この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
ラストは、恒例(?)の感想文です。先生に原稿を読んでもらうというのは、なんだかいつもドキドキしてしまいますね。
今回は阿部さんのおすすめ(黒髪メガネ受け)が多いこともあり、なんと7冊も選んでしまいました! そのため、感想文も長くなっておりますのでご了承ください。ゆっくり時間があるときにでも読んでくださいね!
最近、自分のBL力が上がってきた気がしているのですが、読めば読むほどまだまだ奥が深いことがわかってきて、「こいつはすごいダンジョンに潜り込んだものだ」と毎回思います。
しかし、冒険はいつだって楽しいもの。BLという穴の深淵に眠る新たな財宝を探しに行くとしましょう。
では、今回も読んだ順にご紹介していきます……と思ったのですが、特別枠として「黒髪メガネ受け」だけはラストにご紹介していきます。
前半は今回の講義で出てきた作品から4作品、後半は「黒髪メガネ受け」から3作品をピックアップ!
登場人物の体がガッチリめな、いわゆるガチムチ系寄りの作品です。主人公の浮島(受け)が刑事、相手役の真壁(攻め)が裏組織の用心棒(?)という、なかなかにハードボイルドな内容となっています。
『REVERSE』でいいなと思ったのが「画力」「ストーリー」「エロ」の3つ!
まず「画力」についてですが、かなりリアル寄りで、筋骨隆々なBLがお好みの方にはおすすめです! 刑事と用心棒ということで、主要人物たちは鍛えられた男たち。僕から見ても「この体かっこええ!」と思うほどのアメコミのヒーローのような体型です。
細かい描写や表情の描き方も素晴らしく、キャラクターたちの心の機微がわかりやすいのもポイントです。文字が多いというわけではないのに、絵の情報量が多いため、読み終わると不思議な充足感がありました。2度3度と読むと新たな発見がある作品でもあります。
続いては「ストーリー」。浮島がとある事件を追う中で巨大な陰謀に巻き込まれていく、という王道なストーリーではありますが、その王道をBLで真正面から描いているのがすごくいいんです!
しかも浮島が危機的状況で性的な興奮を覚えてしまう(勃ってしまう)というやばいやつなのですが、このやばい悪癖のおかげで物語が進むのもおもしろいところです。BLはある程度の「エロ」要素が必要ですが、そのエロ要素がご都合主義的に突然現れるのではなく、物語にしっかり落とし込まれているのもGOOD。
そして、少し話が出てしまいましたが、「エロ」について。前述した「画力」「ストーリー」の良さも相まって、『REVERSE』の「エロ」はやばいです。そう、やばいんです……!
筋骨隆々なふたりがあられもない姿でぐちょぐちょになっていきます。なにより浮島が悪癖を発症すると「誘ってんのかな?」と思うほどのとろとろでエチエチな顔に……。こんな顔をされて受け入れない攻めはいるんでしょうか?
という感じに「画力」「ストーリー」「エロ」の三拍子が揃った『REVERSE』。とてもおすすめです! 花丸!
もはや説明不要の人気作品ですが、人気な理由を探して読んでみました。そもそも「誘い受けってなんだろう?」と思ったのもきっかけです。
読んでみた感想をずばり言うと、これめちゃめちゃおもしろいです。
ヤクザものならでは非日常感もしっかりと描かれていますし、なにより主人公の矢代(受け)がいい意味で(?)性格が破綻していて目が離せなくなります。
組の中で“幹部の公衆便所”とも呼ばれる矢代。飄々としていて、口も達者、腕も立つ感じはあるのですが、こと性癖に関してはかなり歪んでいます。常に性欲を持て余しており、入れてくれるなら誰でも良いのでは? と思ってしまうほどの淫乱(これにも理由があるのですが……)。
また、矢代が美形で儚げな印象もあり、誘い方が上手い……! こんな頭(かしら)に命令されたら僕はどうなっちゃうのでしょう?
