デビューから2年半 ReoNaが"UNDER-WORLD"で『ソードアート・オンライン』シリーズとの歩みを“一対一”の特別な空間で届ける
「久しぶりのワンマンライブ。じっくり、ゆっくりお歌の世界に浸ってもらえますように」。
ReoNaの言葉と共に発表になったReoNaの初の配信&リアルのハイブリッドワンマンライブ、Online Live "UNDER-WORLD"。ReoNa、および、神崎エルザ starring ReoNaが歌う『ソードアート・オンライン』シリーズ関連楽曲のみで構成された有観客公演である。12月8日(火)に東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われたライブの詳細をお届けする。
初めてと特別に溢れた、『ソードアート・オンライン』シリーズとの歩み
ReoNaとして約1年ぶりとなる待望の単独ライブ。受付で消毒をして席へ向かうと、いつものクラシカルなSEではなく、ゲームの電子ノイズのような音が流れていた。舞台のモニターには、『ソードアート・オンライン』のライトキューブのような立方体型が映し出されていて、席に座ると、まるでナーヴギアでこの“UNDER-WORLD”という世界へダイブしたかのような気持ちにさせられる。
開演時刻。そのライトキューブが動き出し、ReoNaの魂のなかに入り込むような形で、彼女がSNSで発信している「こえにっき」風の朗読ムービーが始まった。<何にも溶け込めないなら 何よりも輝くよ>という「step, step」の一節にはじまり、「虹の彼方に」まで『ソードアート・オンライン』関連曲の言葉が紡がれ……映像に「ReoNa “UNDER-WORLD”」の文字が表れたあと、紗幕にReoNaのシルエットが映し出された。
次の瞬間、<魂の色は何色ですか>という声が響き──幕が下りると表れたのは、ReoNaとバンドメンバー、さらにストリングス8名(Kakutani Strings)で、『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』最終章OPテーマの「ANIMA」をパフォーマンス。ReoNaの魂の奥底から絞り出すような、繊細でいて力強い歌声が響き渡る。Dメロの問いかけでは照明が言葉通り、赤と青に変化。オープニングにいきなりクライマックスを持ってきたかのような、ドラマティックな展開である。
客席があっという間にReoNa色に染まったところで「ようこそ、“UNDER-WORLD”へ。今日は最後まで、お歌の世界、ゆっくり楽しんでいってね」と短めに挨拶。
すると今度はTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』2ndクールのEDテーマ「forget-me-not」、家庭用ゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス』OPテーマ「Scar/let」と、真逆のカラーが咲き乱れる。「forget-me-not」はReoNa名義で初めて『ソードアート・オンライン』シリーズに寄り添った曲で、「Scar/let」は初のゲーム主題歌であり、ゲーム内に自身が登場した特別な作品。歌声にグッと感情が入っているのが分かる。デビューから約2年半、『ソードアート・オンライン』シリーズと共に歩んできた道のりには、ReoNaにとってのたくさんの“はじめて”“とくべつ”の足あとが残されていることを改めて感じさせた。
ちなみにこの日、ReoNaの歌声を支えていたGt.堀崎翔さん、Key.荒幡亮平さん、Dr.比田井修さん、Bs.二村学さんは、「Scar/let」の音源制作メンバー(荒幡さんは「Scar/let」で、ReoNa楽曲を初編曲)。堀崎さんをはじめファンにとっておなじみの面々ではあるが、ReoNaを含めたこの5人が一同に揃ってステージに立つのはおそらく初めて。今日が新鮮な刺激で溢れることを予感させるような、勢いあるサウンドが印象的であった。
「改めてこんにちは、ReoNaです。UNDER-WORLD。指折り数えた今日が、やっとやってきました。今日はこうして久々に、顔を合わせてお歌をお届けできる、そして画面の向こうのあなたにもお歌を受け取ってもらえる、特別なワンマンライブ。『ソードアート・オンライン』シリーズに寄り添わせていただいたお歌を今日はたっぷりとお届けします。今日はそれぞれの場所で、それぞれの空間で、私とあなたと、一対一、自分の世界、お隣の人の世界、前の、後ろの人の世界を大切に、最後まで、お歌の世界に浸ってもらえたら、楽しんでもらえたらうれしいです」
