声優・大塚芳忠さんが語る真田志郎の魅力と、『2202』終盤の演説シーンへの想いとは!?『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』は上質なドキュメンタリー!
日本のアニメ史に名を連ねる不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』をリメイクし、ガミラスの侵略から地球を救う168,000光年の航海を描いた『宇宙戦艦ヤマト2199』。そして、その続編となる帝星ガトランティスとの戦いが描かれた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』。
両作品で描かれた宇宙戦艦ヤマトの航海を、登場キャラクターのひとりである真田志郎の語りと共に振り返ることができる映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』(以下、本作)が、いよいよ2021年6月11日(金)より上映となります。
今回はその収録に際し行われた、声優・大塚芳忠さんへのインタビューの模様をお届けします。大塚さんが考える作品の見どころに加え、『2202』終盤屈指の名シーンである真田の演説シーンの収録についてなど様々な内容についてお聞きしました。
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ヤマトの航海のすべてを知る真田が語る上質なドキュメンタリー
――今回は真田を演じる大塚さんがナレーションを務める総集編映画だとお聞きしました。その見どころとどのような想いで収録に臨まれたかを教えてください。
真田志郎役・大塚芳忠さん(以下、大塚):今回の作品は『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下、『2199』)から『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下、『2202』)までが凝縮された上質なドキュメンタリーです。またエンターテイメント作品としても楽しめるので、何も知らない人が見ても『宇宙戦艦ヤマト』が大体わかりますし、ずっと見てきた人も新しい発見が得られるのではないかなと。
旧シリーズでは青野武さんが真田を演じられました。青野さんは、お酒を奢ってくれたり、色々なところに遊びに連れて行ってくれたりして、僕にとって本当に大好きな先輩でした。
その役を『2199』から僕が演じることになった際は、青野さんのことをしんみり考えるきっかけになり、改めて先輩の偉大さを実感しましたね。
今回の映画についてですが、台本を下読みした段階で真田の独白で進んでいくものだと知り、これは重大な仕事が舞い込んできたと感じました。真田がインタビューに答える形で物語を振り返る形式を取っているのですが、ヤマトの航海の全てを知る男がその旅路を語るリアリティをどう作っていくのか悩みました。
収録は監督とお話ししながら手探りで進めていったのですが、「真田ならこういう風に語るかな?」「真田ならここでひとつポイントを置くかな?」みたいに閃いてからは、上手く気持ちが乗っていったかなと。『2199』から長いこと演じさせてもらい心情や全体のムードも掴んでいたので、真田志郎という人間になって語れた気がしています。
――青野さんが真田を演じたオリジナルの『宇宙戦艦ヤマト』は1974年の作品なので、大塚さんにとっては二十歳の頃だと思います。当時はどのように見られていましたか?
大塚:もう40数年も前のことですが、やっと田舎から東京に出てきたばかりで仕事もなく、途方に暮れている時期ですね。『宇宙戦艦ヤマト』という作品が脚光を浴びていることは知っていましたが、僕自身は四畳半でテレビもないような生活だったので、食べていくのにも精いっぱいでした。
テレビもほとんど見ていなかったので、当時は『宇宙戦艦ヤマト』を観たことがなかったんです。楽しむ余裕のなかった時代とはいえ、今から思えばその頃からちゃんと見ておけばよかったなと思っています。
僕がしっかり作品を知ったのは『2199』への出演が決まってからです。当時からジュリーの歌(※沢田研二さんのシングル「ヤマトより愛をこめて」のこと)はいい曲だと思っていましたが、それが『宇宙戦艦ヤマト』のものだということも後から知りました。これだけの歌が挿入されるような作品なので、いつか見なければなと思いつつ40年が経ってしまって……。
その頃ちょうど声優を志そうと考えはじめていたので、僕にとって雲の上の存在である役者さんたちが出演していた印象があります。憧れを感じていた世界がブームになるなんてことがあるんだなぁと、当時はそういう部分が気になっていたと思いますね。
――では『2199』からの真田のキャラクターを、大塚さんはどう捉えられていますか?
大塚:青野さんの事は知っていましたが、ひとりひとりのキャラクターについては当初は把握できていなかったので、生真面目でしっかりした副官で戦士でもあることは後になってから理解しました。
僕はちょっと変わった役どころをたくさん演じて来たので、真田についても当初はそういう演技を求められているのかなと感じていたんです。だから最初の収録のテストでちょっとエキセントリックな喋り方をしたら、「違います」と言われてしまいました(笑)。
真田はクールな軍人であり、冷徹にも見える戦士としての部分が多く描かれたので、最初の頃は人間味を出せるシーンが少なかったんです。エキセントリックな部分も徐々に出てくるかなと思ったのですが、そういうキャラクターではありませんでした。強面ながらユーモアもあり、ふとしたところで彼なりの優しさも覗かせてくれる……そういう部分が物語の中で見えてくると、演じていて楽しく感じるようになりましたね。
そして自分にはなれないタイプだとは思いますけど、軍人としての判断の早さや決断力も含め、あらゆるものを備えた男の理想だと思います。ただ大事な人をたくさん亡くしてきた人でもあるので、それだけが本質的な部分ではないとも思っています。そういう部分をセリフの中で漂わせられたらいいなと考えていました。
セリフの裏にある心情を、視聴者にダイレクトに伝えるにはどうするかは悩みました。やっぱり『宇宙戦艦ヤマト』のような作品に、僕のような人間が関わってもいいのだろうかという心情はあるんです。それでも語るしかないんです。
だから真田としてわかって欲しいというか、どうか聞いてくれという気持ちで演じていました。真田として語れる幸せもみなさんにわかって欲しいとも思うくらい、やっぱり真田のことが好きなんです。だから本当に幸せな時間を、この仕事で頂けたと感じています。
(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会