Netflixオリジナルアニメシリーズ『ドラゴンズドグマ』須貝真也監督&小林裕幸プロデューサーインタビュー|ゲームとアニメ、似て異なる2つの業界の違いに迫る
Netflixの配信だからこそできた、ダークファンタジーらしい物語表現
――アニメ版の制作にあたって、表現したいテーマ的なものはあったのでしょうか?
須貝:七つの大罪というお題が最初に決まったので、その重厚なテーマに相応しい世界観・キャラクター設定を構築した上で、しっかりとダークファンタジーを描きたいという想いが一番大きかったと思います。
「人間の欲」をテーマとして描く関係上、思わず目を背けたくなるような人間の汚い部分が出てきたりもするのですが、Netflixさんでの配信であればその表現も十分にできるだろうと。今回はそういった要素にも、逃げずに正面から挑んでいます。
――確かに、いろいろな意味でギリギリの表現もありますよね。ストーリーの展開もかなり容赦がないですし。
小林:ちょっとほんわかするシーンもないわけではないのですが、やっぱり七つの大罪をテーマにしている以上、まずハッピーなお話にはならないですよね(笑)。
須貝:規制の話でいうと、男性の裸が出るシーンでは大事な部分は隠そうという話はしていました(笑)。ただ、暴力的な描写もセクシャル的な描写も、できる限りリアルに近づけるギリギリの挑戦はできたかなと思います。
――小林さんとしては、ゲームとアニメで表現したいことの違いはあったのでしょうか?
小林;カットシーンというやり方はあるのですが、ゲームでは基本的にはプレイヤーが操作するという制約があります。例えば会話シーンならキャラクターがその場に立ったまま音声が再生されるだけ……といった光景になりがちで、ついテキストを送りたくなるんですよね。
アニメはその点、台詞が長くても視聴に耐えうる演出を作れますし、ゲームだと入れられない、長尺でのアクションを演出できるのも強みです。
ゲームはできるだけプレイヤーに操作をしてもらいたいので、映像を眺めているだけの時間は減らしたいと思っていますから、ゲームの時にはできなかった表現に挑戦できたのは、僕自身も楽しかったですね。
――小林さんは共同プロデューサーとしてクレジットされていますが、お話を聞く限りだと、かなりアニメにも深く関わられているのでしょうか。
小林:そうですね。櫻井プロデューサーからの企画をいただいたスタートから終わりまで、ずっと一緒にやっていましたから。これは僕自身の希望によるものですが、脚本会議にも毎回参加させていただいていましたし、映像や設定を監修して「それは『ドグマ』らしさがあるか」という意見を出したりもしていました。
キャラクターについてはすべてアニメオリジナルなので、須貝監督に全面的にお任せしていたのですが、唯一お願いしたのは、「主人公のイーサンを赤髪にして」ということくらいでしょうか。
ゲームではエディットで変えられるんですが、キービジュアルやポスターの主人公は、剣を装備していて赤髪で……という、いかにもヒーローらしい外見で統一していたので、そこはできるだけイメージを近づけたいなと。
逆にハンナについては、できれば女性にしたいということくらいで、ほぼ監督にお任せしていました。ただ、思っていた以上に登場人物が多くなったので、監督は大変だったと思いますが(笑)。
――そんな監督としては、思い入れのあるキャラクターはいますか?
須貝:第1話に登場するルイがお気に入りです。弓を使った戦い方も少年らしくて良いなと思いますし、日本語吹替版を演じてもらった三瓶(由布子)さんの声もすごくハマっていて。
小林:ルイは、英語版の方は結構苦労もありましたね。
須貝:英語版では、最初子役の方にお願いしていたのですが、どうしても演技的な部分で問題が出てきて、配役を変更して収録をやり直したということがあったんです。そういう事情もあって、思い入れが深いキャラクターになっていますね。
――キャスティングといえば、日本語吹替版では中村悠一さんと水樹奈々さんを始め、過去のシリーズ作品に出演されていたキャストの方が大勢参加されていますが、これは意図したものだったのでしょうか?
小林:いえ、それに関しては完全に偶然です。基本的にキャスティングは音響監督さんとNetflixさんが中心となって決められたのですが、むしろ『ダークアリズン』で重要なキャラクターを演じていた沢城(みゆき)さんや菅生(隆之)さんに関しては、どちらのキャラクターも登場しないこともり、OKするかをちょっと迷ったくらいでしたから。
それでもそのお二方には出演していただきたいという想いが強かったので、お願いすることになりました。