そんな矢代の下にやってきた百目鬼力(どうめきちから、攻め)との不思議な関係が描かれる本作。これが一言では言い表せない不思議な関係です。
百目鬼は無口でぶっきらぼう、おまけに勃たないという矢代とは正反対。しかし、矢代はそんな百目鬼のことを気に入り、なんとか手駒にしようとしていきます。
この「メンツが取り柄のヤクザ社会」で行われる、素直になれない大人のBLという図式がなんとももどかしい! 早く素直になれよ! と思うのですが、そんなのできっこありません。でも早く進展してほしい……と思ってみたらもう1冊が終わってしまいました。
矢代と百目鬼はどうなってしまうのでしょうか? 大人になってしまったみなさんにおすすめの作品です。
BLでもコメディってありなんですね! と思わせてくれた作品です。タイトルが直球ですが、そこまで露骨なお色気シーンはありません。描かれるのは、思春期に訪れる悶々とした性に対する興味や欲求です。
みなさんは、性に対して「え、こういうに興味あるの私だけ……?」と思ったことはありませんか? 思春期には、大なり小なり誰しもそんな経験があると思います。
スケベなことに興味がある童貞高校生の主人公・三田村(攻め)は、爽やかイケメンクラスメイトの早見(受け)がひとりの教室で着替えているの目撃し、何かに目覚めます。「男の体なのに、なんでこんなにも興奮するんだ……!」と。
早見は万人に好かれる性格で、隠し事もなさそうなイメージ。しかし、三田村は気づくのです。人前で裸になった早見を見たことがない。高校生なら体育の授業や部活などで着替えることがあると思うのですが、早見は絶対にインナーを着用していて、その裸は秘匿されているのです。
この爽やかイケメンに隠された秘密に気づいた三田村は思いました。「これはスケベだ!」と。そこから三田村は早見に釘付けになっていきます。
BLなので紆余曲折を経て二人は結ばれます。そこからが本作の魅力! お互いに些細な勘違いや偏見ですれ違ったり、優しさのあまり深読みをしてしまって距離が離れてしまったりと、THE青春なやりとりが甘酸っぱいことこの上ない!
でも青春時代を過ごしたことのある人ならこれがわかっちゃうんですよ……。僕も「もう! なんでなの!? でもかわいい! 頑張れ!」と思いながら読んでしまいました。
しかも、そのやりとりが面白おかしく描かれるもんだから、秒で読み終わっちゃいましたよ。これが天然受けか……。性に知識がないからこそ生まれる純情な感情は、何かを忘れていた僕に気づきを与えてくれました。
こんな泣かせにくるなんて、先生ずるいよ……。と思った作品です。泣きBL(勝手に名付けた)、やられましたね。
本の帯や裏表紙にも書いてあるのでズバリ書きますが記憶喪失ものです。
主要人物は、古藤多郎(受け)と藤井貴博(攻め)の二人。古藤と藤井はセフレの関係からスタートし、晴れて付き合うことになります。同棲もはじめ、幸せが続くと思われたその最中。藤井が事故に遭い、2年間の記憶を失うことになるのです。その失った記憶の中には、二人の出会いも含まれていて……。
この時点でとんでもなく悲しいストーリーなのですが、ここからがさらにつらい。藤井の記憶を取り戻すためには、普段の生活を続けたほうが良いという医師の指示で、二人は同棲生活を再開します。
しかし、古藤にとっては同棲なのですが、記憶を失った藤井からすると「そこまで仲が良くなかった同級生となぜか“同居”している」と感じるのです。ここがつらい!
それでも献身的に藤井をかまってあげる古藤。古藤は平静を装い藤井と接していくことになります。
しかし! これはBL漫画なんだよなぁ! 性欲を抑えられなくなった古藤が見せるとろとろフェイスに藤井もぐらっときて……!
これ以上は言えねぇ……。つらいと何度も書いてしまいましたが、救いが徐々に生まれていく様子は涙なくしては読めません。体のつながりはもちろんのこと、どこかでつながっている二人が、新たな出会いを重ねていく姿がとても素敵でした。
もし恋人の記憶がなくなったら、僕らはどうなっちゃうのでしょうか。記憶以上の絆を見つける感動のストーリーをとくとご覧あれ!
