音楽
絶望に絶望したことのある全ての人に、ReoNa『unknown』を聴いてほしい

「それは優しいあなたのせいじゃない」。“絶望系アニソンシンガー”ReoNaとして、名もなきお歌で、名もなき絶望を歌った1stアルバム|インタビュー

先日最終回を迎えたばかりのTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』で「魂の色は何色ですか」──と問いかけ続けた絶望系アニソンシンガー・ReoNa。デビューから2年を経て、いよいよ待望の1stフルアルバム『unknown(アンノウン)』をリリースする。

タイトルトラック「unknown」は、新進気鋭のボカロP・傘村トータが手掛けたミディアムナンバー。ReoNaの“これまで”を共に作ってきた毛蟹やハヤシケイをはじめ、デビュー楽曲でも編曲を手掛けたクリエイターチームPRIMAGIC、神崎エルザ starring ReoNaとしての楽曲も手掛けるrui(fade)や草野華余子、PENGUIN RESEARCHの堀江晶太など、豪華クリエイターが集結した。全12トラック。絶望に絶望した人の経験のある人、今絶望のなかにいる人、全てに届いて欲しい。あなただけの、温かな光が灯るはずだ。

“名もなきお歌で名もなき絶望を歌う”というテーマ

──8月29日に、ソロデビューシングル『SWEET HURT』リリースから2年を迎えられ、いよいよ1stアルバムがリリースされます。この2年を振り返ってみると、どんな思いがありますか?

ReoNaさん(以下ReoNa):2年という時間は、とてつもなく長い期間のように感じていました。デビューの時は2年先の自分自身がまったく想像できなくって。ただひとつ大きな夢が叶ったその先に過ごしていく時間に、濃密な出来事、出会い、数えきれない“初めて”の経験、忘れたくないことがたくさんあって。一つひとつを大切に駆け抜けてきた2年間だったと思います。不思議な感じです。目の前の一日をありったけ過ごしてたら2年という歳月になってました。

──そうした日々を経て、待望の1stアルバムが発表されます。タイトルの「un」(アン)という響きが、ReoNaさんらしいですよね。ReoNaさんのテーマでもある“ハロー、アンハッピー”、過去のイベント名、ファンクラブ名の“ふあんくらぶなど……。

ReoNa:ありがとうございます。“らしい”と言って下さるのは嬉しいです。確かに、アンハッピーもですね。他にも「Untitled world」だったり、不安の“安”だったり……ひとつ名刺になるような一枚にしたいなと思っていました。

──未知や不明の意味を持つ『unknown』には、どんな想いが込められているのでしょうか。

ReoNa:昨年、私の原点でもある神崎エルザというキャラクターのシングル『Prologue』、私自身にフォーカスしたシングル『Null』をリリースし、全国ツアー『Colorless』を経て、それらの先にある1stアルバム。当然、初めてのアルバムで、“初めましてReoNaです”というべき方々がたくさんいて。まだ何者でない自分として、そして“絶望系アニソンシンガー”として、名もなきお歌で、名もなき絶望を歌うという意味で、『unknown』という言葉が浮かび、提案しました。

──「名もなきお歌で、名もなき絶望を歌う」っていい言葉ですね。今まで発信してない言葉だと思うですが、心のどこかにあった言葉だったのでしょうか。それとも、アルバムを制作する過程で生まれていった言葉ですか?

ReoNa:思い自体は私のなかであったんですが、言葉として形になってなかったものが、アルバムを作るなかで言葉になっていきました。言葉に救われてきたけど、言葉に悩むことも多かったんです。

でも、それでも言葉を伝えていきたいって思っていたので、“名もなきお歌で名もなき絶望を歌う”というテーマが、私らしくて、ReoNaらしいなって。制作にあたって大切にした言葉でした。でも、ものすごく意識してたかといえば、そうではなくて。クリエイターさんたちに、私の最近思っていること、私自身が言葉にしたいもの、音楽にしたいものを共有するところから始まって。本当に色とりどりな曲が集まって、見渡したときに、ひとつ芯が通った感じでした。

 

 

──「Colorless」が色づいて、色を問いかけ、そして色とりどりのアルバムが完成して。色というのは、ReoNaさんにとってひとつのテーマでもありますか。

ReoNa:自然と色を歌い続けてきたんだなと思います。自分の見ている色と、他の人の見ている色が果たして本当に一緒なのかと考えたことがある人は多いと思うんですが、色と同じように、私が認識しているモノも人も、誰かにとっては違うかもしれないなって。

私にとっては良い人でも、誰かにとっては傷つけられた人かもしれないし、私自身が忌み嫌う人でも、誰かの子であり、親であり、愛する人であるかもしれない……。自分自身の色、誰かの色、そう簡単に正解が出るものではないんだろうなって思っているんです。変わり続けて、悩み続けて、自分自身に色を重ねて、みんなには自分が何色に見えているのかなって。

──そういう意味でも、このアルバムはひとつの色に定められないかも。

ReoNa:共通する色として、ReoNaという色が入ってるんだと思います。『unknown』を一緒に作ってくれた人たちの色とReoNaの色が混じったから、色とりどりになったんだろうなって。

――楽曲作りに初めて参加した傘村トータ(LIVE LAB.)さんの存在も大きかったと思います。表題曲「unknown」の作詞作曲、「いかり」(M7)、「心音」(M8)の作詞は傘村さんが手掛けていますが、制作はどのように進みましたか?

