映画『ワンダーウーマン 1984』ダイアナ/ワンダーウーマンを演じる吹き替え声優・甲斐田裕子さんインタビュー
アニメと吹き替え作品は別モノ!? 甲斐田裕子さんが吹き替え作品の魅力を語る
――アニメと吹き替え作品とで、もっとも大きな違いは?
甲斐田:私はまったくの別モノだと思っています。吹き替え作品は、海外の俳優が演じて作品として既に完成しています。そこに日本語が違和感なく、スッとのっかるよう、縁の下の力持ちというか、サポートするのが吹き替えの役目です。
一方、アニメーションでは、キャラクターを作り上げる重要な一端を声優が握っています。私達が演じることによって、そのキャラクターが立体化し、生きる。そういう意味でアニメはより責任を感じます。だからこその面白さ、楽しさもあります。
私は吹き替えの仕事が多かったので、アニメーションは難しいなといつも感じています。
――では、吹き替え作品が楽しいと思うところはどこですか?
甲斐田:海外の俳優が何を伝えようとしているのか? 海外の監督が何を訴えようとしているのか? それを映像と台本を見ながら、時にはイントロダクションを読みながら、紐解いて役を自分に取り込んでいきます。その作業が私は大好きです。
――とても大変そうな作業だと思います。
甲斐田:他の方は分かりませんが、、私はかなり時間を掛けています。まずは作品を何度も何度も繰り返し見て、向こうの俳優の息遣いを自分の中に取り込んでいく作業をします。気持ちや感情の流れを掴む。あらかじめこの作業をしておくと後の収録が多少ラクになります。
――息遣いまで研究されるのですね! では、「ダイアナ/ワンダーウーマン」を演じるときに注意しているところは?
甲斐田:「ガル・ガドット」の魅力を損なわないように演じることです。彼女の美しさ、高貴さ、可愛らしさ……映像から感じられるものに負けないよう、違和感なく寄り添えるよう注意しています。
今作は彼女の人間的な部分が、女性としてとても共感できるシーンがいくつかあるので、そこを大切に、そして楽しんで演じました。
――アクションシーンは『ワンダーウーマン』の魅力ですが、アクションの収録は楽しいですか?
甲斐田:収録の瞬間はすごく楽しいです。でも、楽しいと感じるには、チェックをしっかりしてないと私はダメです。何回も見て研究します。いま自分が何を思い、何を見て、どこを攻撃し、自分がどこに怪我をしたとか、一つ一つ感じながら演じています。
――我々普通の人間は、映画のような大怪我をしません。それを想像しながら演じるのでしょうか?
甲斐田:そうですよね。もちろん、実際にはあんな大怪我の経験はありませんが、想像力を働かせて演じています。お腹を殴られた時と足を撃たれたときの、感覚やうめきは違います。ただの荒い呼吸も、そのとき頭にある考えや感情で音が変化します。セリフがあれば、言葉が表現してくれますが、アクションシーンは息遣いに気持ちをのせないといけないこともあるので大変です。スピード感もあるシーンが多いので、記憶力と反射神経の勝負です。