『アニソン大賞』選考員・DJ和氏とアニメイト松原正泰氏が語る!『平成アニソン大賞』&『令和アニソン大賞』の舞台裏と、激動の時代におけるアニソンのあり方【インタビュー:前編】
選考会議はまるで「居残り補習」!?
――選考会議はスタートしてから終わるまで6時間ほどかかったという、かなり白熱したものだったと伺っています。
DJ和:そんなやってましたっけ(笑)?
松原:各選考員がそれぞれ3曲選んで、それを持ち込んでの多数決をやったじゃないですか? あれが全然決めれないっていう(笑)。
松原:「あ~、どれもいいなあ」って(笑)。
――会議中で印象的だったことや、覚えてることはなにかありますか?
松原::あれをやっているときは正直「みんなで補習を受けている」ような感覚でしたね(笑)。
DJ和:居残りでね(笑)。
松原:さいとーぴーだけがスパって終わって。
DJ和:さいとーぴーが早かったのはすごい覚えてます。
松原:「うお~、すごい優等生がひとりいる!」みたいな(笑)。
DJ和:自分の中にゆるぎない芯を持ってるんだなって思いました。
松原:「だって俺が選んだのがベストなんだから、俺が選んだやつで終わりだよ」みたいな。スゲー! カッコいい! ってなりましたね(笑)。
DJ和:これがまたダメ出しできないんですよ。
松原:そうだよね! と思わず唸ってしまうような。全部見たつもりだったけど「これがあったか!」と。
DJ和:リストにある楽曲を頭の中で再生して「あ、ある!」ってなって(笑)。
松原:同じ曲でも作詞賞、作曲賞、編曲賞……というように各人で選ぶ賞が違ったりもして。「なるほど、こっちで外して、こっちにノミネートするのか」みたいなこともあって、選びきれなくて時間がかかりましたね。
DJ和:どうにかして入れたい曲があったときに、自分の中でどっちかを捨てたりもしました。こっちは無理だから、こっちに入れる、みたいな。時代によって混み合った賞とかがありましたよね。別に薄いわけじゃないけど、ここに移動させることができるかもしれない、みたいな(笑)。
松原:どうにかしてこの曲は入れたい! みたいな、僕らだからこその楽しみがありましたよね。賞を決めるあの瞬間は。各賞3曲ずつ選ぶのは、すごく苦しかったんですけど、パズル的な楽しみがあったというか。
僕らも大人なんで、発表したときに「これがないじゃないか」というような批判は、なるべく言われたくないし、説得力のあるものにしたいと思っていたので、「絶対これはないといけない」という楽曲と、「これを入れたらお客さんからの信頼がありそうだな」という楽曲をうまく入れ込んだつもりです。
これを入れたらユーザーが盛り上がるだろうな、というのは分かる人たちだったので、そのセンスが光っていたと思います。
DJ和:ノミネート作品を見て「あ~、そっか! この曲ってこの時代だったんだ」ってお客さんも同じように思い出したり、振り返ったり、感動を覚えてほしい想いがあったので。
松原:調べたら「この曲は○○年だったか!」と驚くことがけっこうあったので、やっぱり忘れてるところがあるな、と改めて思いましたね。全部出切ったあとの調整って言っちゃあれですけど、そこも大変でした。
DJ和:あそこもけっこうな時間かかりましたよね。
松原:そうですね。結局あれでこれで……みたいな。
DJ和:冷静に見返したときに「アレ!? あの作品がないぞ!」と気付くというか。それは入れないとヤバい、みたいなことを後から調整していきましたね。
松原:JAM Projectさんもそうでしたよね。
DJ和:あー! そうですね。どちらかというと特撮やゲームの主題歌が多かったので。
松原:でもJAMさんがないのは、なんか違和感ありますよね? みたいな。
DJ和:このアニソンの第一線を引っ張ってきた方々として入れないのはダメだよなって。
松原:アニソン一曲ありますね。「SOULTAKER」が、みたいな(笑)。
一同:(笑)
DJ和:結果もう「SOULTAKER」一択に(笑)。ライブの人気曲とかもだいたい特撮とかゲームの主題歌なので。
松原:OVAも含むのか、『ちびまる子ちゃん』のようないわゆる一般向けの作品もアニソン大賞に入れるべきかなど、ほかにもいろいろ問題はありましたね。
DJ和:あとは特別賞っていう便利な賞がありましたね。結局、ジブリ作品って入ったんでしたっけ?
松原:ジブリとかディズニーとかは抜きましょう、って話になりましたね。OVAも最終的に外したんですよね。例えば『サクラ大戦』とか。「檄!帝国華撃団」がなくていいのか! という論争が起こりましたけども(笑)。ほかには“堀江由衣論争”なんかもありましたね。
DJ和:どの曲を入れるか? みたいなね(笑)。
松原:「バニラソルト」と「Love Destiny」どっちにするか問題とか(笑)。
――実際にその場で楽曲を聞いて決めたそうですね。
松原:そうです! その場で聞いて「Love Destiny」で! みたいな(笑)。
どの賞に入れるかの基準も人によってけっこう違いますよね。いろんなものを入れたいがためにfripSideを企画賞に入れましたからね。「新生fripSideで活動する、ということを南條さんで活動するがと企画したのが素晴らしい」みたいに書いて(笑)。
――会議前の、皆さんが各賞を出し終えた段階の資料が手元にあるのですが、この時点では「映画主題歌賞」に、ジブリ作品などのファミリー向けの楽曲も名前が多く挙がっていたんですね。
松原:そこから一気に消えたんですよね。
DJ和:その結果生き残ったのが『頭文字D』と『空の境界』だけというような(笑)。
松原:それで『劇場版 AIR』が入ったりしたんですよね。
――10年代のリストはまた雰囲気が変わってきていますね。UNISON SQUARE GARDENのような一般のアーティストも多く名前が挙がっていたり、作詞賞で挙がった作品の半分以上が畑 亜貴さんのものだったり。
DJ和:10年代はかなりバラバラになってきてますね。単純に曲数が増えたこともあって。
松原:本当は推したいんだけど、それぞれの立場的に個人的な見解が出すぎちゃうとまずいんじゃないか、というような遠慮もありましたよね(笑)。
――おふたりにも入れたかったけど、どうしても入らなかった楽曲があったのでしょうか?
松原:なんだかんだ、ほぼほぼ自分の挙げた楽曲は入ってくれた印象がありますね。個人的に入れたかったTrySailも入ってくれましたし。