『EDENS ZERO』アニメ化記念 原作者・真島ヒロ先生インタビュー|数々の人気作品を生み出し続ける真島先生の“こだわり” は? さらに『EDENS ZERO』の最終的なテーマとは!?
『RAVE』や『FAIRY TAIL』といった人気作品を生み出し続けている漫画家・真島ヒロ先生。先生の作品はこれまでも多くがアニメ化されており、作品のファンだけでなく多くの人を魅了しています。
そんな真島先生の最新作『EDENS ZERO』のアニメ化が2020年9月に行われた「東京ゲームショウ2020オンライン」にて発表。4月10日より日本テレビ系全国放送が決定しています!
真島先生にとっても新たな挑戦となった本作は、機械に育てられた人間の少年“シキ”と、そこを訪れた少女“レベッカ”が出会うことで、宇宙のどこかに存在し、願いを叶えてくれる“マザー”を探す旅に出る物語を描くSF(スペースファンタジー)。
SFということでこれまでとは異なる雰囲気ですが、数多くの個性的な惑星を舞台に、エーテルギアという特殊な力を使用し、冒険する姿が見られる本作。新境地といえる舞台で真島先生が描くアクションはまた違った魅力に溢れます。
今回は『EDENS ZERO』のアニメ化を記念し、真島先生にインタビューを実施しました!
TVアニメ『EDENS ZERO』にて総監督を務める、『FAIRY TAIL』でも監督を務められていた石平信司さんとのエピソードや作品へのこだわり、作品の制作時に意識していることなど、ここでしか聞けないお話をお伺いしました!
これを読めば、4月に放送がスタートするTVアニメ『EDENS ZERO』がより面白く、より待ち遠しくなるはず! ぜひ、チェックしてみてください!
石平総監督の原作愛がすごい!
――アニメ『EDENS ZERO』にて総監督を務める石平信司氏とは、『FAIRY TAIL』以来再びのタッグ結成ですね。『FAIRY TAIL』の現場で初めてお会いされたときの印象はいかがでしたか?
真島ヒロ先生(以下、真島):初めてお会いしたときはすごくニコニコしている方だなって。よく喋るし、自分の考えをしっかり持っていて、ビジョンをすごく持っている方だな、と思いました。原作を大事にしつつも「俺はこういうことがやりたいんや!」みたいな。
初めは少し不安だったというか、思いが強すぎて原作を変えてでもやりたいことをやるような人なのかな、と思ったりもしたんですけれど、フタを開けてみたらとても原作愛の強い監督さんでした。
石平監督が手掛けるほかの作品も、すごく原作を大切にされていて。その中で自分はこういう演出がしたい、という思いを持っている方ですね。すごく尊敬しています。
――お仕事で関わられていく中でどんどん信頼が深まっていったわけですね。特にどういった部分を信頼していますか?
真島:原作に出てこない設定を掘り下げようとしてくださるところですね。原作では1コマ2コマで済むようなシーンも「こういう感じで考えているんだけど、どうです?」と提案してくれたりとか、名前もないようなキャラにストーリー性を持たせてみたり、キャラの過去を作ってみたり。そういったものを全部、より物語が深くなる、と信じてやってくださるので信頼しています。
――作品をより良くするためにどんどん提案されるんですね。逆に真島先生のほうから提案やディレクションをされたりはするのでしょうか?
真島:ディレクションまではないですね。要望というか感想レベルのもので、「このへんのバトル、カッコよくしてください」とか(笑)。
あとは「原作ではこのへんの尺は長めに取っているんですけど、アニメだったらもう少しすっきりやってもいいんじゃないですかね?」とか。「このへん、あんまり人気なかったので飛ばしてもいいですよ」なんて話もしましたね(笑)。
そんな話をざっくりするくらいで、演出面などは完全にお任せしています。
――監督とプライベートでお会いされたりはするのでしょうか?
真島:何度かはありますけど、ホントに数えるくらいですね。仕事の場や、打ち入りなどのお祭りごとで会うのがほとんどです。
見た目に反してという言い方は失礼ですけど、すごく真面目でストイックな方です(笑)。
――漫画とアニメ、フィールドは違えど、作品を作るうえでこだわりがあると思います。真島先生はどんなシーンを観たときに石平監督のこだわりを感じますか?
