『学芸大青春』主演3Dドラマ『漂流兄弟』篠田利隆監督インタビュー|シーズン2はエモーショナルで“泣ける”作品に
印象的だったのは後ろで繰り広げられるさりげない演技
――ありがとうございます。続いて撮影中に印象的だったエピソードなどあれば教えてください。
篠田:いっぱいあるんですけど、演技を付けている講師の方が、いつもいっぱいお菓子を持ってきていて。彼らは本当にお菓子が好きなので、撮影中絶対に「もぐもぐタイム」的なものがありましたね(笑)。
僕も一緒になってもぐもぐさせてもらったり。ああいうときのキャッキャしてる感じがそのままドラマになっているのかなって。
普通の男子はお菓子でそんなにキャッキャしないと思うんですけど、彼らはホントに可愛らしいというか、お菓子とかで一喜一憂していたりして、そういうのもファンの方を裏切らない内面だな、というか。
――そうだったんですね(笑)。僕も彼らの取材をしていて、ビックリするほど仲がいい印象があって。
篠田:そうですよね。本当に距離が近くて仲がいい(笑)。リアルに青春している感じがあります。
そうそう。彼らはすごくアニメが好きなので、「このアニメ観た?」とか「この映画観た?」といった話ができたのも楽しかったですね。僕自身、いろんな作品の演出をしていますけど、そもそもアニメが好きなので。
アニメ好きな子が多いので、実写の演技になりすぎないところがいいな、と思いました。自然な演技なんだけどアニメのことも研究していますし、声の出し方とかも特訓してもらっていたと思うので、わちゃわちゃしてる生っぽさとアニメっぽい演技が共存していて面白かったです。
――なるほど。監督が特に印象に残っている演技やシーンなどがあれば教えてください。
篠田:「特にこのシーンが」というのではない、そんなに大げさなことじゃないんですけど、それぞれに持ち決めポーズみたいなものがあって、それをやる瞬間がそれぞれのジュネス(学芸大青春)っぽくていいな、と思いました。
例えば...ユキ(南優輝さん)だったら、理解したり、しようというときになったら拳を上げる。マサ(内田将綺さん)はいっぱいあるんですけど、「ジィ」っておじいちゃんみたいになったり。ヨウ(星野陽介さん)だったら可愛い演技、ユウ君(相沢勇仁さん)はクールなキャラだけど、絶対自撮りしてたり。レン(仲川蓮さん)はアクが強いので、すべてがレンって感じなんですけど(笑)。
「こういう演技をしなさい」と言ったわけじゃなくて、『漂流兄弟』の撮影が進んでいく中で、彼らがドラマの人物になっていったというか。いつもやる癖みたいなものを発掘していってる感じがしましたね。
自分もそんなに細かいことを言って演出していないので、「いつものポーズ、ここでやるんだ!?」と思ったこともありました。(笑)。
――画だけでそれぞれの個性も伝わってくるというか。アニメでもなければドラマでもない不思議なジャンルの作品ですよね。個人的には舞台っぽいなと感じていました。
篠田:そうですね。すごく。それはあると思います。
僕も演出を考える際に、せっかく3Dの空間でやってるので、たまにすごい変なアングルだったり、カメラをぐるぐる回したりするときもありますが、基本のアングルはテレビ側、くまま側から見た世界にしています。
最先端の技術を使って、全く新しいことをしているのですが、上下(かみしも)の概念がある舞台的なカルチャーが『漂流兄弟』から伝わってきたのかなと。
――なるほど。自分が舞台っぽいと思ったのは間違いではなかったと安心しています(笑)。
篠田:ええ、間違っていないと思います(笑)。密室劇というか、ワンシチュエーション劇なので、舞台っぽくしよう、という話は最初からしていましたし。
――篠田監督から見て『漂流兄弟』の見どころ、楽しみ方をファンの方にお伝えするとしたらどんなシーンが浮かびますか?
