『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ネタバレなしレビュー|「20代前半の若者からみたエヴァンゲリオン」~シンジになれなかった僕たち
2021年3月8日(月)、「エヴァンゲリオンシリーズ」完結作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』がついに全国公開となりました。公開日はコロナ禍の影響での延期後、公開10日前という電撃発表。平日、しかも月曜日という公開日にも関わらず、当日のチケットが完売する映画館も見られ、初日興収8億円、動員数は50万人の突破しました。
ファンの中には『シン・エヴァ』を”卒業式だ”と語るファンも多く、大いに盛り上がりを見せています。
それもそのはず。前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の公開から約8年半、TVアニメシリーズ放送から25年以上という歳月を経ての完結作です。これまでの時間を費やしてのファンの想いは一言で表すことは不可能でしょう。
ネット上でも様々な感想が溢れていますが、しかしそのどれもが“『エヴァンゲリオン』世代”の方たちの意見ばかりのような気がします。
もちろんそれが悪いことではなく、世代の方たちがファンのメインストリームであるため当然のことだと想いますし、筆者も楽しんで読ませていただいてます。
でも、今日は“シンジになれなかった僕たち”である20代前半の『エヴァンゲリオン』ファンの言葉も聞いてほしいのです。
そんな僕たち(筆者は大学生)が観る『エヴァンゲリオン』とは何なのか。
若者のアニメ離れを食い止めるために作られた、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズ』から僕らは何を受け取ったのか? みなさんと同じように、僕も自分の気持ちを整理しようと思います。
※『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のネタバレは含みませんが、作品をご覧になってから読むことをおすすめします。
『エヴァンゲリオン』との出会い
まず、僕の『エヴァンゲリオン』との出会いについて。ずばり言うと、生まれてからすでにこの世界には『エヴァンゲリオン』という作品が存在しているため、後追いです。
あれは2007年の夏でした。
何か面白い番組は無いかなとチャンネルを回していたときのこと。ケーブルテレビで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズ』の制作を記念した『新世紀エヴァンゲリオン』(TVアニメ)の一挙再放送を見ました。
「なんだか大人のアニメだな」と思った記憶があります。内容はよく理解することができないけれど、不思議と面白くてTVにしがみついていて見ていました。うたた寝している従姉妹よ、起きてくれるなよ! と当時8歳くらいの僕は、そう思ったのを覚えています(妙にセクシーなシーンもありますしね……)。
それから月日は経ち、大人への階段を登り始めた高校2年生の夏。初めて『エヴァ』を見たあの日から4年後の12歳には、軽音楽部が題材のアニメがブームとなり、僕もすっかりアニメオタクになっていました。
みなさんも経験があると思いますが、学生時代って好きになるとのめり込むスピードがとても早いんですよね。ひたすらに面白いアニメを探しては見る、ということを繰り返していました。
そんなこともあり、『エヴァンゲリオン』に再び戻ってくるのも時間の問題でした。
そこで衝撃が走ります。
強大な敵の前で、動かなくなってしまう「エヴァンゲリオン初号機」。それに向かって主人公・シンジが
「みんなを助けるために、動いてくれ」
と叫びます。そのシーンが異常に好きになりました。完結を迎えた今でも一番印象に残っているのはそのシーンです。
それまでウジウジして、理解できなかったシンジと一瞬1つになれた気がしました。絶望的な状況の中、かすかな希望の中で、誰かのために命を賭す。
そんなシンジに強く「憧れ」ました。とってもかっこよかったんです。
そこからは順調に『エヴァ』の世界にハマり、すべての作品に触れ、何度も繰り返し鑑賞し読んで、2021年3月8日を迎えます。
僕は自分でも幸運だとも偶然だとも思うのですが、うたた寝している従姉妹を横目にケーブルテレビのチャンネルを回さなければ、『エヴァンゲリオン』という作品に出会わなかったかもしれません。あの軽音部アニメブームに乗っていろんな作品を掘っていなければ、『エヴァンゲリオン』に再び出会うことはなかったはずなのです。
ほんのささいなきっかけかもしれませんが、自分で作品を見つける努力をしなければ、僕にとって『エヴァンゲリオン』は、“大人の人たちに人気のある作品”という認識で止まっていたのだと思います。
そんな僕のような若い世代にとって『エヴァンゲリオン』とは、“みんなが見ているから見る”という当たり前のことではなく、興味を持つのに能動的になることが必要な作品だったのです。