アフレコでリコーダーを吹いて「帰ってきたな」と実感。新キャラクターを通して描かれるれんちょんの“意外と姉御肌”な一面――冬アニメ『のんのんびより のんすとっぷ』宮内れんげ役・小岩井ことりさんインタビュー【連載第1回】
れんげのことをより深く知ることができました
――劇場版からは2年半、第2期からだと5年半経っていますが、今回れんげを演じてみていかがですか?
小岩井:れんちょんという存在は、すごく完成されているなといつも思っているんです。テレビで見ていても不思議と自分が声をあてているように感じなくて、普通に「れんちょんだな」「れんちょん可愛いな」って。なので、毎回自分にれんちょんの声が出せるのか不安なんですよ(笑)。でも、収録後に聞いてみたら、「あ、ちゃんとれんちょんだな」と安心しました。
それに、『のんのんびより』は変わらないメンバーでやっているから、皆さんの声が脳内で再生されるんです。久しぶりだけど全然久しぶりな感じがしなくて、実家感というか、ただいま!という感じがしましたね。いい意味で変わらず演じられたんじゃないかなと思います。
――小岩井さん自身にとっても、2013年にスタートした作品がこうやって続いているのは感慨深いことですよね。
小岩井:本当に感慨深いです。ヒロインをやらせてもらったことはそれまでもあったんですけど、こんなにフィーチャーしてもらえる役はその頃まだそんなになかったので、人生を変えてもらった作品だなと思います。
――逆に、今回新たな発見や印象が変わったところはありましたか?
小岩井:変化したというよりは、「深く知っていった」という感覚が近いです。あかねちゃんという新キャラが出てきたり、今まで出会ったことのない人にれんちょんが出会うシーンを演じることで、「こんな表情や対応をするんだ!」とどんどん発見していった感じですね。
――劇場版では沖縄にある民宿の看板娘・新里あおいに出会いましたが、今回は自分たちの住むところにあかねちゃんがやってきたわけで。
小岩井:そうなんです。村の中でみんなといる時は一番年下なんですけど、それ以外の人と接する時のれんちょんは意外とお姉さんぽいというか、賢くて大人っぽいところが見えたりして。人に優しくしたり、人を助けてあげたりする一面を見ることが多いんです。それって、夏海とかの姉御肌なところから学んできたことなんですよね。
――アフレコ現場はどんな感じでしたか? 昨今の状況だと大変だったと思いますが。
小岩井:今はどうしても全員で一斉にはできないので、何人かに分かれて収録しました。
――これまでは一緒に収録できていたのですか?
小岩井:はい。第1期も第2期も劇場版もほとんどみんなで録っていました。
――そうすると、これまでとの違いに戸惑いも?
小岩井:そうですね。先に収録した人の声を耳に返しながらやったりしますけど、収録していない人の声は想像になっちゃうんです。ただ、今までみんなでやってきたので、喋っているのがすごく脳内で想像できるんですね。そこはやりやすくはありました。
――確かに。自分も脚本を読ませていただいて、脳内再生できましたから。
小岩井:『のんのんびより』って漫画を読んでいても、キャラクターの声が聞こえてきて。すごく素敵なキャスティングだなと改めて思います。
リコーダーは『のんのんびより』の象徴
――具体的な内容についてもお聞きします。第1話で特に印象的だったことを挙げるならどこでしょうか?
小岩井:一番感慨深かったのは、このリコーダーを持参したことですね。
――アフレコにリコーダーを持ってきたのですね!
小岩井:はい。第1期のイベントでグッズとして出ていたもの(※)をいただきまして、アフレコでも使っていました。これ、(みやうちれんげの)名前が入っているんですよ。今回もリコーダーを吹くシーンがあったので久しぶりに吹きましたが、普段アフレコでリコーダーを吹くことってないですよね(笑)。『のんのんびより』だけなので、すごく懐かしくて。帰ってきたなって気持ちになりました。
※2014年4月6日開催のスペシャルイベント「にゃんぱす祭りなのん♪」で、「みやうちれんげのリコーダー」として販売された。
――ということは、れんげがリコーダーを吹くシーンは、小岩井さんがご自身で吹いているのですか?
小岩井:全部じゃないですけど、自分で吹くシーンもあります。セリフを言いながら吹くところは、このリコーダーを吹きながらやっていました。
――第1話だと「ドの音が吹けないシーン」とか?
小岩井:そうです!
――下手に吹くのって、逆に難しくないですか?
小岩井:ドはまだ比較的やりやすかったですね。小指を半分だけにして吹けばいいので。
――楽器を演奏するシーンがあったとしても、ご自身がその場でやることはなかなかないですよね。
小岩井:ですね。『のんのんびより』の場合は、れんちょんが(リコーダーを)吹きながら喋ったりするので、吹かせてもらっています。(第3期の)第1話はあかねちゃんがフルートを人前でうまく吹けないのを解決しようというお話ですし、リコーダーはやっぱり『のんのんびより』の象徴的なところがあるんだなと思ったりしました。
第1期の第1話もリコーダーを吹いて始まるんですけど、セリフが始まるまで長いじゃないですか。すごくゆったりとした綺麗な空気が流れて、風景の描写がいっぱいあって。これはなかなかほかの作品ではない特徴だと思うんですね。私も昔、すごく田舎に住んでいたことがあったので、草の匂いや、朝起きた時の朝露の匂いとか、そういった風景や匂いをすごく感じるんですよ。
――出身が京都で、小さい頃に広島に住んでいたんですよね。それって何歳ぐらいの頃ですか?
小岩井:たしか、3、4歳の頃だったと思います。
――ちなみに、どのぐらいの田舎だったのですか?
小岩井:すぐ近くに牛の牧場がありました(笑)。
――それはすごい。『のんのんびより』のキャスト陣は東京出身の人が多いですけど、小岩井さんは実体験として村の空気感がわかるのですね。
小岩井:そうなんですよ。のんのんのメインメンバーだと唯一、“虫と戦える女”です!(笑)
――第1話だとカエルも出てきますし。
小岩井:あのシーンは、れんげ的には意地悪したわけではなく、カエルがいたから見せてあげようと思っただけなんですよね。じゃーん!って。私もそういう子だったので、気持ちがすごくわかります。
――ということは、カエルも平気でしたか?
小岩井:平気でした。虫もいっぱい捕まえていたというか、ど田舎なので田んぼのあぜ道みたいなところを歩くと、虫がぷわ〜っと出るんですよ。それを、波じゃん!と思って楽しんでいました。
――子供って何もなくても、道を歩いているだけで楽しいですからね。
小岩井:そういう些細な幸せや面白いことって、大人になるにつれだんだん忘れていってしまいますよね。『のんのんびより』はそれを思い出して豊かな気持ちにさせてくれる、すごく素敵な作品です。第1話を演じた時も、子供の頃の“手の温かい感じ”が蘇ってきたんですよ。