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Netflixアニメ『ドラゴンズドグマ』須貝真也監督&小林裕幸プロデューサーインタビュー

Netflixオリジナルアニメシリーズ『ドラゴンズドグマ』須貝真也監督&小林裕幸プロデューサーインタビュー|ゲームとアニメ、似て異なる2つの業界の違いに迫る

アニメとゲーム、2つの業界の3DCGが目指す先

――近年ではフル3DCGのアニメも珍しくなくなってきていますが、3DCGといえばゲームというイメージも強いかと思います。須貝監督はゲームの3DCGに対してどう感じられていますか?

須貝:実は僕は元々ゲーム業界の出身で、『龍が如く』や『ブルードラゴン』といったタイトルに関わっていたんです。その頃は、モーションデザイナーとしてモンスターやキャラクターを手付けモーションで動かしたり、モーションキャプチャーをベースにしたアニメーションを作ったり、リップシンクで台詞にあわせて口を動かしたり、いろいろなアニメーションに関する仕事をやっていました。

その上で感じたアニメとの違いを挙げるなら、ゲームだと360°どの角度から見ても成立するモーションやモデルを作らないといけないので、チェックする回数がとにかく凄まじいんです。

その上で、動きのカクつきをなくしていったりもしないといけないので、本当に大変で……改めてゲーム業界の人はすごいなと思っています。

最近はアークシステムワークスさんやサイバーコネクトツーさんのタイトルがそうですが、アニメに絵柄を寄せたセルルックなCGも増えてきていますよね。アニメ業界にとっては脅威になりつつあるという想いもありますが、同時にいい意味での刺激も受けています。

――小林さんの方は、アニメの3DCG表現に対して感じている部分はありますか?

小林:今回サブリメイションさんと仕事をして感じたのは、3DCGであっても、あくまでもアニメ作品として作られているなと。

先程監督もおっしゃられた通り、ゲームのCGは360°トータルでのカッコよさを追求するのですが、アニメはあくまでもモニターに見えている画面の中で、最高の映像を作ろうという考え方ですよね。

先程、ケレン味を出しやすいともおっしゃられていましたが、その作り方ができる羨ましさもあります。

例えばアニメ版では、基本的にモーションはすべて手付けしているんですが、モーションキャプチャーを使った場合、どうしてもリアルな人間の動きに縛られてしまうので、アニメーションの良さを引き出しにくいんです。

主人公のイーサンがとくにそうなのですが、アニメ版の『ドグマ』では、アニメーションとして強みを生かした動きがすごく出ていて。モーションキャプチャーを使った場合は、あの表現はなかなか難しいんです。

――確かに、とくに『ドラゴンズドグマ』のようなゲームだとモーションもリアル寄りになりますから、ああした戦闘表現は難しいですよね。

小林:ゲームでもカットシーンとして作ることもできなくはないですが、基本的に最近のゲーム業界はモーションキャプチャーが主流になっていますから、そういった試みはやりにくくなっているんです。同じ3DCGでも、作り方が結構違うと改めて感じましたね。

あとは、部分的に2Dを使ったりするのも、ゲーム業界ではなかなかないことなので勉強になりました。例えば第2話で豪華な料理が出てくるシーンがあるのですが、実はそこに出ている料理は全部2Dなんです。

あとでカプコンのスタッフに、あれが2Dだということを教えると全員ビックリしていましたよ(笑)。

――そうなんですか!? まったく気づきませんでした……。

須貝:そうですね。料理のCGをすべて作るのは大変なので、描いてもらった絵にレタッチなど特殊な処理をして、3Dの画面に馴染むように落とし込んでいます。

――確かに3Dアニメでも、背景は2Dにしていたり、3Dと2Dを両方使っているものは多いですよね。

小林:そこは違和感なく画面をなじませることができれば問題ないんじゃないかなと。ワンカットしかない背景のために、1ヶ月くらいかけて3Dモデルを作ってもしょうがないですからね。

須貝:背景だけじゃなく、ほんの少ししか出ないキャラクターのモデルも作るとすごくコストが掛かりますからね。そういうところはガイド的なものに従って、作画さんに描いてもらうということを『ドグマ』でもやっています。

――「キャラクターを増やしにくい」というのは、3DCGアニメにとっては課題になりそうですね。

須貝:そうなんですよ……! キャラを増やすのであれば、できればそのキャラは物語の最後まで出て欲しい(笑)。

一同:(爆笑)。

須貝:その部分は本当に3DCGの弱点で、作画さんの力を借りるのか、演出方法を変えるのか……そこをどう乗り切るかが、頭の使い所だと思っています。

――そう考えると、『ドラゴンズドグマ』は結構贅沢な作りをしていますよね。

小林:そうだと思います(笑)。1話限りしか出番のないキャラクターがいっぱいいますからね。

――3DCGについて、例えばセルルックになっていく、より実写に近い形になっていくなど様々な進化の方向性があると思うのですが、アニメとゲームの3DCGの進化についてはどのように考えられていますか?

須貝:僕はずっとCGをやってきましたが、やはりアニメを作っているという意識が強いので、動きにしても見た目にしても、いわゆるアニメ的な表現を突き詰めていきたいんです。なので実写に近く、リアルになっていくという方向性は僕の中にはないですね。

現状のCGはいろんなことができるんですが、苦手な表現というのもあって、例えば水であったり、柔らかい布であったりというのがそれにあたります。

あとは先程もお話した、出番の少ないキャラクターや背景のCGモデルもそうですが、『ドグマ』に関していえば世界観を表現する上でどれも重要な要素なので、できるだけ目を背けずに挑戦しています。

――アニメは、よりアニメらしい独自の表現を目指すことになると。

須貝:そうですね。ただ、今回のCG表現も完全な正解だとは自分の中では思っていなくて。

アニメのCGは、(リアルから)一度情報量を削ることになるのですが、そこにさらに情報量を足しながらも、リアルに見えないようにしなければいけない。この足したり引いたりの加減が重要で、どこまで現実に寄せるべきなのかは、今も手探りの中やっていますね。

小林:ゲームについてはその両軸で、その作品がどういう表現を目指すのかにもよると思います。

例えばウチのタイトルなら、『バイオハザード』はより実写に近づけるのが正解だと思いますが、『戦国BASARA』ならアニメ的な表現の方が向いていますよね。だから進化の方向性も、タイトルごとにまったく変わってくるのではないでしょうか。

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