「DDTは“銀魂”みたいな感じ」プロレスラー・竹下幸之介選手&上野勇希選手にアニメイトコラボの話を聞きに行ったら、プロレスの深い話を訊くことができた話
DDTプロレスリングの魅力に迫る!
――ここからはプロレスやDDTプロレスリングについてお聞きできればと思います。まずは、お二人が思うプロレスの魅力について教えて下さい。
上野:僕が初めてタケを応援しに行ったのが高校2年生のころでしたね。それまではプロレスをまったく知らなかったんです。多分、世間一般の方と一緒でそれまでのイメージは「パイプイス」でした。
一同:(笑)
上野:でも、実際に観に行ってみると、大柄な人がバチバチぶつかり合うという絵面としてすごかったです。でも、大きな人ばかりなのかと思えば小柄な人もいたり。
プロレスラーってそれぞれ分かりやすいパーソナルを持っているので、見ていると自然にお気に入りの選手ができるというか。何回か見たら好きな選手が絶対見つかると思います。そういった意味だと、まさにアニメを観ているような感覚でリングの上も観られることが魅力だと思いますね。
竹下:僕はプロレスって3つの要素を持ち合わせていると思っていて。一つ目は“スポーツ・勝負論”。野球やサッカーのように好きな選手やユニットがあって、そこが勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。
二つ目は“格闘技の要素”。殴る、蹴る。プロレス特有の投げ技、飛び技。そして、派手な技がいっぱいあるので見ているだけでも刺激的で面白い。
最後の三つ目は“エンターテインメント”。ほかの格闘技は基本的に相手の技を避けて、自分の技を決めます。
ですが、プロレスは基本避けません。「受けの美学」というものがありますので。……これはもらったら流石に危険だなと思ったら避けることもありますが(笑)。
後はコミカルな試合もあるんですよね。DDTだったら、スーパー・ササダンゴ・マシン(スーパー・ササダンゴ・マシン選手 坂井精機株式会社 代表取締役社長)は試合前にパワーポイントで相手の弱点をお客さんと共有してたりとか。
――なるほど。プロレスというジャンルの中に幅の広さがある、と。
竹下:ええ。この三つの要素の“ブレンド”が各団体によって違うんです。コーヒーに例えるなら、DDTはスポーツ的な要素がありつつもエンターテインメントの豆が濃いのを売りにしている。
そういう団体の中にいながらも(上野選手を見ながら)僕らは「強さ」の部分を重視したり。
こんなふうに「これがいいんだよ!」というひとつの形に決まっていない、観る人がお気に入りのコーヒーを“選べる”というのがプロレスの面白さだと思いますね。
――プロレスの楽しみ方は人の数だけあると言いますよね。……(プロレスファンの顔になってきた記者)今のDDTはまさにそのブレンドが絶妙というか非常にバランスがいいと感じています。
竹下:通にも好まれると思いますけど、誰でも飲みやすい、入りやすいものにしたいと僕は思っていますね。
かといって面白すぎて、結局プロレスというものが伝わらなかったらそれはそれでダメですし。「それはもうプロレスじゃないじゃん」と。本物のプロレスを見せながら、入り口として広く、入りやすいというのがDDTの特徴として言えることなのかなと思います。
――確かに。(熱くなってきた記者)特に最近のDDTは人間模様がより分かりやすく、映像からでもビンビンに伝わってきて最高です。先日の秋山選手(秋山準選手)とディーノ選手(男色ディーノ選手)の「KO-D無差別級選手権試合」でスーパー・ササダンゴ・マシン選手や大鷲透選手たちがセコンドというか見届け人としてリングに集結したじゃないですか。あぁいった展開が本当に素晴らしい。
竹下:ちょっと日本のプロレスっぽくないですよね。あまりそういう見せ方をしないというか、アメプロ(アメリカのプロレス)寄りだと思います。日本だとDDTが一番こういった魅せ方が上手いと思いますね。
――では、DDTプロレスリングの魅力はどういったところだと思いますか?
