「“新しいことをしたい”、その気持ちこそが15年の集大成」デビュー15周年を記念したミニアルバム『15Colors』を3枚同時リリースするMay'nさんにインタビュー
ジェイソン・ハウランドプロデュースによる『15Colors -unplugged-』
──『15Colors -unplugged-』はミュージカル「生きる」の作曲・編曲も手掛けているグラミー賞受賞の作曲家ジェイソン・ハウランドさんが全曲プロデュースをされています。ジェイソンさんが全曲プロデュースをされることはなかなか珍しいことだと思うんですが、どういった制作になったんでしょうか。
May’n:すごく楽しかったです。ジェイソンさんは今もニューヨーク在住なので、メールやリモートで何度もやりとりをさせてもらいました。
2年前の『生きる』の初演の時には来日されていて、よくお話をさせてもらっていたんです。私の楽曲やアルバムをすごく聴いてくれていて「いつかMay’nの曲を作らせてよ」って言ってくれていて。その時は「またまた~」みたいな感じだったんですけど、でも、ずっと言ってくれていたので「いつかはご一緒したいな」と思っていました。それで今回ジェイソンさんにお願いしたら快くオッケーしてくださって。
──そこからはどんな流れで?
May’n:『15Colors -unplugged-』は私の大切なものをテーマに歌詞を書きたいという気持ちがあったので、夢、愛、友情、うちの猫、故郷っていう5つのコンセプトを最初に掲げていたんです。そのコンセプトに合う形で曲を作ってもらいました。夢への想い、猫との出会いとかも、細かくメールで送り、アルバム全体のバランスも一緒に考えていただいて。
歌詞が日本語なのでハマり具合をすごく気にされていて。日本語の歌詞を英語のできるスタッフに訳してもらい、意味を細かく伝えたうえでオッケーをもらって。『生きる』の現場でもそうだったんですが、日本語に熱心に愛情を持って作ってくださって感謝しています。機材を買い揃えたおかげでキーチェック、デモ録りなどが自分でできるようになったので、ジェイソンに逐一報告していました。
──それってMay’nさんが直接やり取りされるんです?
May’n:そうですね。完璧な英語ではないんですけど直でやり取りさせてもらって。すごく楽しかったです。
──夢、愛、友情、猫のむぅちゃん、故郷というコンセプトのなかで、おそらく“友情”にあたる「shining ways」の歌詞は、以前からお付き合いのある小澤ちひろさんとの共作です。
May’n:そうなんです。私の作品でも何度か作詞をしてくれているんですけど、ちひろは私の高校の時からの友達で親友なんです。この曲は、もともと“友達”をテーマに曲を書きたいなと思っていて。そしたらジェイソンさんから「夏休みを回想するような、青春時代を思い出すような曲にしたら?」ってアイディアをいただいたんです。
このとき“愛”(「LOVE, Close to me」)が出来上がったあとだったんですけど、愛といいますが、恋というイメージだけではなく、家族、友だちに対しても歌える曲になって。なので直接友だちにありがとうっていうより、過去の楽しかった思い出があるからこそ今があると思えるような、そんな青春時代の歌にしようって。
──それで甘酸っぱい曲というよりかは、ノスタルジックでかわいい曲に。
May’n:はい。この曲は中学校2年生の景色を意識した曲なんです。私は中学校二年生がいちばん輝いている時代なんじゃないかなって思っているんです。だからこそ中二病って言葉があるのかもしれないんですけど、中学2年生って自分が子どものことも認識してるんです。その一方で、自分が大人だと思っていて。大人にもなれるし、子どもだからこそできることもあるしっていうので、いちばん無敵なんじゃないかなって。私、そのときは自分のこと最強だと思ってたんで(笑)。
──あはははは! でも私もそうかもしれない。色々なことはあるんですけども。
May’n:ですよね!(笑) そんな中学2年生ならではの曲にしたいなって。青春の曲で大好きな曲はいっぱいあるんですけど、全部恋愛が絡んでくるんですよね。それよりも「毎日楽しい」って感じの他愛のない日常感のある曲を作りたいと思って。恋愛要素は一切入れないってことにこだわって書いたんです。実際に中学生のときのプリクラ帳を取りだして、そのとき自分が書き込んでいた言葉、プリクラの落書き、そういうものを見ながら歌詞を書いて。
──プリクラには何て書いてました?