ストリングスメンバーはバックステージに戻り、ここからはバトルモードにチェンジ。射抜くようにまっすぐ前を見つめ、「いつか灰になるその瞬間まで、いつだって引き金を引くのは自分自身」という言葉から、アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の神崎エルザのロックナンバーを連射。「Disorder」、「Independence」、「Dancer in the Discord」をメドレー状態でつなげていく怒涛の展開に、その場にいる観客が内側から熱くなっていくのを感じた。性急なサウンドに合わせて激しく変化する照明も、引き込まれる要因のひとつだ。
静かな語りと共に届けられるお歌の数々
「“UNDER-WORLD”、楽しんでますか? ここからはちょっと一息、ゆっくりお歌の世界に浸ってもらえたらうれしいです。アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』見ていましたか? 人生で初めて、神崎エルザとしてお歌で寄り添わせてもらった作品。ゲームのなかでの自分、アバターの自分、現実世界での自分、リアルの自分。リアルではかなわないことがゲームの中でなら叶う。
そんなことを求めて、ガンゲイル・オンラインの世界に飛び込んだレンとピトフーイ。現実ではとりつくろっちゃうことや、仮面をかぶってしまうことも、画面のなかではさらけ出したり、ぶつけられたり。目まぐるしくすぎていく日々のなか、まわっていく世界のなかで、どこか馴染めなかったり、溶け込めなかったりする自分がいたとしたら。いっそサイズの合わない靴なんて脱ぎ捨てて、自分だけの舞台で踊れたら。降りしきる雨のなかでも、歌い続けられたら──」
ReoNaのお歌の原点である神崎エルザの複雑な心情、ひたむきさをReoNaが等身大で表現していく。ReoNaの高い表現力が顕著に表れたのがこのブロックだ。まずは「step, step」で軽やかに自由を歌い、希望の「ヒカリ」を届けると「大好きだったおじいちゃんとおばあちゃんがほめてくれたお歌を、残してくれた言葉を、大切にしたくて、正解にしたくて。“さよなら”を悲しいだけのものにしないために。さよならとはじまりの歌」というプロローグから「葬送の儀 -Acoustic ver.-」へ。お歌を受け取った人それぞれに、思い思いの映像が流れていたと思う。合間に発する吐息、儚くも深いふかい歌声で“一対一”、あなただけにゆっくりお歌を、物語を届けていく。
続く、アコースティックの「雨に唄えば」(「虹の彼方に」のアンサーソング)と、ピアノ伴奏の「虹の彼方に」から思い浮かぶのは、もちろん『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のキリトとユージオ。『ソードアート・オンライン アリシゼーション』19話の特殊エンディングとして流れた「虹の彼方に」は、自然とユージオの「悲しいのはもうイヤなんだ」という心の摩擦が思い浮かぶ。思わず泣けてしまったのは、きっと私だけではなかっただろう。
そして「レプリカ」の美しいインストゥルメンタルからつながるように「ピルグリム -ReoNa ver.-」の一節をピアノ伴奏で歌うと、ストリングス、バンドも加わり、終わらない旅路に寄り添う曲として晴れやかに広がっていった。そんな情景をさらに色濃くしたのが次の楽曲だ。
「ふと振り返ってきたときに、今まで生きてきて、いったい何を得られたんだろう。自分って空っぽなんじゃないかって不安になって。じゃあせめて、好きでい続けられていたものだけは大切にしようって。何ももってないなら、何も縛られてないなら。きっと、どこに逃げてもいいし。誰も見てないなら、だれにも期待されてないなら、それはきっと何を選んでも自由で。みんな、一人ひとりだけの旅路を、自分だけの道を。終わりのないエスケープを」
アコースティックギターを掲げ、ストリングス隊とバンドで「ALONE」を笑顔で届けていくReoNa。そこからは芯となる想いも伝わってきた。
「私が今日こうして、みんなに、あなたにお歌を届けられている理由。大きなキッカケをくれたのが神崎エルザという存在でした。はじめは夢のなかにいるみたいで、醒めないでほしくて、それを掴むためにあがいて、もがいて、月日が経って。今日こうしてこんなに大きな未来に辿り着くことができました。いろんないやなこと、つらいことから逃げて、逃げて、迷って、さまよった果てに、ReoNaに歌う理由をくれたお歌」
そうしてはじまったのは“神崎エルザ starring ReoNa”のはじまりのバラード「Rea(s)oN」。ReoNaの表現する心の機微と、命のかけがえのなさ。<そこにあなたがいた/ただそれだけで 命は輝くから>という詩は毎回グッとくるものがあるが、この日は切々と響くものがあった。少女時代のReoNaにも届けたい、光に満ちた言葉だ。