声優
古川 慎さん1stアルバム『from fairytale』発売記念インタビュー

古川 慎さん1stアルバム『from fairytale』発売記念インタビュー|御伽噺をテーマに、自身で作詞した歌詞やサウンドで独自の世界観を構築した唯一無二のアルバムを語る!

『ワンパンマン』のサイタマ役をはじめ、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の白銀御行役など、数々のキャラクターを巧みに演じられている声優の古川 慎さん。

そんな古川 慎さんが1stアルバム『from fairytale』を12月23日にリリース。自身も出演したアニメ『啄木鳥探偵處』OP曲「本日モ誠ニ晴天也」など3枚のシングル曲、2曲のカップリング曲に加え、6曲の新録曲を自身で作詞し、インストナンバーも含めた全13曲を収録!

御伽噺をコンセプトに、古川さんが歌う1曲1曲の物語と様々なサウンド感を、ページをめくるように楽しめ、聞き終わった後の「読後感」にひたれること間違いなし!

 


 

意外な発想からタイトルとコンセプトが!? 御伽噺を1つひとつひも解くようなアルバムに。

――アルバムのタイトルの由来やコンセプトについてお聞かせください。

古川 慎さん(以下、古川):タイトルはリード曲の「切嵌とfairytale」から「fairytale」を取りつつ、今回も収録したデビュー曲「miserable masquerade」を略すと「mm」になるので、古川慎のアルバムだから「ff」になるようにと考えてこうなりました。

コンセプトを意識したのは新録曲のレコーディング後半で、御伽噺は夢や希望を感じさせる単語だけど、現実ではなく、でも由来になったものがあって。

そんないろいろな話が集まったものが御伽噺だとすれば、1つひとつを細かくひも解いていくことでどんなものが見えるのか、そして理想と現実を分けて考えてみようという発想が浮かびました。詳しくはアルバムのライナーノーツで語っているのでぜひご覧ください(笑)。

――1stシングルからこのアルバムコンセプトをイメージされていたのかと思わせる内容だったので、制作終盤でコンセプトが決まったと聞いて驚きました。でも古川さんの楽曲、特にご自身の作詞の1つひとつが独特の物語性があるので、それらが1枚に集まったアルバムはまさに「fairytale」だなと。

古川:そう言っていただけると嬉しいです。メロディに合った単語を見つけ「この単語で連想できるお話って何だろう?」と考えて作詞することが多いので、ファンタジックなものになりやすいのかもしれません。

――今回まとめて聞いて改めて思ったのは、古川さんの作詞曲はどれもパッと見ただけでは読めない難しい歌詞が多くて、歌詞カード必見だなと(笑)。

古川:カッコつけたがりなのかも(笑)。この音節にこの単語を持ってきたいなと思ってあてはめてみたら、文字数が足りなかったり音感がよくないことが結構あって。だから違う読み方をさせたり、造語を入れることが多いですね。

僕のワガママでリスナーの方に辞書を引かせたり、ひと手間かけさせるのは申し訳ないのですが、楽曲のいいスパイスになっている部分もあると思うので、許容していただければありがたいです。

――むしろ歌詞と向き合い、読み解くきっかけになっていいことだと思います。

古川:じっくり歌詞を読んでいただけるのは嬉しいですね。僕自身、ストレートなものを書きたくないので、基本的にちょっとこじれています(笑)。

――あとどの曲もデジタルではない、生楽器の数が多いですよね。その点でもゴージャスなアルバムだなと。

古川:贅沢なことに、1stシングル「miserable masquerade」のときから生音なんです。サウンドプロデューサーの桑原さんが毎回、「ド派手に行こう!」と仰ってくださって。

バックの素晴らしい演奏を聞くだけでも価値があると思います。

――1曲目と7曲目のインストがコンセプトのイメージをより膨らませてくれますね。ページをめくる音や、1曲目の最後が豪華なオーケストレーションは御伽噺の世界への旅を告げるような。

古川:Overtureは最初から入れたいなと思っていて。あと、ブリッジ曲があればライブをするときに休憩できるかなという思惑もあります(笑)。新録曲のレコーディングが全て終わったあたりで楽曲構成案をいただいていたのですが、実際に完成した「Overture -Act 1-」を聴いたときは、予想以上の豪華さでテンションが上がりました。最後があんなふうになるとは想像していなかったので(笑)。