上野:今はコロナ禍もあり、路上プロレスもできていないですけど。
※路上でプロレスをする。自販機の上から飛んだりします。マジです。
リングの中でどんな試合があるかだけでなく、リングの外でもいろんな試合があって、ルールもその時その時でいろいろあって。その幅がプロレス界で一番あるのがDDTだと思っています。
例えば、パイプイスが出てくることもありますし。お話が出てきたり(アントーニオ本多選手。徹夜で考えてきた昔話“ごんぎつね”をリング上で披露する)。ダンスが出てきたり(平田一喜選手。TOKYO GOのカバー曲を流し、リング内外で踊りまくる。最高です!)。
他にも男色な人(DDTのアイコン・男色ディーノ選手。“男色殺法”を得意としている。先日の煽りVでは自身をプロレス界の漫☆画太郎先生でありたいと熱く語っていた)が出てきたり。
かと思えば秋山さん(“準烈”秋山準選手)のような強面な人も出てきたり。幅がホントに広いんです。
竹下:僕もまったく同じです。リングのありなしもそうですし、選手層も厚い。プロレスの入り口として入ってきてもらったときに、選択肢がたくさんあったほうがいいと思うんです。「怖くて強そうな人が好き」「マッチョでデカい人が好き」という人もいれば、「可愛らしいアイドルみたいな選手が好き」みたいな人もいるわけで。それを選べるというのがDDTの魅力ですね。
ほかの団体だと「プロレスはこう」「ウチの団体はこう」というのを魅せる。逆にそれもブランドの魅力だと思うんですけど。例えば、一つの興行って今は全6試合くらいなんですよ。
DDTは第1試合から第6試合まで全然違う試合が繰り広げられるんです。“選べる面白さ”というのがDDTにはあると思います。
――コロナがもう少し落ち着けば、ぜひアニメイトの店舗でもやってほしいです。
竹下:いけるでしょうね。
上野:でも一度、AGFのときにアニメイトに行って激怒されたっていう。
一同:(笑)
竹下:あれは冒涜ですよ。
上野:悪者だからね。気にしないんだよきっと。今度は壊さないようにしますのでぜひ(笑)。
DDTには「多幸感」がある
――会場のお客さんも一緒になってその世界に入り込めるというのがDDTの特徴だと感じました。
上野:それは嬉しいですよね。一つの興行でどんなことが起こるか分からない。でも我々は意外と好き勝手楽しんでるだけだったり。まず、僕たちが楽しもうという気持ちにファンの方々もしっかり乗ってくれるのが楽しいんですよね。
リングを見ながら「(これから)どんなことが起こるんだろう?」とワクワクしてくれてるのも伝わってきますし。
DDTには「多幸感」があると思うんですよ。我々が「こんなことしたら楽しいんじゃないかな?」と自分たちが楽しんでやったら、それに反応してお客さんも一緒になって楽しんでくれているんじゃないかなと。
逆にお客さんが「楽しいな」と思ってくれているからこそ、僕たちも楽しめているのかとも思うので、いい関係性だと思いますよ。
――自分たちが楽しんで、それがお客さんに伝わって、それがまた逆に自分たちに伝わって、というのが繰り返されていくからこそなんですね。竹下選手はいかがですか?
竹下:僕ら、DDTに所属するレスラーはなんとなくいるんじゃなくて、「DDTがいい、DDTのプロレスが好きだから」からここにいるんですよ。
ほかの団体の選手は分からないんですけど、「ここのスタイルが一番好きだから」という人もいるだろうし、自分のステップアップのためというか、ビジネスとしている人もいると思うんです。
部活動とかと一緒だと思うんですけど、先輩たちの姿を見習っていくというか、受け継がれていくもの、ルーツがあると思います。
100M走がめっちゃ速い先輩がいたら、その先輩と一緒に練習することで後輩も速くなっていく。僕らで言えば、そういう続いてる意識はないんですけど、下が上を見ていると思うので、それが継がれていった結果なのかな、と思います。
やっぱり僕らも先輩を見て育っているので。「楽しまないとダメなんだ」と教えられたわけではないですけど、楽しんでる先輩たちを見て育っているので、僕らもそれをやってる、という感じですよね。