アニメ『ノクターンブギ』森田と純平監督インタビュー│コロナ禍を受けての“完全リモートショートアニメ”で表現する、手のひらの中で楽しむエンタメ
ハードルは低いので、どんどん参加してもらいたい
――本作は「みんなで作るアニメ」と謳っているように、ファンコミュニティ・プラットフォーム「Fanbeats」を活用したプロジェクト展開をされているのも特徴です。
森田と:そうですね。自分ひとりでやるとなると、従来のやり方はできないんです。通常なら製作委員会を組成して出資者を募って……となるんですけど、それを「やらない」という選択肢を取ったからには、面白いと思ってくださった方々と一緒にやるしかない。
そうすれば新しい制作フローを構築できるんじゃないかと思ったんです。今は全部自分の持ち出しでやっていますけど、それも限界がありますからね。そんな時に「Fanbeats」というサービスがあると教えていただき、これならいろんなプロジェクト展開も拡散できるし、すごくいいサービスだと思って始めました。
――そうして、広告枠を購入できる『作品応援&スポンサー募集プロジェクト』などをスタートさせたわけですね。クラウドファンディングで最初に「新作アニメを作るために○○万円集める」といった方法もあったと思うのですが、そうしなかったのはなぜでしょうか?
森田と:それだと目標金額が集まらずに失敗するのは目に見えていたので、最初は自分で汗をかいて、とにかく長く続けることで認知度を徐々にでもいいからあげた方がいいと思ったんです。
僕もキャストの皆さんも、見ていただいたら絶対に面白いと思ってもらえる信念でやっているので、きっと後からついてきてくれるだろうと楽観視しています。そうやって分母が増えていったら、例えば「○○万円必要です」といった金額も夢じゃなくなるかなと。
――アニメを作るのは現実問題としてお金がかかりますし、最初はご自身の持ち出しと話していたように、大変なところからスタートしているのですね。
森田と:そういう意味では、僕はこの作品を「アニメーション作品」とは思っていなくて、「ちょっとリッチな紙芝居」ぐらいに考えているんです。
すごいアニメーション、すごい作画、すごいCG作品は大手のスタジオさんがやられているし、それよりもこの作品は本当にミニマムで、スマホで空き時間に見るぐらいの感覚のものを突き詰めていきたいと思っています。
――スマホ視聴にも絡んでくることですが、本作は縦横比が1:1ですよね。スマホ対応縦型アニメ、ということではなく1:1のスクエア画面にしたのにはどんな理由が?
森田と:最初からスマホ視聴を前提に考えていて、スマホって横持ちで映像を見たりもしますけど、通勤の時などメインは縦持ちですよね。であれば、そのまま即見られる方がいいなと思ったんです。
でも、通常の16:9で縦持ちだと表示される画面が小さいし、かといって縦長動画にしちゃうと、レイアウト的に群像劇を描くのはきついと思ったんです。部屋の中に6人いるのを縦長動画で描くのは自分の首を絞めすぎますから。
あと、もともとはYouTubeでの配信のみ考えていたんですけど、YouTubeは広告やいろんな情報が表示されてもスクエアタイプだと画面が圧縮されないんですね。そのような理由で、スクエアタイプがいいんじゃないかと思いました。
――そのあたりも、今までの常識にとらわれず柔軟なやり方でチャレンジしているわけですね。
森田と:そうですね。それこそ、途中の話数でいきなり縦長のレイアウトになってもいいと思っているんです。テレビでもないから制約はないし。そういうところも自由にやっていきたいと思います。
――森田と監督のことを知っている人だったら、縦長にしたら絶対になにか理由があるだろうと思っちゃいますけどね。キャストの方たちも監督の言葉を全く信用していないみたいですし。
森田と:瀬戸ちゃんとかに、「さらっと嘘をつく人」と言われていますからね(笑)。ただ、そういう風に言われると、本当に何も仕掛けがない時に困るんですよ……。
――理由なくなんとなくでやることもありそうです。
森田と:ありますよ。そういう時は「ああ、それはですね……」と嘘をつきます。でも、本当は何もなかったとか(笑)。
――柔軟にやっていきながら、キャストや視聴者さんみんなで作品を作っていくわけですね。
森田と:そうですね。FanbeatsにしろTwitterにしろ、「こういうのはどうですか?」という意見で面白そうと思ったものは、どんどんプロジェクト化していきたいです。『オリジナルラップ制作プロジェクト』も、ラジオに届いた「ラップをやってください」というメールから立ち上がりましたからね。そこで山下くんが「やってみたい」と快諾してくれて。「みんなで作る」という意味では、本当に参加するハードルの低い作品だと思います。
――軽い気持ちでメールしたかもしれないのに、山下さんの書いてきたラップが本格的だったのには驚きました。
森田と:彼はガチでしたね(笑)。
――そのラジオは、監督と山下さんがパーソナリティとなりYouTubeで配信されています。こちらはどのような内容でしょうか?
森田と:自宅でリラックスした状態のままZoomを使って作品の振り返りをしつつ、いろいろ脱線もしています。山下くんも「今までのどのラジオよりも楽」と言っているように、素の感じがすごく出ていると思いますね。この作品は新しい試みをしているので、わからない部分もあるかもしれませんが、本当にハードルが低いことをラジオで伝えていきたいです。
――「ラップ」のプロジェクトのように、皆さんから届いた声は今後も作品にも反映していくと。
森田と:ガンガン反映していきたいですね。
――それは嬉しいですね。『作品応援&スポンサー募集プロジェクト』の広告枠に関しても、最初が「瀬戸さんお誕生日おめでとう」でしたからね。
森田と:あれは僕もびっくりしました。広告の内容はなんでもいいですと言っていたけど、本当にすごいのが来たなと思って(笑)。でも、それを受け入れられるのが『ノクターンブギ』ですから。
――瀬戸さんが演じているキャラが反応してくれたのは、ファンにとって最高の喜びになったと思います。
森田と:最高ですよね。キャストの方たちも、本当に近い距離感で作品に関わってくれているので、昔ながらのやり方とは違う、“思い”で繋がっている部分が、こういうところにも活かされているんだなと感じています。
――プロジェクトだけでなくラジオへのメール、Twitterでの監督へのリプライなど、なにか声をあげることでどんどん参加できる可能性があると考えていいですか?
森田と:そうですね。もちろん希望全部を応えることはできないと思いますが、ぜひ言ってもらいたいです。通常は「こういう作品ができました。どうぞ!」って投げっぱなしじゃないですか。それで作品が楽しかったら、コスプレや二次創作といった熱量が発生すると思うんですね。でも、その熱量をそのまま本編に反映させられるのが『ノクターンブギ』の良さなのかなと思っています。
今後やろうと思っているのは、「シチュエーション枠」の購入です。例えば、「久結霧矢くんと桜来清(おうらいきよし)くんが喧嘩する」というシチュエーションが見たい場合は、その脚本を僕に書かせる権利を購入していただいて、実際にみんなに演じていただきます。つまり、自分が見たい内容を予約購入していただくようなシステムですね。そういうのをどんどんやっていきたいです。
――面白そうですね。ちなみに、監督が1人ではできなかったと話していた衣装についてもリクエストはありなのでしょうか? 逆に衣装がほぼない「温泉回」を見たいというリクエストとか。
森田と:本気でリクエストしてくださったら、こちらもきちんと費用計算してプロジェクト化しますよ(笑)。その時はプロの制作会社に外注することになりますが、金額が集まれば「湯けむり回」を作ることは全然できます!