――リード曲「切嵌とfairytale」は、「miserable masquerade」や3rdシングル「本日モ誠ニ晴天也」を踏襲するような、おしゃれなジャズロックですね。

古川:2ndシングル「地図が無くても戻るから」のカップリング曲で、このアルバムにも収録されている「道化師と♠(sadness)」を制作する時にBPMが速いジャズを歌いたいというオーダーで上がってきた候補曲のひとつで、ぜひ晴れ舞台を用意したいとキープしていただいていました。1stアルバムが出せるならリード曲にしたいと。ど派手でカッコよくて、最高で最強のキラーチューンになりました。

――歌い方もセクシーで、歌詞も「唇を魔法で汚した部屋」や「退廃した倫理の華」などアダルトな香りが。

古川:メロディラインがエロかったので(笑)、歌詞も攻めたものにしようかなと。ファンタジーには脚色があって、より美しく見せようとしたり、残虐だから見えないようにしたり、それは「切嵌」みたいだなと思っていて。切嵌の先にある真実や姿を追求する歌詞にしてみました。

――MVも古川さん以外の登場人物3人による愛や欲、倒錯的な世界が描かれて、いっそう曲のイメージを高め、補完されて。まるで見てはいけないものを見ているような。

古川:歌詞にもそういった意図がある言葉を使っている部分もあるので、そこを汲み取った映像を作ってくださっていてありがたかったです。

映像コンセプトを聞いた時に心躍るものがありましたし、今までのMVに比べると僕が登場するシーンは少ないですが、刺激的な世界観が構築されていると思います。

あとこの曲は楽器隊の演奏が暴力的なところもお気に入りです。今後もこういった曲がやりたいですし、刺激がたっぷり詰まった演奏にもじっくり耳を傾けてください。

 

ラテン曲「スピカ」は憧れていたものへの別れといつまでも輝いてほしいという願いを込めて。

――では他の新録曲の紹介もお願いします。「スピカ」は、このアルバムに収録されている、3rdシングルのカップリング「パトスのカタチ」のようなスパニッシュなリズムですが、ピアノやストリングスでおとなしめな印象で。

古川:「パトスのカタチ」で候補曲を作ってもらった時にこの曲もあったのですが、そのときはガットギターのイントロなどやりたいラテン曲の模範回答が出てしまって。でもきれいなメロディラインで、個人的に大好きなKinki Kidsさんに近いものを感じて、いずれこういった曲も歌ってみたいなと。

そこで今回アルバムに収録させていただきました。歌詞は、憧れのものにいつまでも輝いていてほしいという想いを書きました。

――スピカは乙女座で一番明るく輝く星のことですね。愛し合いながらも別れを選んだ男性の気持ちを歌っているようで、せつなくて。

古川:僕自身はこんな経験はないんですけどね(笑)。「その背中は遠く離れ霞むだろう」は別れを表現していますが、離れた後も輝き続けてくれれば嬉しいし、自分が憧れていた夢にも置き換えることができるかなと。

「絶やさないで夏のスピカ」と歌っていますが、実はスピカは夏に見えなくて、「憧れていたものが実は幻だった」という意味も込めています。

――「気ままに見えるかい?」はアコーディオンなどケルトな雰囲気のするアコースティックサウンドですね。歌い方も素朴に聞こえて。

古川:この曲もラテン候補曲の1つで、今回リメイクしていただきました。アルバムを作るにあたって、ケルトっぽいサウンド感の曲をやりたかったのと、このダウナーな感じがいいなと思って。

歌詞を書いたのがコロナ禍の外出自粛期間中だったこともあり、もやもやした雰囲気が出ていますが、鬱々としたものにはしたくなくて。例えば自分にない才能を持った人は身近にもテレビの向こう側などにもたくさんいて、「何でそうなれるのかな?」とか「どうして自分はそうなれないのかな?」とか考えてしまう人も多いと思うんです。

そんな気持ちをダウナーな曲に当てはめたらいいんじゃないかなと。最初はもっと腐ったままだったんですけど、もうちょっと明るい方向を向かせてあげたいと思い、『見方ひとつで景色や考え方が変わるんだよ。

あとは自分次第だから頑張れ』という歌詞になりました。ケルトアレンジになったことで、ところどころに出てくる「遊園地」など何気ない言葉も立って聞こえますし、ダウナーだけど何となくにぎやかで、前向きに送り出せるような仕上がりになっています。

 

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