ReoNa:傘村さんと “初めまして”をしたのは「いかり」だったんです。「いかり」は、この曲があったからこそ、このアルバムができたと思うほど、大切な曲です。

毛蟹さんが作曲された、ゆったりとした三拍子の「いかり」の歌詞を誰にお願いしようかと思っていて、のちに同じ事務所に新しくクリエイターとして所属した傘村さんにお願いしました。

お会いする前から、ボカロPとして発表されている楽曲を聴かせていただいていたのですが、痛いくらい真っ直ぐな言葉で手を差し伸べてくれる方、寄り添ってくれる言葉を紡ぐ方という印象がありました。

──「いかり」は絵本のような幸せな世界観からはじまっていきますが、急激に温度が変わっていきます。

ReoNa:そうなんです。<殴って>という言葉で、まさに殴られるかのような衝撃があります。<腸(はらわた)みたいだ、涙は>というフレーズを聞いて、“涙=腸”という表現に衝撃を受けました。

言葉をこんなにまっすぐに紡げるひとって、いったいどんな人なんだろう?と気になっていたのですが、実際にお会いしてみると、違うと思ったらちゃんと“違う”と言ってくれる、本当に真っ直ぐな方でした。だから私もそれに応えられるように、いただいた楽曲に対して、自分の思っていることや、私なりの解釈をお話しました。

実は最初はタイトルも違ったんです。「いかり」の歌詞は、傘村さんの持っている救いや優しさが詰まっていて、旧友から届いた手紙のような懐かしさを感じていました。

なかでも<昔話はよそう>という言葉には、本当に昔の友だちに話しかけられているような、それでいてひとりごとのような印象も受けて、自分が過去、ぶつけてきた“いかり”を思い出しました。

でも、私はいかりという感情を持て余すことが多いんです。心にとどめきれなくなった感情ってアウトプットしないと溺れてしまうし、言葉に出さなかったとしても、涙や体調とか、勝手に出てしまうものだと思うんです。

──ああ、確かに。でもReoNaさんの場合、持て余してしまう?

ReoNa:私の場合は、振り上げたこぶしのおろしかたが分からなくて。そもそもこぶしの振り上げ方が分からないっていう。だから、遠ざけようとしていたというか……見ないようにしてきた感情でもありました。いかりを向けられるのも怖いし、向けたあと自分が傷つくのも分かっているし。こぶしを振りあげられなかったからこそ、モノにあたってしまったりとか、間違った形で何かを成そうとして傷ついてきた、あの時の自分がこの曲で救われました。

──「心音」はどのタイミングで作られたんですか?

ReoNa:最後の最後にできた楽曲です。全体の構想が固まっていたタイミングだったこともあって、「いかり」、「BIRTHDAY」(M6)などに続くような……美しいメロディや、温かさを表現したいなと思い、作詞のことでたくさん話させていただきました。

──最後の最後にお話しされたんですね。相当濃い内容だったと思うのですが、どんなお話をされたのでしょうか。

ReoNa:本当にいろいろな話をさせてもらって。それこそ、本当に深夜まで。そのなかで、「今書いてる歌詞ってどれくらい傘村さんが入ってますか?」と質問したんです。そしたら、やはり私自身に寄り添って書いてくれていて。ワガママだなとは思ったのですが「傘村さん自身も重ねられる部分を作ってください」とお願いしました。

──傘村さん色が特に入ったところというのは?

ReoNa:最後の<そのままの命でここにいよう>というところです。他の部分は<ここにいる>なんですが、<ここにいる>だと誰に言うわけでもなく、ただここにいて、ただ立っているような印象があります。<ここにいよう>だと、ちょっと外を向いてるというか。

傘村さんは「ひとさじでも良いから救いを入れる」をモットーとされているので<ここにいる>が<ここにいよう>になって、少し……前を向けているわけではなかったとしても、ここにいることは変わってなくても、少しだけ光が差すような曲になったなと思いました。

──<そのままの命でここにいよう>という言葉をお歌で聴くと、今の自分の全てを肯定してくれるような力がありますが、ReoNaさんは<そのままの命>と聞いたとき、どのような印象を抱きましたか。

ReoNa:<そのままの命でいる>ってすごく難しいことです。少し重い話ではありますが……私にとっては、一度は止めようとした命で、逃げ続けた命で、歩んできたなかで傷ついてきた命で。そうしたもの全てを含めて<そのまま>なのかなって。今まで過ごしてきた時間、記憶、自分自身……全部を合わせて<そのままの命>なんだろうなと感じました。

──「心の音」で「心音」というのもいいですね。

ReoNa:「心音」という言葉が出たときに、すごく良いテーマだなと思っていました。頼んでいるわけでもなく、ただなり続けてるもの、あり続けてるもの……あ、ReoNaだなぁって。お歌を歌うときにも<心 音がする>って聴こえるように意識して。タイトルと一緒にしっかり届けられるようにしたいなと思っていました。

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