子安武人×子安光樹の親子声優対談!「令和に平成、昭和のお芝居も見せられる声優を目指す」
2020年4月1日。一本のラジオが配信された。タイトルは『武人・光樹のKOYASU RADIO』。
声優界のリビングレジェンド、唯一無二のブランドを持つ子安武人さんとそのご子息であり、2019年に声優としてデビューを飾った子安光樹さんによる冠番組である。
同番組が業界内外で話題を呼ぶと、その2ヶ月後には月イチ配信のレギュラー化が決定。現在までに4回が配信されている。
今回、アニメイトタイムズは同番組でパーソナリティーを務める子安武人さんと子安光樹さんにインタビューをする機会を得た。
役者・子安光樹さんにとって初となる媒体インタビュー。もちろん、親子対談も世界初の試みとなる。
なぜ、子安光樹さんは声優を目指したのか?子安武人さんはご子息が声優を志すと打ち明けたときにどう感じたのか?そして、彼が目指す声優像とは何か。
『武人・光樹のKOYASU RADIO』収録直後の2人に迫った。
好きなことを自由に話す親子ラジオ
――本日は武人さん、光樹さんと呼ばせて下さい。『武人・光樹のKOYASU RADIO』を第1回から聞いていると、最初は武人さんが照れたりする場面が多くて新鮮でした。一方で、光樹さんは回を重ねるごとにどんどんトークが軽快になっている印象があります。最近はちょっとずつ慣れてきた感じですか?
子安光樹さん(以下、光樹):慣れてきたというより、進行(や先の展開)が見えてきたのかなと思います。自分の事だけ考えずに「今日はお父さんがこういう事を言うのかな」ということを想像しながらしゃべる事が楽しかったり難しかったり。そういうことが考えられるようになったという点では、慣れてきたのかもしれないです。
――番組内はフリートークも多いですよね。それこそ、最初のころは何を喋っていいのかも難しかったのかなと思います。
光樹:最初は父が先行して話題を振ってくれて、それに対して自分が乗っていく形で導いてもらう部分が多くて。
今は段々時間の使い方とか、「ここは自由にしていいところなんだな」という感じがつかめてきました。こちらから話題を振って乗ってきてもらえるようになったりもしたので、少しずつ手ごたえが出てきたところかなと思います。
でも、本当にまだまだおっかなびっくりで「大丈夫かな?大丈夫かな!?」と思いながら話題を振ることもあります(笑)。
――なるほど。では、改めてになりますが今回、子安さん親子で『武人・光樹のKOYASU RADIO』をがスタートしたキッカケについて教えて下さい。
子安武人さん(以下、武人):この企画を考えてくれたのは菊池さんなので、ぜひ菊池さんから。
光樹:黒幕ですからね(笑)
※菊池晃一さん 武人さんとは旧知の仲であるプロデューサー
菊池:もともと子安さんとはずっと一緒にお仕事させていただいていて、光樹くんは小さい頃から知っていました。たまたま光樹くんが彼の事務所(ティーズファクトリー)からデビューすることを聞いて「じゃあ、ウチの作品でデビューしてよ」という話をしたんです。
その日から約1年後にエイプリルフールがあるので「エイプリルフールにラジオやったら面白そうじゃないかな?」と話を振ってみたら「面白いね」ということになったんです。一度限りの配信ではなく、最初から続けたいとは思っていました。
――最初に菊池さんからこの話が届いた時はいかがでしたか?
武人:ちょうど息子がうちの事務所に入って、声優の仕事をこれからやっていくという時期でしたね。父親という側面でも、事務所の社長という側面でも、彼にとって少しでも宣伝になればという思いは当然ありました。
光樹:僕は嬉しい反面、アニメや知名度などの実績ではまだまだな自分が、子安武人の息子としてラジオを通して皆さんの前に出ることに少し引け目があったり、恐縮したりするところもあって。
でも、実際に始めてみると、ファンの方からいただく反響やこういった取材を受ける機会もあって「楽しいな。やってみてよかったな」という感じです。
――実際にラジオを聞いてみると、『Weiβ』や『ZAZEL』の話題や十文字さん(ペリカン丸の乗員)といった往年のキャラクターが登場していました。あれは菊池さんプロデュースの番組だから登場したのでしょうか?
武人:いや、あれは勝手に僕がやっただけで、何の仕込みもプロットもないです(笑)。僕は割といきあたりばったりで何も考えずにやったりするタイプなので。たまたまいい方向に行ってくれたというだけで、あんまり考えていないですね、先のことは。だから実際問題、光樹は知らなかったわけですから。
光樹:もちろん『Weiβ』は知っていましたけど...。
武人:そう!十文字さんのネタとかペリカン丸とかは全然知らないんですよ!
――え!?そうなんですか?
武人:仕込んでやるんだったら「あらかじめ見ておけよ」とか言っておくので(笑)。思い付きでやっているものだから、素で知らないリアクションが出ますよね。
番組内でも言いましたけど、「お前そんなの知らないのか!杉田くん(杉田智和さん)のほうが知ってるぞ」とか勝手に名前を出したり。自由にやってますよ。
――そうだったのですね。
武人:ええ。以前TBSラジオでやらせていただいていた『子安・氷上のゲムドラナイト』だって、ほぼ台本なんてなかったですし。
※『子安・氷上のゲムドラナイト』1996年10月から2001年10月まで放送されたラジオ番組。パーソナリティー(DJ)は子安武人さんと氷上恭子さん。
――すごい余談なんですが、僕、『子安・氷上のゲムドラナイト』の大ファンで。学生時代に毎週聴いていました。ラジオ番組なのに『TOKYOナンパストリート』を30分やり続けたりとか思い出深いです。
※1985年発売『TOKYOナンパストリート』。恋愛シミュレーションゲームの元祖とされている。発売元はエニックス。
武人:懐かしいな!ラジオ番組なのにゲームの音と「いや!あ……あぁ!」みたいなリアクションだけを流すという(笑)。でも、僕はああいうのも面白いんじゃないのかと当時から思っていて。
――あの企画だけではないですが、非常に斬新なものが多かった印象があります。
武人:そうだね(笑)。でも、それをちゃんとしたラジオ番組でやっていたというのは、僕が一般的なラジオ番組を聞いて育った人じゃなくて、型にはまったフォーマットみたいなものをあまり知らなかったからでしょうね。好きなことをやって、楽しんでいる姿を聞いてもらったり、お届けできたりすれば、聞いている側も楽しいんじゃないか、と。
今のラジオもスタンスは変わっていないです。生っぽい感じ。決められた文章を読むこともせず、光樹が困っているところは困っているリアクションをそのまま出しています。せっかく本当の親子でやっているのだから、そういう生っぽいところを出していければ、きっとそこは面白いことになるだろうなと思います。
――確かに。武人さんのラジオが帰ってきた!って印象があったのはそういったことだったのですね。
武人:でも、本当に照れくさいんですよ!(笑)。ラジオでも言いましたが、真正面に座って顔見ながら会話する事ってそうそうないじゃないですか。だから、目の前で仕事絡みの話をしているのが恥ずかしくって!「なんでこいつと仕事絡みの話をしないといけないのか」ということが頭の中を行ったり来たりしてるし。でも「今日も収録現場まで一緒に来たしなあ」とか思うわけですよ(笑)。