『五等分の花嫁』『ホロライブプロダクション』注目作が続々――ブシロードTCGの“ひと味違う”戦略
コロナ禍のなかでも多くの商品が発売され、根強い人気を誇るトレーディングカードゲーム(TCG)。TCGはタイトルごとにアナログ/デジタルなどさまざまな分類ができますが、他の遊びにはない特徴的な分類のひとつに、オリジナルの世界観をベースにしたTCGと、さまざまなタイトルがひとつの舞台に“参戦”するクロスオーバー型のTCGがあることが挙げられます。
そしてクロスオーバー型TCGのトップランナーとして知られるのが、ブシロードが展開する数々のTCGです。カードゲームとしての楽しさだけでなく、「あの作品とあの作品のキャラクターが一同に会する!」「自分の好きなキャラクターや作品の名場面がカードになっている!」という楽しさも兼ね備えており、手に取った経験がある人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新型コロナウイルス感染拡大の中でも好調を維持し、多くのユーザーから支持を集めるブシロードのクロスオーバー型TCG「Reバース fou you」と「ヴァイスシュヴァルツ」のスタッフに、それぞれのTCGの魅力と独自の戦略についてお話をお聞きしました。
ブシロードの最新作・Reバースは「コラボするTCG」
「Reバース for you」(以下:Reバース)は、2019年にスタートした新しいTCG。これまでに『東方Project』や『異世界かるてっと』『ホロライブプロダクション』などのタイトルが参戦し、『アズールレーン』や『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』など、新商品の発売も続々と控えています。
Reバースが特徴的なのは、クロスオーバー型のTCGでありながら、オリジナルの世界観を持つタイトルも同時展開していることです。オリジナルタイトル『Reバース』はReバースが好きな女子高生・東山有たちをメインキャラクターにした作品で、カード商品だけでなく、アニメ『りばあす』やメインキャラクターを演じる声優さんたちによるイベントなど、メディアミックスにも積極的です。
そんなReバースの魅力について、広報担当の脇山さんはこう語ります。
「Reバースは“コラボカードゲーム”というコンセプトを全面に打ち出しています。メディアミックスでも巻き込んでいく形で、さまざまなタイトルとコラボをしていくことを中心にしたTCGという意味で、スマホゲームでの“コラボ”のイメージが近いと思います。
例えばスマホゲームのコラボでは、ゲーム中にコラボタイトルとクロスオーバーしたイベントなどが行われますが、Reバースではコラボタイトルと一緒にイベントを行ったり、8月からトライアルデッキ(構築済デッキ)が発売されている『ホロライブプロダクション』では、ホロライブというVTuber事務所に所属するタレントのみなさんにアニメ『りばあす』に特別出演していただいたりしているんです」
もちろんカードゲーム部分のこだわりも並大抵のものではないとのこと。
「カードゲームの部分で一番大切にしているのは、コラボタイトルの世界観をReバース上に再現することです。ルールはできるだけかんたんなものにしつつ、遊んでいて『この動きはこのキャラクターっぽい!』とか、作品の世界観をそのまま思い起こしていただけるように開発には特に力を入れています」
なぜReバースがこのようなこだわりを見せるのか? それはコラボタイトルを好きなユーザーの期待を裏切らないといった思いとともに、TCGそのものをあまり知らなかった人も、Reバースへの参戦をきっかけに新しくTCGを始めてほしいという思いがあるようです。
「Reバースとのコラボに興味を持っていただいた方の中には、TCGそのものをやったことのない人も多くいると思うんです。なので、Reバースで始めてTCGをプレイした人でも安心して楽しめる環境作りは、これからも力を入れ続けると思います」
Reバースは2019年のスタート時から全国で初心者講習会を積極的に行ってきましたが、2020年に入ると昨今の新型コロナウイルス感染拡大で多くのイベントが中止を余儀なくされ、脇山さんも大変悔しい思いをしたそう。
「私も『りばあす』のキャストさんとともに全国を講習会で回っていたのですが、春からは中止になってしまい……今はお店さんに最大限の感染防止対策を行っていただきながら、店舗大会や小規模な交流イベントは再開できていますが、まだまだ多くの方にReバースを知ってもらったり、もっと好きになってほしいと思っています。
なので今は、コラボタイトルごとにファンミーティングのようなイベントができないか計画しています。単純にReバースに遊ぼうというだけでなく、ファン同士でコミュニケーションを図りたい人たちでも気軽に参加できるような、そんな場を作りたいです!」
