アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』乾 和臣役・斉藤壮馬さんインタビュー|島﨑信長さん演じる理央と対比の効いた和臣の掛け合いや、由奈役・鈴木毬花さんのひた向きさに刺激を受けた収録
斉藤さんが感じるメインキャラクターたちの魅力とは?
――斉藤さんご自身は、和臣のどこに魅力を感じましたか?
斉藤:序盤が特に、独特なテンポ感があるというか。
例えばもし、僕が朱里ちゃんだったら、自分のことでいっぱいいっぱいになって冷静に周りが見えない時に、和臣がいてくれることで、ふと肩の力を抜かせてくれるような。
焦りや早まる気持ちが薄れていくような、そういう心地良さみたいなものをくれる人なんじゃないかなと思いますね。
あと、本心がどこにあるのかと思わせる一方で、エピソードの軸の1つにもなっている彼の「映画を撮りたい」という、好きなものに対してはすごく熱く語るみたいな純粋さ、かわいさは良いギャップだなと。
モノローグが重なってきて途中で遮られてしまうセリフだったんですけど、僕も家でチェックしながら、「たぶん要らないだろうけど、一応いっぱい語っておこうかな」と思って、台本の「光の使い方が……」というセリフの後にも何行か書き足していました。
全く使われていなかったですけどね(笑)。
一同:(笑)。
それくらい、好きなものについてなら熱く語れるということに共感しましたし、安心感とミステリアスさ、好きなものに対する純粋さみたいなところが、彼の魅力だと思います。
――ここまで和臣のお話を伺ってきましたが、他のメインキャラクターの印象や魅力についても教えてください。
斉藤:朱里ちゃんも、和臣と似ている部分があるのかなと思いますが、彼女の場合は家庭環境の要因もあって、大人と子供の狭間の状態に感じました。完全な子供にもなりきれず、かと言って大人ほど割り切れもせず。
自分が本当は感じていることを素直に表現したいんでしょうけど、ある意味、自分が少し背伸びをして大人のように振る舞わざるを得なくなっていると。
その実、その振る舞いが板に付いてしまっているからこそ、自分の本当の気持ちを自分でなかなか気付けないというような不器用さがある人だと思っています。
だからこそ、和臣とは何度か気持ちが離れたかなと思ったらまた近づいたりと、ゆっくりゆっくり距離を縮めていくやり方が、すごく2人はマッチしているのかなと思いました。
あと、後半に和臣が結構、うじうじしている感じになっているシーンもあって(笑)。
やっぱり朱里ちゃんが引っ張ってくれる形で、この2人はうまくいくのかなと思いながら、朱里ちゃんには人として共感もするし、女性としてもすごく魅力的だなと思います。
理央くんは、序盤はかなりクールに見えるけど、別にカッコつけたりスカしているわけでは全くなくて。
由奈ちゃんのことが好きだと自覚したら、そこから不器用ながら、ひたすらストレートに気持ちを伝えていくという、内に秘めた熱さや真っすぐさとのギャップが何より素敵で、カッコいい人だなと思います。
少しシャイな部分というか、まだ10代の男の子っぽい若さみたいなものはあるんですけど、これから大人になっていくにしたがって、1人の人間としてもっとカッコよくなっていくだろうし、それでいて芯にある由奈ちゃんを真っすぐ、大切に思う気持ちは変わらないんだろうなと。
ある種、クールな王子様という人ではないのかもしれないですけど、由奈ちゃんにとっては彼以上の王子様はいないだろうと思える、魅力的な人だと思いますね。
由奈ちゃんは、この作品の中で一番大きく成長しているキャラクターだと思うのですが、彼女は優しいがゆえに、人のことを考えすぎてしまって、じゃあ自分が我慢すればいいとか、自分が目立たなければいいというような選択をし続けてきたと思うんです。
そんな彼女が、他の3人や周りの人と出会って、自分の気持ちに真っすぐ向き合うことができるようになっていくという、成長物語的な側面がこの映画にはすごくあるなと思っていると同時に、由奈ちゃんこそむしろ一番王子様的というか。
一番カッコいいことを言ってくれているというか、本当に気持ちの良い、ピュアな思いを届けてくれる人なんじゃないかなと思っています。
そんな由奈ちゃんに、実は周りの3人が感化されて変化していくという話の構造にもなっているかなと思うので、一見気弱そうな女の子に思えるかもしれないけれども、実は人として最も大事な部分を持っている人なのではないかなと思います。
特に理央くんに「私を振って」と言うシーンは、あれは由奈ちゃんでなければ言えないセリフだと思いますし、大きくて、優しく受け止めてくれるような人なんじゃないかなと思います。