『アニソン大賞』選考員・DJ和氏とアニメイト松原正泰氏が語る!『平成アニソン大賞』&『令和アニソン大賞』の舞台裏と、激動の時代におけるアニソンのあり方【インタビュー:後編】
「平成を彩ったアニソンを讃えたい」という思いから生まれた企画『平成アニソン大賞』。そしてそのノミネート楽曲をまとめたコンピレーションアルバム『平成アニソン大賞 mixed by DJ和』。
音楽プロデューサー・冨田明宏氏、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記氏、アニメロサマーライブ ゼネラルプロデューサー・さいとーぴー氏、アニメライター・前田 久(前Q)氏、株式会社アニメイト・松原正泰氏、そして発起人のDJ和氏、というアニメファンなら誰もが認める識者6名が全力を尽くした本企画は、ノミネート楽曲発表会時にYahoo!トレンド1位を獲得、コンピレーションアルバムも大ヒットを記録するなど、多くのアニメファン、アニソンファンを魅了した一大イベントとなりました。
その人気を受け、2019年末には令和1年目のアニソンを振り返る『令和アニソン大賞』を開催。大賞を決める討論を、イベント「平成アニソン大賞大ヒット記念~年忘れトークSP~」内にて行い、ユーザーの目の前で選考員が激論を交わすという新たな試みは、さらなる盛り上がりを生みました。
そして、2020年末に『第2回令和アニソン大賞』の開催が決定。その発表を受け、アニメイトタイムズは、『アニソン大賞』発起人のDJ和氏と、選考委員の松原正泰氏にインタビューを実施!
『平成アニソン大賞』『令和アニソン大賞』での思い出を振り返ってもらうとともに、激動の時代となった本年度のアニソン業界について、またその未来について、たっぷりとお話を伺いましたので2回に分けて紹介します! 今回は後編です。
大成功を収めた『平成アニソン大賞 mixed by DJ 和』
――特番後の4月、ノミネート楽曲を収録したCD『平成アニソン大賞 mixed by DJ 和』が発売されました。制作のうえで意識したことや、感想をお聞かせください。
DJ和:いろんなところでも言っていることではありますが、とにかく何でも入れられるわけではないんですよね。「収録のために原盤を貸してください」という申請をしてOKをいただいた曲を入れるという形になるので。
今まで僕が作ってきたCDは、時代を絞ることでお客さんに分かりやすく届けられるものだったのに対し、今回は本当に時代が広いので、曲調も違えば、男女、ユニット、声優などもバラバラで。逆にそのごちゃまぜ感も「平成っていろいろあったんだなあ」という雰囲気になったと思います。今までとは違う選曲だったので、繋ぐのは確かに難しいんですけど、コンピレーションとしてはとても面白いものになりましたね。
「大賞」ということで、賞状を作って勝手に贈りつける、なんてこともやったりして(笑)。CD以外にも企画としていろいろやる、というのは今までやったことがなかったので、ツイッターの盛り上がりなども含めて面白かったですね。
――CDの発売に関して、アニメイトではどんな盛り上げ方をしたのでしょうか?
