時間に対するアプローチ、切る心苦しさ……ギリギリまで頭を抱えた「あと50秒」とは?『映画大好きポンポさん』平尾隆之監督×松尾亮一郎プロデューサーインタビュー【後編】
杉谷庄吾【人間プラモ】先生の同名漫画を原作とした劇場アニメ『映画大好きポンポさん』が、全国の劇場で絶賛公開中です。
監督と脚本を務めるのは『劇場版「空の境界」第五章 矛盾螺旋』、『GOD EATER』などを手がけてきた平尾隆之さん。キャラクターデザインは『ソードアート・オンライン』シリーズ、『WORKING!!』の足立慎吾さん。アニメーションは『この世界の片隅に』チームが立ち上げた新進気鋭の制作会社CLAPが担当しています。
そんな注目の本作の公開を記念した平尾監督と松尾亮一郎プロデューサーへのインタビュー。【後編】となる今回は、より具体的な内容に踏み込みつつ、制作の工夫やこだわりなどお聞きしました。
※インタビューには内容のネタバレが含まれますので、ご注意ください。
時間に対するアプローチとは? タイムリマップを駆使した演出手法
――インタビュー後編は、より具体的な内容について聞きたいと思います。序盤ではナタリーの説明がないまま物語が進むなど、原作とは構成を変えていますよね。そのあたりの工夫について教えて下さい。
平尾隆之監督(以下、平尾):タイトルが『映画大好きポンポさん』なので、皆さん最初はポンポさんが主人公かなと思うでしょうけど、実際に原作を読んでみるとジーンくんを中心に動いているんですよ。
松尾亮一郎プロデューサー(以下、松尾):タイトルだけ見たらそう思っちゃいますよね。
平尾:僕自身はジーンくんを中心に据えて映画作りをしていこうと思ったので、Aパートの最初の方で「ジーンくんのストーリーですよ」と見ている人にわかってもらわなきゃいけないなと。でも、原作通りの流れだと、チャンスを掴むという意味ではナタリーが先にきてしまうから、それだとナタリーがメインの話なのかな?と思われてしまうかもしれない……。
よく「映画の冒頭10分で全ての登場人物はなんらかの形で登場する」と言われたりもしますが、ナタリーとは若干すれ違うぐらいにして登場させておき、まずジーンくんが監督に就任するところまで描く。そして、そこから時間が巻き戻るようにしようと考えました。その手法自体は『劇場版「空の境界」第五章 矛盾螺旋』の時に、視点がパートごとに切り替わって時間も巻き戻ることをやった経験がありましたので。
――映画という題材ですから、なおさら“巻き戻る”とか“カットが挟まれる”といった演出は合いますね。
平尾:映画は“時間の芸術”みたいなところがあるので、時間に対してどういったアプローチをしていけばいいか……巻き戻すのか、時間を飛ばすのか、はたまた中を抜くのか……そういったことは随所に入れています。
例えば、先ほど言ったナタリーとすれ違うところでは、スローから早回しになってまたスローになる時間伸縮、タイムリマップをしているんです。ここで2人はすれ違っていたんですよ、と見ている方にドラマチックに記憶に残してもらいたい時に、こういった時間のコントロールをしています。
――この部分もそうですが、複数回見ると仕掛けがよりわかるというか。最初と最後のシーンはこう繋がっていたんだとか、そういう気付きも多いなと。
平尾:確かに、冒頭のインタビューは、実はアランがインタビューしているシーンだったんだとか、そういった仕掛けもありますね。初見では忘れているというか、わからない部分があるかもしれないです。