ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2020年編】|『ひぐらしのなく頃に 業』懐かしいけど新しくて、切ないけど楽しい、あの『ひぐらし』の世界が帰ってきた
『ひぐらしのなく頃に 業』がもつ、リメイクと続編という2つの側面
最初のアニメ放送から約15年が経ち、そんな『ひぐらし』人気も、落ち着きつつあった中に発表されたのが、新たなTVアニメシリーズ。メインキャストはこれまでのシリーズを引き継ぎつつ、キャラクターデザインが『ナースウィッチ小麦ちゃん』『化物語』などで知られる渡辺明夫氏に変更になったことが話題となったが、旧アニメシリーズ放送から10年以上が経過していたこと、近年は新しい層に向けたリメイク系作品が多数放送されていたこともあり、新アニメもそれに近いものになると予想されていた。
放送前はファンからの注目もそれほど高くはなかった印象で、実際筆者も「新しい層が入って来てくれるのは嬉しいけど、もう犯人や真相も知ってるしなぁ」と複雑な心境だったことを覚えている。というのも、原作ゲーム版の『ひぐらし』の各種エピソードは真相が明かされないまま悲劇的な結末を迎えるといったものが多く、真相や犯人について推理したりプレイヤー同士で交わす議論の楽しさも、『ひぐらし』のヒットの要因となっていたからだ。
先に犯人をネタバレされた状態でミステリー小説を読んでもおもしろさが半減してしまうし、なまじ大ヒットしたことで、多くのゲーム・アニメファンにその真相が広く知れ渡っていたため、今リメイクしても、大きな話題を生み出すのは難しいのではないかと予想していたのだ。
しかし、第1話の放送後から少しずつ風向きが変わり始める。事前の予想通り、最初のエピソードである「鬼隠し編」をベースとしながらも、古手梨花が惨劇をループしていることを仄めかされたり、旧作では終盤までその存在を明かされなかった羽入も登場するなど、明らかに旧作とは異なるシーンが追加。さらにメインタイトルが『ひぐらしのなく頃に業』、サブタイトルが「鬼騙し編」となることも発表され、ただリメイクではない、新たなストーリーが展開することが明らかにされ、ファンからの注目を一気に集めることになる。
例えば「鬼隠し編」では、圭一はダム戦争や園崎家といった雛見沢の暗部を知ったことで「雛見沢症候群」と呼ばれる、精神に異常をきたす雛見沢特有の風土病を発症して疑心暗鬼に支配され、友人であるレナや魅音を信じられなくなったことが、大きな惨劇の要因となっていた。
しかし『業』では、梨花のアドバイスを受けたことで自らが引き起こしてしまった惨劇の記憶を垣間見た圭一は、「レナを信じる」という、惨劇フラグをへし折る選択を選ぶ。この展開に興奮したのはおそらく筆者だけではなく、ファンの多くが「このシーンで圭一が扉を開けていれば、惨劇は回避できたのでは……」というIFを想像したことがあったのではないだろうか。しかしその後「鬼騙し編」では、雛見沢症候群を発症させていたのは圭一ではなくレナであることが判明。再び惨劇が起こるという結末に終わってしまう。
多くのファンが同じタイミングで体験する『ひぐらし』の新ストーリーは、かなり久しぶりだったのもあり(旧作もゲームという原作が存在し、ゲームをプレイしていればその先の展開は知っていたため、TVアニメとしてはおそらく『業』が初めて)、「なぜレナが症候群を発症させたのか」「黒幕は旧作と同じなのか」「『うみねこのなく頃に』の魔女が絡んでいるのでは?」など、様々な推理・考察が行われ始める。
これに元々『ひぐらし』のヒットには考察や推理が好きなファン層が集まっていたこと、TwitterなどのSNSがより普及したこと、TVアニメという敷居の低い媒体だったことなどの要因によって、異例とも言える盛り上がりを見せることになる。