アニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』監督・境宗久さん×演出・佐藤 威さん×岡本泰知さん鼎談|監督が第2期で描こうとしたテーマ、そして演出スタッフ二人が今作から感じた印象とは【SAGA_R:03】
2018年を代表するアニメの1つ『ゾンビランドサガ』待望の続篇、『ゾンビランドサガ リベンジ』が2021年4月から放送中! アニメイトタイムズでは、第2期でもインタビュー連載企画「ゾンビランドサガ広報誌R(リベンジ)」を実施しています。
先日放送の3話では、アイアンフリルのライブのオープニングアクトを務めることになったフランシュシュに、幸太郎が愛抜きで出演することを決断。アイドル経験者としてメンバーを引っ張っていくことへの不安感を抱いているところに、アイアンフリルへの愛引き抜きを目撃という衝撃的なひきで終わりました。
今回のインタビューでは境宗久監督と演出の佐藤 威さん、岡本泰知さんにご登場いただき、佐藤さんと岡本さんが演出をすることになったきっかけと境監督が抜擢した理由と佐藤さんが絵コンテ、岡本さんが演出を担当された3話について振り返っていただきました。
佐藤さんと岡本さんが演出の仕事と『ゾンビランドサガ』に参加されるきっかけ。そして境監督の評価は?
――佐藤さんと岡本さんは演出のお仕事をされるようになったきっかけと、『ゾンビランドサガ』に参加することになった経緯を教えてください。
佐藤 威さん(以下、佐藤):高校生の頃に細田守監督の『サマーウォーズ』という映画を見て、衝撃を受けたのがアニメの演出を目指したきっかけでした。そしてMAPPAに入社した時は制作進行でしたが、社長や周りの人たちにアピールし続けていたらいつの間にか演出をさせてもらえるようになっていました(笑)。
『ゾンビランドサガ』には、境(宗久)さんの隣で仕事を勉強させて頂くために参加しました。境さんの元で一度学ばせて頂きたいと思ったので、「ぜひお願いします」と。
境 宗久監督(以下、境):『ゾンビランドサガ』というオリジナル作品をやるにあたって、なるべくMAPPA内の演出の人たちを集めて、コミュニケーションや連絡を取りやすい環境でやりたいねという話があり、その流れで威君に入ってもらいました。
実際、『ゾンビランドサガ』専用のスタッフルームはなかったけど、同じ場所に固まっていたし、いろいろなセクションの人ともやりやすくなっていて。威君は、この作品が演出の初担当だったっけ?
佐藤:その前に『将国のアルタイル』をやっていましたが、絵コンテを担当するのはこの作品が初めてでした。
岡本泰知さん(以下、岡本):僕はMAPPAに入る前はアニメ業界ではない、まったく別の仕事をしていました。もともとアニメは好きでしたが、22歳の頃、演出という仕事を知って、どうせなら好きなことをやりたいと思って、退職してMAPPAに入社しました。
僕も佐藤さんと同じく制作進行からのスタートでしたが、自主的に描いたコンテを演出部に持ち込んで、「演出をやりたいです」と。その後、演出部のお仕事に参加させていただくようになって、念願叶って演出になれました。
『ゾンビランドサガ』の1期ではまだ演出として関わってはいませんでしたが、境さんとは『恋とプロデューサー』で、助手としてつかせていただいて、更に初めてコンテデビューもさせていただきました。その流れで、『ゾンビランドサガ リベンジ』から演出として参加させていただくことになりました。
――境監督がお二人とお仕事をされた印象をお聞かせください。
境:自分も通ってきた道だから、やり慣れないところやわからないところがいっぱいあるんだろうなと思いつつ。悩みどころは理解しやすいので、「じゃあ、こういうふうに考えてみたら?」とか「人それぞれでやり方があるから自分なりに考えてやってみたら」など、いろいろ話しながらやれているかなと思います。2人共、おもしろい感じで育ってきている気がするし、この先もどんどんやっていければいいんじゃないかなと思っています。
想像以上の盛り上がりにビックリ。1話の収録で戸惑うキャストへ境監督が放った言葉が印象的
――佐藤さんは『ゾンビランドサガ』の放送開始からの盛り上がりをどのように感じていましたか?