※申し訳ありません。現在、アニメイトでの取り扱いがありません。
まずはじめに言っておきましょう。先生のチョイス、間違いねぇっす。センセイ、ありがとうございます。
物語のはじまりは、喜屋武真理(きやたけまさみち、受け)と佐藤陽(攻め)の偶然の出会いからはじまります。喜屋武が佐藤の86万円のコートにコーヒーをかけてしまったことから、なぜだか同居生活がスタート。
堅物で少しズレた黒髪メガネの喜屋武は司書、長髪&女装で美しい外見を持つ佐藤はアパレルブランドの経営者というかけ離れた世界にいる二人が、86万円のコートをきっかけに関係を持つことになります。
この作品の素晴らしいところは、二人がお互いの違いに嫉妬しながらも、その違いを認め合いながらゆっくりと関係性が進展していく点です。
「こういうところが好きなんだな」「これをしたら怒るのか」「今度一緒にこんなことしたいな」と、最初は小さな興味からすべての物事が動いていきます。そう、置かれた状況は特殊なれど、描かれるのはごく普通の恋愛なのです。
86万のコートがなければ関わり合うことがなかったであろう二人。そんな二人だからこそ、お互いのことに興味を持ち、お互いのことで一喜一憂していくのです。
大人の恋愛なのになんてピュアなんでしょう。いや、大人だからこそ、こんなピュアな恋愛に憧れるのです! 僕は壁になって、もどかしい二人の関係を眺めていたのでした……。
ここに書いても全く伝わらないかもしれないのですが、個人的に好きなシーンをご紹介させてください!
喜屋武と佐藤は喜屋武の部屋で同居することになるのですが、とある日に喜屋武が佐藤の髪を巻いているシーンがあってですね……。ここが良かったのでお知らせしたかっただけです。ごめんなさい。ぜひ読んでみてください。だっていいシーンなんだもの!
先生がおすすめしてくれたのが『残像スローモーション』なのですが、『黄昏アウトフォーカス』の外伝作品ということなので、どちらも読んでみました。
実はですね、この2作品が今回のチョイスで一番好きでした……。まじで先生なにもんなの? おすすめのチョイスが上手すぎてちょっと怖くなってきました。
ということはさておいて。この作品はとある男子高校の映画部を描いた作品です。寮で相部屋になった2つのカップルがそれぞれ描かれます。
まず両作品全体の雰囲気の良さからお伝えすると、映画部のメンバーが全員イケメンすぎて、目が幸せになります。こんな映画部、何も起きないわけないじゃないか!
しかも寮があるというのがまた肝で、相部屋なんて何も起きないわけないじゃないか!(僕もだいぶBL脳になってきましたね)
映画部という登場人物の彼らにとっては比較的大きなコミュニティと、相部屋の二人という小さなコミュニティのそれぞれで描かれる関係性がとても巧妙なんです。
映画部ではみんながいる中で必死に映画を作る姿に惚れ、相部屋ではよりパーソナルな部分を垣間見て惚れる。この二重構造でキャラクターが恋していく様が描かれるのです。
よくあるじゃないですか、「私だけが知っているあの人の良さ」と「みんなから評価されているあの人の良さ」は、それぞれ違った胸キュンポイントになるやつ。それです。それが丁寧に描かれているのです。
無限に感想を書けそうなので割愛して、『残像スローモーション』の黒髪メガネ受けの市川義一(黒髪メガネは何がいいのか)について、個人的にいいなと思ったポイントを話していきましょう(『86万円の初恋』でも書けなかったので……)。
まさに阿部さんが言ったように、黒髪&メガネが与えるイメージ(真面目、堅物)のキャラクターが、メガネという小道具によって物語を動かせるというのが面白いなと思いました。
メガネをかけたままなのか、外すのか、レンズが光るのか、クイッとするのか、飛んでいっちゃうのか、そんないろんなシチュエーションによって物語が動くのです。そう考えるとメガネってすごいと思いませんか?
『残像スローモーション』の市川も堅物だし、めんどくさい性格をしています。しかし、攻めの菊地原仁(きくちはらじん)にはメガネを通じて様々な表情を見せるのです。しかも、相部屋でね……!
黒髪メガネの良さも十分にわかってきた気がするのですが、『黄昏アウトフォーカス』と『残像スローモーション』はいろんな舞台装置が良すぎて、無限の可能性すら感じました。いやー天晴天晴!
長々と書いてしまいましたが、本当にいい作品なんです! みなさまも良きBLライフをお送りくださいね。
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。