎さんインタビュー|3人が語る“替えのきかない相手を好きになること”とは?
“好き”がいくつも複雑に混ざり合っている大人組の恋愛
――TVアニメでは高校生メンバーの淡い恋が描かれましたが、今回の映画では大人組3人の切ない恋が描かれます。“替えのきかない相手を好きになる”という点で、大人組の恋愛はどのようなものだと感じましたか?
江口:“替えのきかない相手を好きになる”というのは、どの恋愛でも同じだと思います。
浅沼:確かに。
江口:誰しもが替えがきかないからこそ、向き合ってみないとわからないところがあると思うんです。
恋が実って恋人同士になったとしても、付き合うことがゴールではなくて、そこから擦り合わせて如何様になるのが人生なんじゃないかな、と。大人組の恋愛も“そういう選択肢をとったんだな”と感じます。
向き合って初めて出てくる自分の本音だったり、逆に本音があるからこそ出てこなかったり。その葛藤については、共感するところがありました。
浅沼:大人だからこそ、経験を積んだことによって「知ってしまったこと」があるんですよね。たとえば、それが劣等感につながったり、相手を邪魔したくないという気持ちに繋がったり。
中澤:やさしさともちょっと違うものですよね。
浅沼:もしかすると、知ってしまったものに対してビビっているだけかもしれませんが、相手を想うがあまりに身を引く、みたいなことは、小学生時代は思いもしませんから(笑)。
中澤:そうですね(笑)。
浅沼:好きという感情がいくつも複雑に出来上がっちゃっているんでしょうね。
中澤:僕は、大人の恋愛の究極形として、ちゃんと別れられることもその1つだと思うんです。
お互いの主張でぶつかり合って“あなたとはやっていけないから”と別れるのではなくて、お互いの事情を汲んで“一緒にいないほうが良いかもしれないね”と別れるのも、1つの恋愛の形だな、と。
それぞれの事情を知った上で、“じゃあ2人でこういう風に生きていこうか”と違う答えを導き出せたら、それはそれで大人の恋愛だと思います。
好きという感情で自分の好きだけを伝え合う恋愛とは違う、好きの先にある“一緒に生きていきたい”という思いを叶えるために、何を考え直さなければならないのかというところが大人の恋愛なのかなぁ、と。
浅沼:春樹と秋彦と雨月は大人組と言われていますけど、全然大人なんかじゃないんです。
中澤:そうなんですよね。映画の先でやっと大人になる部分があります。
浅沼:さらに大人にならないと学べないものとして“無償の愛”があります。無償の愛は、40代である僕もたどり着けていません。
江口:無償の愛は難しいです……。
浅沼:親子間やペットに対してでないと生まれない愛情なのかもしれません。
江口:実際、ペット側が何を思っているのかわかりませんが、とりあえずこっちは可愛がっているからいっかってなっちゃいますよね。
中澤:ペット側が本当はどのように思っているのか知ったら、とても悲しい思いをするかも(笑)。エサ!エサ!しか言っていなかったり(笑)
浅沼:それならまだいいよ!違う家に飼われればよかったとか思われているかもしれない(笑)。
江口:あはははは(笑)。
中澤:それは切ない~(笑)。
秋彦と雨月の場合は、失くすものがないことを前提に、音楽がそれぞれ2人にあったので、それがこじれる原因になったんだろうな、と思います。相手のためを想っていても、なかなか引けないんですよね。
浅沼:“インスピレーションでこの人だ!って思うよりは、その人の本質をリスペクトできる気持ちが大事”とよく聞きますが、秋彦と雨月はお互いにリスペクトし合っているのに、なかなかうまくいきません。
江口:そこが難しいところですよね。リスペクトすればするほど……みたいなところがあるかもしれません。
浅沼:それもあるから、恋愛としてどの始まり方が正解なのか、誰にも答えられないんだと思います。
江口:好きだけど近いからこそ言えない言葉って、やっぱりあるんですよね。距離があれば言えるような言葉でもあえて言わなかったり、言えなかったり。
その言葉を伝えることができたら、もしかしたら違う関係になったのかもしれませんが……だからこそ出てこない言葉があるのも本物なのかな、と。
そう思うと、人間って本当に複雑なんだなぁと思います。
浅沼:本当に複雑なので、僕は生まれ変わったら絶対に犬になるって決めています。
一同:(笑)。