真島:アニメと漫画ではきっと方法論や見せ方も違うので、こだわりの部分もきっと違ってくるでしょうし、石平監督に直接聞いたこともないので、ちょっと分からない部分もあるんですけれど、たぶん何らかのこだわりは持っているんでしょうね。
もちろん僕自身も、漫画を描くうえでのこだわりは持っています。かといってそれをアニメに押し付ける気はあまりないですね。継承してほしい部分もありますけど、漫画だからできる表現を無理にアニメに持っていく必要もないな、と思っています。
たとえば、僕の場合だとキャラクターの服装をけっこうきめ細かく描くこともあるんです。よく動くキャラはシンプルに、あまり動かないキャラはきめ細かくデザインするんですが、アニメでそれをやってしまうとすごく大変になってしまうので、「デザインを簡略化してもいいですよ」と言ったり。
――直接聞いたことがないので実際には分からない、ということでしたが、イメージとしてはどういったこだわりや印象を受けますか?
真島:原作ファンを裏切ることはしない、というこだわりなのかな? そういったことはすごく感じますね。内輪ネタであったり、ちょっとメタ視点だったり、そういった自分たちだけが楽しんでいる演出はあまりないかな、と思います。
――視聴者や原作のファンの方を第一に考えているというか。
真島:そうですね。そういうところはすごく大事にされていると感じます。あとは、僕のキャラクターが最大限魅力的に映るようにカット割りなどいろいろ考えてくれているんだろうな、と思います。
――シーンはもちろん、作品を作るうえでの姿勢なども含め、石平監督の作品のどんなところが好きですか?
真島:ちゃんとキャラを理解している、というところですかね。ナツはこういう立ち位置で、ルーシィはこういう立ち位置、といった距離感みたいなものを理解してくれているので、ちょっとしたオリジナルのシーンでも僕の想定外のことは言わせていないです。「(このキャラなら)そう言うよね」というキャラ理解が素晴らしいですね。
――先ほどお話にあったような原作愛の強さが成せる業ですね。
真島:そうですね。たぶんそういったところから来ているのかな、と思います。実際「僕より詳しいんじゃないか?」と思うときもありますからね(笑)。
真島先生は機械を描くのが嫌い!?
――『EDENS ZERO』のアニメ化の発表の際に、「ガンアクションなどに期待している」というようなコメントをされていました。一方、石平監督は重力による“落ちる”表現について言及されていました。真島先生はガンアクションのほかに、どんなシーンに注目されていますか?
真島:やっぱり重力を使ったアクションシーンはすごく楽しみですね。あと、僕は機械などのSFチックなものを描くのが実はすごく苦手なので、だいぶウソをつきながら描いているんですけれど(笑)、アニメではそういった分野が好きな方の作画によって、カッコよく演出されるんじゃないかな、と思います。
僕的にはSFというジャンルは漫画よりアニメのほうが映えると思っていて。特に宇宙空間や宇宙船、銃などはアニメで映えると思っているので、アクションシーンでのSFチックな演出のディテールをすごく楽しみにしています。
――機械などを描かれるのが苦手だとお話されていましたが……
真島:(食い気味に)苦手というより嫌いです(笑)。
一同:(笑)
――それほど不得手なジャンルにあえて挑戦しようと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?
真島:単純に少年漫画においてスペースファンタジー、SF作品が少ないからですね。いつもそうやって隙間産業を狙ってきたので(笑)。
『RAVE』のときもそうで、今の子は信じられないかもしれないですけど、当時はマガジンにファンタジー漫画ってほとんどなかったんですよ。ヤンキーとスポーツの雑誌にファンタジーが載っていたら目立つかな、と思って始めたことなんです。
『FAIRY TAIL』も一見王道ですけれど、実はけっこう珍しいことをやっていて。初めから冒険の仲間が全員揃っているという状態ですし、なんだったらそもそも冒険をしないし(笑)。フタを開けてみると珍しい作品なんです。
今回の『EDENS ZERO』もそんな感じで、特に今の時代は少年漫画でSFは数少ないので、隙間だと思って始めました。
――隙間を意識して作品のモチーフを考えているんですね。真島先生はゲームや映画好きとしても知られていますが、触れてきた作品の影響なども受けていたり?