篠田:え~、難しいな……みんないいからなあ(笑)。
――あはは(笑)
篠田:マサとユキはけっこう主役というか、話をリードするふたりの兄、偽の兄弟の関係から成り立ってると思うんですけど。
そことは別軸のヨウとユウを演じる、陽介くん、勇仁くんの関係も面白いな、と思っています。
彼らはメインで優輝くん、将綺くんが演技しているときも、けっこう演技しているんですよ。フレームに映ってないのに。演技のメインじゃないところでもちゃんとしているというか。
でも、そのやりとりが作品の空気みたいなものを作っているような気がします。マサがピリピリしたときにヨウがアホなことをするとか。
しかも面白いのが、一見ユウのほうがオラオラしてるから年上っぽく見えて、ヨウのほうが年下に見えるんですけど、実際はヨウが2番目のお兄ちゃんで、お兄ちゃんのほうが甘えん坊っぽいっていう。
ユウが「俺のほうがしっかりしてるんだぜ」みたいに言うのはなんかありそうな人間関係だな、と思っていて。あのふたりはいつもケンカするけど、たぶんすごく仲がいいんじゃないかな、と思います。
普通の3Dのドラマで自分がコンテを書いていたら、よっぽど意味がないとメインのストーリーのやり取りをしてるキャラじゃないほうを抜いたりしないんですけど、彼らに関しては、いろんな話の主軸を握る3者のやりとりの中で、すごくいい演技をしているときがあるので。
ついついカメラで思わずそっちを抜いちゃって編集してみたり。リアルタイムで撮影しているので、観ているファンの方になるべくそういう演技や面白さも見せたいなと思っています。
今は分かりやすい例としてふたりの名前を挙げましたが、他の3人も(メインで映っていないシーンでも)演技しています。
いつかは分からないですけど、VR空間で舞台的なものを観られるようになったら、また違った見え方がして面白いかもしれませんね。
――面白そうですね! 確かに、実際の舞台でも端でなにか面白いことをやっていることってありますし。
篠田:たまに、せっかく一生懸命いろいろやってても、「申し訳ないけどカットだな」と思って入れていないものもあったりはするんですけどね。
「こっちの人たちがメインのシーンだから、めっちゃ面白いけど入れたら尺おかしくなっちゃうしな~」みたいなのがけっこうあって。何度も入れ替えたりして、どうにか入れられないか、というのは編集でよく苦労するところかもしれないです。
――本稿を読んだ後で、もう一度観直すといろいろな発見がありそうですね。
篠田:あると思います。カメラや撮り方がリアルなものに近いのでメインで演技している人に目が行くかもしれないんですけど、よくよく後ろとかを見ると、意外なところで演技していたりするのでぜひチェックしてみてください。
――確かに。ユキが恐竜の卵を後ろでしれっとゆでてるシーン(実際は恐竜の卵ではなかった)なんかもありましたね。
篠田:ありましたね(笑)。あれはでも技術的に意外と難しくて。
――そうなんですか?
篠田:ええ。『漂流兄弟』の兄弟の部屋って縦長じゃないですか。でも、撮影の空間は正方形にしかできないので、実は手前と奥で同時に撮影はできないんです。
――え!?でも、すごく自然に同時に映っていました。。
篠田:そうなんです。なのでそれは同時に2箇所で撮ったものを組み合わせているんですよ。なので、今言ったようなシーンがあると、三本さん(漂流兄弟で企画・構成・脚本を担当 三本恭子さん)やチームの人が「あ、これ部屋の後方の演技が必要だね。撮影方法を考えなきゃね」って言ったり(笑)。
後ろに歩くシーンも何気なく見えてますけど、実際はCG的な技術が使われていたり。そこがまた独特な雰囲気を生み出すことになっているのかもしれないですけど。
――驚きました。普通に観ていましたが、実は最先端技術の塊のような映像だったわけですね。
篠田:はい。実は最先端技術の塊です(笑)。