アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』放送祝10周年! ~平成オタクのバイブルだった『俺妹』で僕は「ヲタ」になった~
『俺妹』から教えてもらったこと
『俺妹』からは本当にたくさんのことを教えてもらいましたが、今でも心に残っている大事な教えを改めて振り返ろうと思います。
オタク像とオタク環境
ヒロインの桐乃はアニメと美少女ゲームのオタク。表では読者モデルをやっていたり陸上部で活躍したりと優等生ですが、プライベートでは自室にこもってアニメやゲームに興じています。
桐乃は他にも、兄の京介に萌キャラの魅力を早口で語ったり、共にアキバに新作グッズを買いに行ったり、オタク掲示板のオフ会にも出向いて友人を作ったりと、オタ活に勤しんでいきます。
今では当たり前のオタ活かもしれませんが、私は桐乃の一連のオタク活動から、オタクの生態や楽しさを学ぶことになるのでした。
それもそのはず。あの頃の私は、田舎に住んでおりインターネットも完全に普及している地域ではなかったため、アニメやゲームに触れられる機会も少なく、劇中に出てくる何もかもが新鮮でした。
「ほんとにチェックのネルシャツを着ているんだ!」とか、
「キターーーーー!!とか言うんだ!」とか、
当時はある種当たり前だったことが、純粋な田舎のオタクだった私にはフィクションのような存在だったのです。
ですが、『俺妹』には、世間から持たれているオタクのマイナスなイメージやお笑いなどのネタにされがちなオタクの姿とは違って、オタクの良い部分がたっぷりと詰まっていました。
オタク趣味というものは見る人によってはくだらなくて、どうしよもうないただのこだわりかもしれません。しかし! 良いところや面白いところもあるのです。
皆さんはオタクの持つ熱量に触れたことがありますでしょうか。オタクにとって好きなコンテンツに注ぐ情熱はいわば生きるための”バイタリティ”です。その熱がかっこよく、そして面白い。実際、今テレビやYouTubeなどで人気を集めるコンテンツの一つとして、ある特定の物事に関するマニアックな知識や解説、情熱的な活動などよく見かけますよね。
大物MCに自分が推すジャンルをプレゼンする番組があったり、変わった分野のオタクにフォーカスしてそれに感心する、という構造は今やポピュラーなものになっています。
これは言い過ぎかもしれませんが、世の中の多くの人が没頭できるものがないということはままあるのです。そんな人達から見れば、オタクの情熱というものはパワーがある存在に見えることでしょう。
そう、オタクの情熱は時として凄まじい「魅力」になりえるのです。劇中でもヒロインの桐乃を初め、その情熱を見せてくれます。
桐乃は何事においても全身全霊。陸上競技、モデル業、オタク活動その全てに全力。そして全力で楽しんでいることも伝わります。どれも彼女の人生を彩る大事な要素になっています。
そんな彼女が、好きな美少女ゲームのヒロインを語る姿や、メルルのライブでサイリウムを振る姿、友人である黒猫と意見をぶつけ合う姿、どれをとっても熱量にあふれていてかっこよく、そして魅力的でおもしろいのです。
そして彼女にとってのオタク活動は、生活をしていくための「燃料」にもなっています。大好きでたまらないモノ(ギャルゲー)があるからこそ、仕事や陸上が更に頑張れる。みなさんも少なからずそういった経験があるのではないでしょうか。
ジャンルを問わず、オタク趣味は人間臭い魅力を感じさせてくれ、なおかつ自分の人生を支えてくれるものなのではないでしょうか。
そういった「好き」を飾らずに表現している『俺妹』。せっせと作った手作りコスプレ衣装を部屋で着てポージングしたり、悶え叫びながらPCの画面に向かっていたり、見ているだけでどんどんキャラクター達の充実感や幸福感が伝わりこっちまで楽しくなってしまうのです。
私も、こんなに面白くてバカバカしい、しかし熱く「生きがい」を持った桐乃たちにあこがれを抱きました。私もどんどん「好き」を見つけて探求して、楽しく生きたいと思ったのです。「こいつ変わったやつだな!」と思われても、そこが人間的な魅力になりうるのだ、という可能性を『俺妹』が見せてくれたから。
今日も私は懲りずに、オタク活動を続けております。
「萌ヒロイン」と言う概念
私がこの世で最も好きな萌ヒロイン(この言葉ももう古いかも?)を上げるとしたら、必ず候補に入るのがこの作品に登場する、「新垣あやせ」というキャラクターです。声優の早見沙織さんが演じています。
今現在、萌ヒロインたちは様々な属性を手に入れ、あの手この手で主人公や世のオタクを悶えさせていますが、その中でもこのキャラクターは唯一無二の存在。「あやせ」という固有の属性を持つのです!!!!
オタク特有の早口語りで申し訳ないのですが、あやせというキャラクターは主人公のことを「お兄さん」と呼びます。
桐乃で妹属性(というか実妹)は足りているというのに!? そして可愛いのです。
また一般的には「ヤンデレヒロイン」としても受け入れられており、実際にもそのような役回りを買って出ることもあります。その上でさらに、主人公・京介とののセクハラまがいの独特なスキンシップを見せます。
好きな女の子に意地悪をしてそのリアクションを楽しんだり、いじられキャラな女子をネタにしてコミュニケーションを図ったりするものと同じで、京介があやせに戯言を言い、それにあやせがキレて空手家のような蹴りを入れるという感じ。
そのシーンは、作品としてのギャグパートとしても良く、リアクションを楽しんで萌える感覚も味わえます。桐乃の過剰なまでのツンデレの影に隠れていますが、あやせにもそういった属性が含まれます。
さらにさらに、あやせは素直な性格から「チョロいヒロイン」としての一面も持ち合わせており……。
と、このように一つのキャラクターをとっても、魅力が散りばめられていてフックになっています。今で言う「属性盛り盛り」ですね。そういった個性的で楽しげなヒロイン達も本作品の魅力の一つです。
『俺妹』では他にも、先人たちが作り上げてきた「属性」を活用し魅力的なヒロインを多く生みだしました。今まであったものをデフォルメしわかりやすくする。それを「オタク」と組み合わせる。作品を通してのコメディ要素ととも合わさり、親しみやすくなっています。
完璧な美少女なのにオタク、厨二病なおかつオタク、お嬢様なのにオタクというような感じ。キャッチーな設定で作品に引き込み、物語が進むにつれて家庭環境や個人的な感情を描写していきキャラクターとして完成させていきます。
先程紹介したあやせにも、実はオタクが大の苦手という部分があるのです。しかし「病んで」しまうほど親友の桐乃が大好き。そこで価値観の違いに悩んだり、友人としての距離感に不安をいだいたりするエピソードもあります。そして桐乃の兄に対しての気持ちにも気づいていく。
いろんな個性や一面を、自然に配置することによって逆に人間らしさが演出されています。実際に私達三次元を生きる人間も、たくさんの感情や気持ちを日々抱えて生きているわけです。
このように積み上げてきたものに一工夫をし、個性的かつ新しい属性とキャラクターを作って提供してくれているのです。そして『俺妹』も積み上がった塔の上に確かに加えられ、今日の萌ヒロインを生み出す基礎になっているわけです。
これからもいろんな手段を使って、私達を萌えさせてくれるヒロイン達が次々に生まれるでしょう。それが楽しみで仕方がありません。やっぱり”萌”って、アニメって良いですよね。日本のクリエイターの皆様には頭が上がりません。
日本に生まれてよかったーー!!