そんな脇山さんも、昨年ブシロードに入社するまでTCGをプレイしたことがなく、ReバースがはじめてのTCGでした。
「私はもともと話し下手なのですが、Reバースはカードそのものだけでなく、参戦タイトルの話題だけでもいろんな人とコミュニケーションが取れるのもいいなと思っていて。話も広がりやすいと思うので、Reバースを通じていろんな人とコミュニケーションしてみてほしいです。黙々とカードだけするのも好きなんですけどね(笑)」
ブシロードTCGの源流「ヴァイスシュヴァルツ」の先駆性
Reバースまで連なるすべてのブシロードTCGの源流といえるのが、2007年にスタートしたヴァイスシュヴァルツ。100種以上のタイトルが参戦する「キャラクターTCG」です。
年に一度の大規模イベント「しろくろフェス」には、2日累計で約2万9000人のユーザーが参加(2019年)。8月28日にトライアルデッキ+(構築済デッキ)が発売される『五等分の花嫁』をはじめ、『彼女、お借りします』や『アニメ「プリンセスコネクト!Re:Dive」』など、多くの新規参戦タイトルも控えており、勢いはとどまるところを知りません。
ヴァイスシュヴァルツがスタートから13年が経過する今でもユーザーを惹きつける理由は何か? TCG好きが高じてブシロードに入社し、ヴァイスシュヴァルツの歴史を最もよく知る1人である開発メンバーの籏野さんにお話をお聞きしました。
「ヴァイスシュヴァルツの一番の魅力は好きなタイトルのカードだけでデッキが組めて、かつ作品を越えた対戦ができることです。意外なことなんですが、ヴァイスシュヴァルツが出るまでは1タイトルにまつわるカードだけでデッキが組めるTCGって、あんまりなかったんです。いろんなタイトルのカードが1つのデッキに混ざるTCGがほとんどだったんですよ。
あと、運要素がかなり強いカードゲームであることも重要だったと思います。運が味方をすれば勝つチャンスが大きくなるTCGなので、初心者でも勝つ体験を得ることができるし、スリリングなゲームが楽しめる。大胆な運要素があるとよく言われるTCGなんですが、このゲーム性はヴァイスシュヴァルツと切っても切り離せないんです」
また籏野さんは開発に携わっていくにつれ、ヴァイスシュヴァルツにTCGの新たな可能性を見出していったそうです。
「ヴァイスシュヴァルツはコレクション性も非常に重要なんです。要は『持っているだけで嬉しい』カードであることですね。特にタイトルのファンにとっては『持っているだけで嬉しい』というのが重要だということに開発メンバーも次第に気付いていったんです。そこで独自性のあるものをやろうと、キャラクターを演じるキャストさんのサインが箔押しで入ったものなど、特別仕様のカードを積極的に作るようになりました。
当然、今のReバースもやっている、カードゲーム部分で作品の世界観を再現する試みも誰よりも力を入れてきた自負はありますが、『たとえTCGそのものやヴァイスシュヴァルツのルールを知らなくても、持っているだけで嬉しい』という価値を作り出したのは、TCGの可能性を広げた先駆だったといってもいいんじゃないかと思います。もちろん、持っているだけで嬉しいカードで、ゲームに勝ったらもっと嬉しいですよ(笑)」
またヴァイスシュヴァルツは今でも全国のカードショップやブシロードのイベントで積極的に講習会が行われていますが、それにも理由があるとのこと。
「ヴァイスシュヴァルツはタイトルごとにデッキを組んで楽しむTCGので、自分の好きなタイトルが参戦していたら、いつどのタイミングでも始められる。『いつからでも始めやすい』からこそ、初心者のための講習会は常に行っていたいんです。
一方で、いつどのタイミングでも始められるというのは『いつでも戻ってこられる』ということでもあるんです。好きなタイトルで新しい商品が発売されて、復帰したいからルールを思い出すために講習会に参加していただける方も実際いるんですよ。
なので新規参戦タイトルをきっかけにヴァイスシュヴァルツに触れていただくのも嬉しいですが、昔何かしらでさわったことがある人が復帰してくれるのも同じぐらい嬉しいですね」
これまで大会のジャッジ(審判員)などの立場で多くのユーザーと触れ合ってきた籏野さんは、そのおおらかな人柄で親しまれています。そんな籏野さんが語るように「いつからでも始めやすい」と「いつでも戻ってこられる」を両立させる懐の深さこそ、ヴァイスシュヴァルツが長年ユーザーに愛される秘訣なのかもしれません。
カードゲームそのものだけでなく、そのタイトルのファン同士のコミュニケーションの手段としても、持っているだけで楽しいアイテムとしても楽しめるTCGたち。これまで全く触れたことのない人も、自分の好きなタイトル・作品を見つけて、Reバースやヴァイスシュヴァルツをはじめてみてはいかがでしょうか?
(C)春場ねぎ・講談社/「五等分の花嫁」製作委員会 (R)KODANSHA
(C) 2017-2020 cover.corp. (C)Bushiroad