May’n:すごく面白いなと思ったのが「とにかく仲良し!」って書いてあるんですよ(笑)。今って親友とか友だちと「うちら仲良しだよね」とかって絶対に言わないのに、「うちら仲良し」「なにげ仲良し」「友情不滅」とか書いてあって。
──(その場のみんなで爆笑)分かる~!
May’n:それがめちゃくちゃ可愛い!と思ったんです。今ってそういうこと言わないと思うんですよ。仮に引っ越しなどで離れ離れになってしまったとしても、これからも仲良くいられると思ってるからこそ、別にそんなこと確かめ合わないというか。だけど中学校のときって「明日も一緒に帰ろう!」とか「ずっと一緒にいてね!」「友だちでいてね!」とか言える。それが中学生ならではの可愛いなって。だからずっと友達でいようね、って言葉を入れて終わらせたいと思っていました。
──「LOVE, Close to me」は『生きる』と重なるかのように<あなたの愛で生きる>という言葉で終わっていますが、「shining ways」には終わり際に<ずっと友達でいよう>という言葉が。
May’n:あと、当時って人生経験とか特に何もなかったけど、バンドの曲を聴いて「分かる~!」ってずっと言ってたんですよね。恋愛とかも、何もしらないのに。
──<愛も恋も 叶っていく あのバンドのリリックにも書いてた ずっとずっと 今を信じていく>という歌詞がありますが……私も「分かる」って思ってました。分かってなかったのに。
May’n:(笑)。バンドの曲で人生を知った気でいたなって思い出して、それも歌詞に込めました。
──ところで「shining ways」のイントロの重なっているコーラスってMay’nさんの声だけで構成されているんでしょうか?
May’n:そうなんです。自分のなかでこの曲は3人くらいの女の子が一緒に校庭から帰ってる感じのイメージで書いていたので、ちょっとしたワイワイ感を出したかったんです。だからああいう輪唱っぽい感じからスタートしていきます。
──「shining ways」のように何かを見ながら作られたような曲は他にもあったんです?
May’n:他はメロディに導かれるように、今思ってる曲を歌詞に書いていて。でも「Goodbye Dear home」だけはいつか書きたいなと思っていたテーマで、心のメモに止めていたものなんです。上京した当時の想いを書きました。
私はデビューする高校一年生のときに地元の名古屋から東京に上京して寮に住んで。親は(音楽活動を)すごく応援してくれていたんですが、東京に出て行くときに「もう名古屋に戻ってこないでね。あなたの居場所は名古屋じゃなくて東京だよ」って言われて送りだされて。だから私は「絶対東京に住み続けるぞ」って決意して上京したんです。そのときの気持ち、親の言葉がすごく残っていて。
──優しく送り出すこともできたんでしょうけど、あえて厳しい言葉で。いい親御さんですね。
May’n:厳しいようで温かい親で。新しい居場所を作るんだ、もう絶対に戻らないぞってあの時の気持ちをいつか曲にしたいなとずっと思っていました。この15周年というタイミングだからこそ、15年前に感じた思いで曲を書けたことはすごく大きなことだなと思っています。
──昔の<私の居場所に出会いたい>っていうのは、まさに15年前の決意そのものだったんですね。
May’n:はい。この曲は、自分で歌詞を書いた曲ですけど、名古屋で歌ったらグッとくるだろうなって思ってます。
──最後の「Sing Of Dreams」は夢をテーマにされた、手紙のような曲ですね。
May’n: 15周年の感謝をこめて歌詞を書かせてもらいました。15年を振り返ると私はたくさんの夢を叶えさせてもらったけど、また新しい夢が出てきて。15年で夢がどんどん増えたなって思うんですよね。ファンの皆さんのおかげでたくさん夢を叶えさせてもらって、そして夢を生み出すことができて。これからもみんなと一緒に夢を叶えていきたい。そんな思いで作った曲です。