真島:それはあるかもしれないですね。僕自身動画を見るのも好きですし、映画やゲームもSFものは好きなので。
――今後もそういった影響から思いついたアイデアが作品に登場するのかもしれませんね。
真島:大いにあり得ますね。『FAIRY TAIL』を始めたときも、たしかオンラインゲームにハマっていた時期で、ギルドというシステムになるほど、と思ったところから始まっている部分もあるので。
真島先生が思う自身の過去と今。
――昔と今で、作品を作っていく中で自身の考え方が変わったと感じた部分などはありますか?
真島:どれぐらい昔かにもよるんですけど、デビューしたてのころはホントにがむしゃらに描いていましたし、自分のやりたいものを描きたかったけど担当に「それは違う!」と言われてしぶしぶ修正していました(笑)。
どこかのタイミングからは読者目線を意識するようになって、「自分の描きたいものより読者が見たいものを描く」ということがプロであると学びましたね。
そこからはずっとそのスタイルで、最終的にどういう展開にしようかと迷ったら「自分が描きたいのはどっちだ? 読者が見たいのはどっちだ?」と天秤にかけて、読者が見たいものを取るようになっていきました。
でも、意外と「僕の描きたいもの=読者の見たいもの」というケースが多いので、けっこう幸せなほうだと思います。
――「読者の見たいもの」は、読者の方からのメッセージなどを細かくチェックしていって考えているのでしょうか?
真島:そうですね。ただ、SNSばかりを見ていると偏った意見しか取れないので、ほかの媒体も見ています。そんなにエゴサしてまでちゃんとチェックしているかというと、そうでもないんですけど。人づてに聞いたり、担当から教えてもらったりしながら、どういう評判なのか調査していますね。
――実際に読者の方の反応を受けて、進行が変わったことなどはあったのでしょうか?
真島:よほどのことがない限りまずないと思います。脇役のキャラが自分では予期していない反響を得たりしたら、「もうちょっと登場させようかな」と思ったりはしますけど、「こんな展開はやめてください」と言われてストーリーラインを変える、なんてことはしないと思います。
『RAVE』の頃から引き継がれる“意識”とは?
――これまでも真島先生の作品は数多くアニメ化を果たしてきました。アニメ化の際に意識していることや、ご自身の作品のどういったところにアニメとの親和性があると思いますか?
真島:こういった作品だからアニメ化されやすい、というのはあまり考えたことがないんですけど、バトルアクションはアニメにおいても、海外で売るという意味でも人気のジャンルなんだと思います。
――アニメ化を意識してあえて描写した部分などはあるのでしょうか?
真島:『RAVE』のころは、初めての作品ということもありアニメ化してほしかったので、“多国籍”という部分にこだわっていましたね。地域が限定されないようにというか。
『RAVE』の主人公は「ハル」というんですけど、漢字にしないでカタカナにしたのは日本の人にも海外の人にも取れるように、という絶妙なニュアンスにしたかったからです。
アメリカっぽさ、ヨーロッパっぽさに執着しすぎないように、ときにはアフリカなどほかの地方の要素も入れてみたりしましたね。とにかく多国籍な感じのキャラクターをいっぱい出していくほうが海外の方にも受け入れられやすいですし、もしかしたらアニメ化もしやすいのかもしれないですね。
――その意識は『FAIRY TAIL』、そして『EDENS ZERO』にも引き継がれているわけですね。
真島:そうですね。多国籍のつもりでいろいろやっています。
――バトルシーン、アクションシーンではどういったことを意識して描いているのでしょうか?
真島:うーん、どうなんでしょう? 僕の中ではバトルシーンは子どもたちが「カッコいい!」と思ってくれればいいので、なにか伝えたいというよりは「カッコいいでしょ?」と思いながら描いています(笑)。
もちろん、前後のストーリーの流れによってはすごく意味を持つこともあるんですけれど。なので、そのときどきで変わる、といった感じですかね。