佐藤:オリジナルアニメということもあって、1話目の反応が気になるところで。放送前の試写会でも盛り上がりみたいなものは感じましたが、放送が始まると想像以上の反響をいただいて、ビックリしました。
1話のアフレコのテストが終わった後、(幸太郎役の)宮野(真守)さんが「これで大丈夫なんですか?」と戸惑っていらっしゃって。でも境監督が「これでいいんです!」とおっしゃっていたのが印象的でした。そんなふうに手探りで作った作品が話数を追うごとにどんどん反響が大きくなっていって。その毎回の反応を楽しみに僕たちも作っていました。
岡本さんが「これが許されるんだ!?」と思った点は「すべて」?
――そんな1期が盛り上がって、期待値が上がっている中で、2期から参加されるのは岡本さんにとって難しかったのでは?
岡本:まず世界観をつかむのが大変で。この作品が好きで、いち視聴者として見ていたので、ある程度は理解できてはいましたが、いざ現場に入るとテンションなど、なかなか特殊だなと思ったし、「これが許されるんだ!?」と驚かされることも多くて(笑)。でも演出的にはやりがいがある作品だなと感じました。
――「これが許されるんだ!?」というのはどんなところですか?
岡本:ほぼすべてですよね(笑)。まずゾンビというところがおかしいし、死んでいるから許されるんだという点も首が取れたりとか随所にあって。
境:「表情もここまで崩していいんだ」とかね。絵面の作り方もほとんど制限を設けなかったし。出してもらってから「これはやめておこうか」ということもあったけど(笑)。
佐藤:懐が深い作品というか、自由におもしろいと思ったことをやっても受け入れてもらえたのでやってて、楽しかったですね。
境:1期の時、威君がやった5話(「君の心にナイスバードSAGA」)なんて、めちゃめちゃやってたよね。
佐藤:やりたい放題やったのに、想像以上に視聴者の方に受け入れて頂けて(笑)。
境:威君から「泥の中をはいつくばる表情をこれにしたいんです」と言われた時、最初は「う~ん」と思ったけど、「これでいこう!」って決めたのが懐かしいですね。
――あのインパクトが大きかった1話が視聴者の皆さんに受け入れられたことで、「何でもあるのが『ゾンビランドサガ』」みたいな感じになった気がします。
境:そこが甘えている部分なのか、攻めている部分なのかはわかりませんが、「これくらいは許してもらえるだろう」みたい感覚はあったかもしれません(笑)。最初からはっちゃけたギャグシーンは飛ばしていこうと考えていましたが、思ったよりも幅は広がったかなと思います。
――境監督から佐藤さんと岡本さんへ演出的な面で求めたこと、オーダーされたことは?
境:ギャグやぶっ飛んだ作品だけど、根幹にある熱血アイドルものという熱さやシリアスなドラマはしっかりあるので、そこは大事にしつつ、大人しくまとめようとせず、いろいろ遊んで、思いついたら何でもやってみるということを今回もやれたらいいのかなと。
――だから『ゾンビランドサガ リベンジ』では1期を超えるハチャメチャさなんですね。
境:2話なんて、特にそうですよね(笑)。
――佐藤さんと岡本さんが演出面で意識されたことは?
佐藤:2期をやると決まった時から絶対、参加したいと思っていたので、「やりたいです!」とずっとアピールしていました。自分が2期で見てみたい『ゾンビランドサガ』をどうフィルムにしていけるか、笑ったり、泣いたり、熱くなったりという色々なおもしろみを意識しながら今回作っていけているかなと思います。
――1期の時同様に、見ている人の感情をガタガタにするような?
佐藤:どれだけ感情を揺さぶれるか、ですね。
岡本:境さんに最初に言われたのは、「ゾンビであることが一番のギャグだから」と。また僕が演出を担当させていただいた3話もそうですが、まじめなところはまじめに、本気でまじめに作って、「何やってんだ、こいつら」と思わせるようにしたいと、笑いどころは意識しました。
それぞれのキャラクターの個性や想いがしっかりあるので、演出的には感動させるところはちゃんと感動させつつ、「この子たちは何だろう?」という部分をバランスよくできたらいいなと思いました。
(C)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会