音楽
『アニソン大賞』選考員・DJ和×アニメイト松原正泰【インタビュー後編】

『アニソン大賞』選考員・DJ和氏とアニメイト松原正泰氏が語る!『平成アニソン大賞』&『令和アニソン大賞』の舞台裏と、激動の時代におけるアニソンのあり方【インタビュー:後編】

配信ライブの難しさ

――今のライブの形をそのまま配信に落とし込むなら、VRなども駆使しないとダメなのかもしれませんね。なかなか生と同じような盛り上がりにするのは難しそうです。

DJ和:僕も何回か、カメラに撮られながら、画面越しにお客さんに見てもらいながらの配信はしたことがあるんですけど、コメントは見れてもやっぱり寂しいんですよね(笑)。

一同:(笑)

DJ和:特にDJってワーってなってくれないと、なにもできない所があって。その盛り上がりで次の曲を決めたり、流れを考えたり、煽ったりするものなので。

アニソン系のライブはほとんどがみんなで盛り上がるようなものがベースになってきているじゃないですか。もちろん、たとえばAimerさんの楽曲とかだったら違う雰囲気かもしれませんけど、一般的にはLiSAさんのようなROCKとか盛り上がる曲がメインになるので。

その盛り上がりが見えないアーティスト側も辛いなと。音楽番組の収録に近い感じ、発表会っぽくなるというか。もちろんカメラを使って、みんなと繋がっていることが分かるような演出をしてくれるので、面白いには面白いんですけど、アーティスト側としては「毎月これをやるのか」とか「デカい会場でもカメラにしか見られてない」となると、モチベーションにも響くなと思います。

――たしかに。

DJ和:今、お客さんの反応としてコメントがあるわけですけど、コメントは賛否が、特に“否”のほうが見えすぎるところがあって。この一年だけでもアイドルやアーティストの方などが、辞める、解散する、休止する、SNSをやめる、というようなことがメチャクチャ多かったように感じるんです。

ライブだとその瞬間だけというか、コメントもする暇がないわけで、みんなハッピーなんですけど、配信だとアーカイブに残って、そこに辛辣なコメントが書かれていたりして。やっぱりライブと配信だと、達成感も含めて全然違うなと思います。その差を最近すごい実感して、アーティスト側もメンタル強くないとやっていけないぞ、と感じます。

「ならSNSをやるな」みたいな論調もありますけど、それでもやっぱり強くないとできないというか。ここから生き残っていく人って本当に大変そうだと思うと同時に、この環境で生き残れる、ヒットするのはどういう曲なんだろうとも考えます。課題がとにかく山積みですね。

僕も家にいる期間が長かったので、そこでいろいろな配信ライブやYouTubeなどを見ているんですけど、今までの仕事がなくなっちゃったからやり始めた人が大半じゃないですか。この1年で始めた人が飛躍的に増えたというか。ただどうしても、普段のライブをただ画面越しに見ているだけになっているのでは…と。それをどうすれば脱せられるんだろうな、ということを僕含め多くの人が試行錯誤しているところなんだと思います。

松原:たしかに自分も、そのままやるだけじゃダメなんだな、というのはこの半年ぐらいで強く感じました。

DJ和:いろんな配信ライブを見ていく中で、今までは生で見ていたライブと同じものを配信されるだけだと、そこまで感動できていない自分がいるんですよね。確かにチケットは実際のライブの半額くらいのものが多いんで嬉しいのですが。

特にアニソン系のライブは実際に行ってすごい汗かいて「いや~、疲れた」ってなる、あの疲労感も楽しんでいたところがあるんですけど、配信ライブはビックリするくらい疲れないんですよね(笑)。

一同:(笑)

DJ和:エアコンのきいてる部屋で、お酒を飲んだり、しかも座って、という完璧な体勢で見てるから(笑)。やっぱり、疲れないということはエキサイトしてないんだろうな、と思います。視覚だけ、脳だけで楽しんでもダメで、体を使わないと本当の感動はまだ自分たちは受け取れないなと感じたので、別の楽しみ方を考えないといけないんでしょうね。アーティスト側も「本当にこれで届いてるのかな?」と不安になるでしょうし。

見られることは確かに嬉しいけれども、環境や機器にも左右されてしまって満足に楽しめるかどうかはけっこう差が出てしまったりもします。特に若い子はスマホしか持ってないことも多いですしね。

――スマホだとライブの途中で電話がかかってきてしまったり。

DJ和:あと時間がかぶってしまうこともけっこうあるんですよね。悪いなと思いつつも2つ、3つ同時に見ることも最近はけっこうあります。

――映画界隈では、映画館と違い2時間集中できる空間ではないから、配信だと最後まで見てもらえないことが多い、といった問題があるようです。

DJ和:確かに。いろいろ浮気できるものが家だとありますよね。

松原:今までと同じやり方だけだとこの現状に対応しきれないんだろうなと、ひしひしと感じます。

DJ和:でも、この期間でいろんなシステムや機器の進化も起こってはいるので、来年くらいにはまたすごいことになってるんだろうなと思います。普通のライブをやっててもダメだということにみんなが気付いていって、どんどん革新していくことを楽しみにしています。

今のままだと、配信ライブをいくつか見ちゃうと、ある程度分かってくるというか。生のライブの良さを知っているがゆえに、配信ライブの値段が高く感じてしまうんですよね。

――生のライブだと、会場で周りの人との交流もあったり、仲間内で終わった後打ち上げに行ったりもできますもんね。そういったことも含めてライブの価値になっていたというか。

DJ和:ライブ配信が終わった後に、同じ配信を見てた友達とリモート飲み会だ、というのもそれはそれで楽しいかもしれませんが、やっぱり違うんですよね。どうしても。特にアニソンは現場の、生の盛り上がりが相当大事だったところがあるので、インターネットだけじゃ難しいところは実感しますね。

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