ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2014年編】|『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』 ビジュアルノベルは、かつてのオタク達にとっての青春だった
2021年。テレビにかじりつき、画面の中で大冒険を繰り広げるアニメのキャラクターたちに夢を見ていた少年少女だったぼくたちは、いつの間にか大人になっていました。進学、就職、結婚、いろんな出来事があったけれど、でも、それでも、今でも、アニメが好きなのは変わりませんでした。
近年、10周年として大々的に売り出す作品も多くなってきたアニメ業界。今一度、ぼくらの人生を変えたアニメを振り返ってみませんか? 改めて振り返ってみると、これからの10年はとんでもなくすごい作品たちが10周年を迎えていくことに気づくはずです。
アニメイトタイムズでは、「ぼくらの人生を変えたアニメ11選」と題して、2010年〜2020年までの各年から1作品をピックアップし、アニメイトタイムズを代表するライターによる独自見解のもと振り返っていく特別連載を掲載していきます。
今回お届けする連載第5回は、2014年に放送された『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』です。執筆は米澤崇史さん。
また、記事の最後に読者のみなさんの人生を変えた作品をアンケートで募集しています。あのときのあなたの状況を聞かせてください。きっと、あなたのアニメによって奮起させられた経験が、みんなの希望になることがあると思います。
それでは、連載スタートです!
※本記事はTVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の核心部分を含めたネタバレの内容を含んでいるのでご注意を。
『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』
■あらすじ
遠坂凛をヒロインとするシナリオ。魔術師の名門・遠坂家に育った凛は、亡き父への想いと共にアーチャーのサーヴァントを召喚し、聖杯戦争に参加する。しかしその矢先、彼女は同じ高校に通う衛宮士郎が戦いに巻き込まれたことに気づき、思いがけず瀕死の彼を助けてしまう。やがて彼女は、セイバーのサーヴァントを召喚した士郎と共に、聖杯戦争に仕組まれた大きな陰謀を打ち砕くべく戦うことにする。そして物語は、そんな士郎の魔術に秘められた謎と、頑なに「正義の味方」を目指そうとする彼の性質の真贋を問うものへと発展していく。
■キャスト
衛宮士郎:杉山紀彰
遠坂凛:植田佳奈
セイバー:川澄綾子
アーチャー:諏訪部順一
間桐桜:下屋則子
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
葛木宗一郎:てらそままさき
ランサー:神奈延年
キャスター:田中敦子
アサシン:三木眞一郎
ライダー:浅川悠
藤村大河:伊藤美紀
間桐慎二:神谷浩史
柳洞一成:真殿光昭
言峰綺礼:中田譲治
衛宮切嗣:小山力也
ギルガメッシュ:関智一
■スタッフ
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:三浦貴博
キャラクターデザイン:須藤友徳・田畑壽之・碇谷敦
色彩設計:千葉絵美・松岡美佳
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:宍戸幸次郎
音楽:深澤秀行
アニメーション制作:ufotable
オープニングテーマ:綾野ましろ「ideal white」(Ariola Japan)
エンディングテーマ:Kalafina「believe」(SME Records)
連載バックナンバー
◆【2010年】『STAR DRIVER 輝きのタクト』
◆【2011年】『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
◆【2012年】『PSYCHO-PASS サイコパス』
◆【2013年】『Free!』
◆【2014年】『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』
◆【2015年】『響け!ユーフォニアム』
ビジュアルノベルと『Fate/stay night』との出会い
ある日、「この10年間で、人生を変えたアニメを教えて欲しい」というアニメイトタイムズ編集・石橋からの依頼がきた。筆者と石橋は世代も近く、ほぼ同じ時代を生きてきたオタクとして、好む作品は違えど、概ね同じジャンルを体験してきた仲間でもあったため、共通した昔話で盛り上がることも少なくない。
そのうちの一つが、「ビジュアルノベル」というジャンルのゲームだった。
「ビジュアルノベル」というのは、主にキャラクターの立ち絵とテキスト、BGMによって構成される、文章を読むことをメインとしたゲームを指す。
1990年代後半~2000年代前半あたりにかけては、このビジュアルノベルというジャンルが大きく盛り上がっていた時代で、『ToHeart』(1997年)、『Kanon』(1999年)、『Air』(2000年)、『D.C. 〜ダ・カーポ〜』(2002年)、『うたわれるもの』(2002年)、『マブラヴ』(2003年)など、現在もなお人気や続編がリリースされるヒット作品がいくつも生まれていた。
ストーリー表現の自由度がとにかく高く、開発費を低めに抑えることも可能だったビジュアルノベルには、様々なゲームメーカーが参入し、多数の傑作・怪作が生まれることになる。
当時のビジュアルノベルというのは、オタク同士のコミュニティの大きな共通話題で、一種の必修科目のようにもなっていた。
そんなビジュアルノベルというジャンルに筆者が深く熱中するきっかけを与えてくれたのが、2004年にTYPE-MOONから発売されたPCゲームである『Fate/stay night』。
同人ゲーム『月姫』をヒットさせ、商業化を果たしたTYPE-MOONの新作ということで、発売前から非常に高い注目を浴びていたタイトルなのだが、当時地方在住だった筆者は同人ゲームとの縁が薄く、インターネットやオタク仲間の友人たちからの勧めで存在を知ったのが最初の出会いだった。
いざゲームをプレイすると、まず奈須きのこ氏による独特の文体から強い衝撃を受ける。
筆者が考える作家には2タイプがある。「物語を理解する上で邪魔にならず、内容がすんなり入ってくる」タイプと、「独特の個性があり、多少のとっつきにくさはあるものの、書く文章そのものに魅力がある」タイプだ。
この2種類に大まかに分けられると考えているのだが、奈須氏の文章は明らかに後者で、一度読み進め始めると止まらなくなる中毒性があった。
RPGやアクションといった、他のジャンルのゲームでは描くことが困難であろう膨大な設定をゲーム内で知ることができるのも、筆者のオタク心をワクワクさせてくれた。
テーマ性の高いストーリーに加えて、武内崇氏による迫力満点かつ美麗なイラスト(とくにイベントスチルの美しさ)、戦闘シーンを盛り上げるスクリプト演出に印象的なBGMの数々と、あらゆるクオリティが当時のビジュアルノベルゲームの中でも突出しており、「ただ文章を読むだけで、ここまで人の心を動かすことができるのか……!」と、強い衝撃を受け、ビジュアルノベルというジャンルのゲームそのものへの認識が大きく変わったことを覚えている。
同時に筆者は、TYPE-MOONの過去作である『月姫』や『空の境界』などにも手を出すなど、TYPE-MOONの世界観自体にもどっぷりと浸かっていくことになる。