『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』富野由悠季監督インタビュー|「素人芸だった」と語る『逆シャア』への反省と、『閃光のハサウェイ』に向けて
『機動戦士ガンダム』の14年後を描いた映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(以下、逆シャア)。1988年に公開された劇場作品である本作ですが、ガンダム40周年の一環プロジェクト『ガンダム映像新体験TOUR』の一環として、Dolby Cinema™(ドルビーシネマ)フォーマットでの上映が決定。
そのメディア向けの試写会にて、『ガンダム』シリーズの生みの親であり、『逆シャア』でも監督を務めた富野由悠季氏にインタビューする機会を得ました。その模様をお届けしていきます。
『ガンダム』再生チームの技術力は世界一
――本日はよろしくお願いします。
富野由悠季氏(以下、富野):まず最初にお伝えしておきたい。古い映像作品をデジタル化する作業に関しては、『ガンダム』は日本一どころではなく、世界一かもしれないチームです。なので、今回僕は完全にノーチェックです。
というのも、4〜5年前にも『逆シャア』のリマスターをやっているんだけど、その時にもう今後はチェックするのをやめようと思った。『ガンダム』の担当スタッフは、新しいソフトが出る度に何度もリマスターをやっていて、チームそのものが技術的にも感覚的にもその作業に特化しているので、僕みたいな古い人間が口を出す余地がないからです。
20年くらい前までは昔の色味とのすり合わせだったり、いろいろと口を出していましたが、それ以降はその時その時のソフトのクセに合わせていく方向になりました。なので今の『ガンダム』のリマスターは、「オリジナルのものを忠実に再生する」という目的からは離れて、新しい世代の仕事になっています。
ここ数年、昔の名作と呼ばれる作品のリマスターを見た時、「なんでこんなに解像度が悪いのか」「なぜこんな昔の映像そのままなんだろうか」と、フィルムが見づらいのをそのまま放置しているような作品が多いことに気づきました。
そのおかげで『ガンダム』を再生してくれているチームが、生半可なものではなかったのだと改めて気づけたので、この点は威張ろうと思っています。ただ、僕のやった仕事ではないということもしっかりと伝えていただきたい(笑)。
――しっかりと伝えさせていただきます(笑)。
富野:僕はそういったデジタルへの対応をしているスタッフとは明らかに世代が違うんですけど、元々のガンダムを知っていた世代が、しっかりと受け渡し作業をしてくれたおかげでもあると感謝しています。
だからこそ僕は今回改めて『逆襲のシャア』を見た時、つまんないと思った。つまり、少なからず音や映像がやせ細っている部分はあるんだけど、それも気にならない範囲に収まっていて、昔の作品という見え方にならないんです。だから30年以上前の作品に見えないので、困ったなと思っているのです。
僕が褒めているのはあくまで再生技術のことだけで、『逆シャア』そのものについてはまったくいいとは思っていません。むしろ同じ話の繰り返しになって、戦闘シーンばっかり出てきて申し訳ないなと思っています。