アニメ『ノクターンブギ』森田と純平監督インタビュー│コロナ禍を受けての“完全リモートショートアニメ”で表現する、手のひらの中で楽しむエンタメ
新たなスタイルを活用したアニメ制作の未来図とは?
――本作のように視聴者と近く、その声が作品に実装されていくのは、監督がこれまでテレビなどをやられてきた中でも未来感を感じるのではないですか?
森田と:そうですね。僕はテレビを主戦場としてやってきたのですが、テレビだと「ネットに負けるな」「双方向性だ」などと言って、例えばTwitterのハッシュタグを使って番組で表示したりしていますよね。
でも、結局は番組の枠組の中でのことなので、本質的ではないと思っているんです。もっと本質的に、番組そのものを一緒に作ることは『ノクターンブギ』が目指しているところではあります。
――さらに、今回のように完全リモートで制作している経験が、これまでのやり方とミックスしていくこともあると思います。Zoomを使った本読みもそうですが、今後も活用していきたいことはありますか?
森田と:本来は、やっぱり集まって芝居をするのがベストだとは思っているんです。今回のやり方は、声優の「抜き録りができる技術」のすごさに甘えているというか、それありきの企画なんですよ。
逆に、アニメではキャストを集めた「本読み」ってやらないことが多いんです。スタジオを用意してスケジュールを合わせるのが大変だったりしますから。でも、オンラインのリモートでもできるよね、と。そこは今後にも使える資産になったと思います。
――確かに、舞台のように最初にみんなが集まって方向性を話し合うのは少ないかもです。
森田と:本読みには役割が何個かあると思っていて。ひとつは、テクニカルな芝居の方向合わせですね。そしてもうひとつ、「士気をあげる」という意味合いがあると思うんです。
アニメも実写も両方やった経験からすると、今のところ士気があがるのは実写の方なんですよ。やっぱり実写は実際に会って熱量を直に感じられるので、一緒に作っている感覚があるというか。アニメは分業作業も多いですし、アフレコは一番接しやすいところなのに本読みもせずにいきなりテストから始めるのは、なんだかクールだなと感じたりするんです。
「もっと愚直に一緒に作品を楽しもうぜ!」という思いがあるので、僕がやる作品に関しては本読みをやりたいんですよ。直接が難しいなら、今後はリモートでやる方法もありますからね。
――では、本作に限らず、今後のアニメ制作の未来図についてはどのようにお考えでしょうか?
森田と:僕はもうちょっと“二極化”しそうだなと思っています。先ほど言ったように、大作で本当にクオリティーの高い、言い方はあれですけど“重い”作品は大きなスタジオがどんどん作っていくだろうなと。資本力を活かして、クリエイターが作りやすい環境を整えていますから。
それにプラスして、僕が今やっているような「ミニマム規模だけど仲間内で面白いものをやる」、そういう作品も増えると思っているんです。今はいろんなツールがあるので、やろうと思えば学生でもできますし。実際にやってみるとめちゃめちゃしんどいですけど、きっとやる人が増える傾向は続くのかなと思います。
――そういう意味では、本作がひとつの試金石になるだろうなと感じます。とはいえ、まずはたくさんの人に見てもらいたいですね。
森田と:『ノクターンブギ』は本当にミニマムな規模で作っている、スマホサイズの「手のひらの中で楽しむエンタメ」だと思っています。なので、まずはただただ純粋に楽しんでもらって、「楽しい」「もっと見たい」「一緒に参加したい」と思っていただけたら、Fanbeatsなどでご支援いただいたり、企画を投げたりして参加していただけたら。そして、その経験をTwitterなどの口コミで広げていただけたら嬉しいです。
とにかく作品を見てもらって、まずは笑ってもらう。その輪が広がれば広がるほど、応援してくださる方も増えて、僕らがやれるプロジェクトも増えていく……その相乗効果で「楽しい」がどんどん増えていくので、そうなっていけたらと思っています。
――今後の展開も楽しみにしています。ありがとうございました!
[取材・文/千葉研一]
「ノクターンブギ」作品情報
GYAO!・YouTubeにて配信中
スタッフ:原作・脚本・監督…森田と純平/音楽:白戸佑輔
キャスト;夢仲魔理…瀬戸麻沙美/久結霧矢…山下誠一郎/大噛美瑠衣…吉田仁美/桜来 清…鈴木裕斗/井戸柳たま子…早見沙織/影山狩宇…小山剛志/語り部…田代哲哉
公式YouTubeチャンネル
作品応援&クラウドファンディング
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公式Instagram
クラウドファンディングにより制作決定したノクターンブギのオリジナルソング
作詞:山下誠一郎 作曲:白戸佑輔
「今宵はブギ―・ラップ」
10月後半配信予定!