松原:アニメイトってもともとミックスCD系はそんなに強くない店舗ではあったんですけど、『平成アニソン大賞』の発売前、『MiX ~面白いほどよくわかるノンストップSACRA MUSIC~』の発売時に、とにかく曲を聞いてもらうことを実験的に行いました。
個々のアーティストが好きな人はその曲のフルをもう聞いているし、CDも持っている。そういった人に伝えるべきミックスCDの良さは、色んなアーティストの曲が聞けることや、繋ぎの上手さ、心地よさといったところで、その部分は実際に聞かないと分かりようがないので、とにかく店頭で流してみたらCDが売れて。
その成功があったので、『平成アニソン大賞』の売り方は「とにかく流す」をより強化したものになりました。加えて、僕が選考委員として参加しているので、アニメイトのプライドをもって、「ここまでアニメイトが関わっていて、もし販売が振るわなかったらアニメイトのせいだからね」と(笑)。
一同:(笑)
松原:それくらいの責任感を持ってやりましょう、という意識を持ったら、店舗側も振り切ってくれて、店内でガンガン流してくれました。店頭でそれを聞いたお客さんが、知っている曲、知らない曲もある中で、繋ぎの心地よさ、聞いてみての高揚感から手に取ってくれることが多かったですね。
発売当日から、アニメイトでは過去例を見ないくらいたくさん在庫を用意していたんですが、それでも足りないというような状況になりました。
――確かに、一時期お店から姿を消した時期がありましたね。
松原:ゴソっとなくなって(笑)。
DJ和:ありがたいことではあるんですが(笑)。
松原:ヤバい! 追加だ、追加だー! と。アニメイト秋葉原本館は、発売当日に入れた枚数と同じくらいの数を2日後に入れるくらいで。
DJ和:たしか壁一面に展開されてましたよね。こんなんやっていいんですか!? 嘘でしょ?ってくらい(笑)。
松原:ああ、やりましたね(笑)。
――今こそアニメイトの本気を見せるときだと(笑)。店頭には松原さんのPOPもありました。
松原:店頭から「選考委員です」というフリー素材を出してください、と言われまして(笑)。「常識の範疇で使ってくれるならどうぞ」と渡しました。
――ユーザーからの反響などはいかがでしたか?
松原:店頭でアニソン大賞について言われることはなかったのですが、違う現場に立った時は特番の感想とか「なんであれが入ってないんですか?」みたいなことは言われましたね(笑)。
――どの店舗でも大々的に展開している様子をツイッターにアップしているのが印象的でした。
DJ和:積極的に盛り上げてくださってる様子を写したツイ―トが何件もありましたよね。
松原:「このタイミングで、各店の特徴を出したツイ―トをやって」と指示を出しました。
――店舗ごとに語尾が違うんですよね(笑)。
松原:アニメイトってこの業界ではそれなりにネームバリューがある法人ではあると思うので、店頭で聞いてもらって興味を持ってもらうことに加え、宣伝でも「アニメイトやたらコレを推してるなあ」と興味を持ってもらえるような仕組みを作りましたね。
普段からCDを売ってはいますが、ミックスCDという苦手分野において、今回しっかりと結果を出せたというのは、非常にいい経験になったと思います。
――和さんはアニメイトの大々的な宣伝を見ていかがでしたか?
DJ和:想像をはるかに超える展開をしてくださって、申し訳なくなってくるというか(笑)。企画に参加しているとはいえ、こんなにやっていただいて本当にありがとうございます。
もちろんほかの方や僕自身含め、各々宣伝はしていましたが、まず一番に突っ走ってくれたのがアニメイトさんだったなと。そこにみんな乗っかっていったというか。お店としての突破力というか、パワープレイがなかったら、ここまで売れたかどうかは本当に分からないと思います。
あれだけやってくださってるからこそ、自分ももっと頑張ったり、いろんな素材を提供しないと、と改めて思いました。こういうCDって発売の一か月前から予約してワクワクする、みたいな人はあまり多くなくて。大多数は店舗で初めて知って勢いで買うような、アーティストさんの新譜とはまったく違うコンセプトだと思うんですよ。
あと、長いことずっと宣伝してくださっていたのも印象的でしたね。自分たちがお店を持っていたら絶対やりたいと思うような、僕らが考えてる理想の状態をお店でやってくださっていて。毎週のように新しい曲が出たり、色んなものを展開しなきゃいけない中で、『アニソン大賞』をずっと宣伝して下さっていたのが嬉しかったですね。
特にこういうCDの場合、発売時期も関係ないですし。「夏ソング集めました」みたいなものじゃないので、各々が出会った瞬間が売れ時なんですよね。発売日に大きく売りたい思いももちろんありますが、それ以上に売れ続けるようにできたらいいな、と思っていたので。長く大々的に宣伝してくださるのは本当にありがたいです。
松原:制作、宣伝、販売がひとつになっている、物を売る理想形になっていましたよね。CDがなかなか売れない時代においても、これだけのパワーが生まれることを知ることができたのはいい経験だったと思います。