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- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
ーー今回のインタビューは翻訳を行い、海外のファンにもお届けしています。MAPPAは海外展開に向けてなにか意識している事はありますか?
大塚:僕からは作品を作る意識みたいな話になってしまうんですが、やっぱり日本のお客さんも、海外のお客さんも等しく楽しませるという事だと思います。ビジネス的には、近年の海外市場は非常に大きくなってきているので、海外の方がうちで働きたいという時、日本人と変わらずに積極的採用していて。色々な国の人が日本のMAPPAでアニメを作っているという環境を作っています。
今のMAPPAは世界中のアニメーターとのネットワークみたいなものができていて、こういった部分はかなり早い段階で取り組んできました。実際に、語学力を活かして翻訳とかで現場に力を入れ込むという事も実現できています。
木村:昔は海外に番組販売をするときは対面で交渉しなくてはいけなかったんですが、今はテレビ電話でコミニュケーションを取れる時代になっているので、日本にいながら海外のクライアントと円滑に話ができて、意見や要望も直接頂けるようになりました。
海外からのファンの声やビジネス的なニーズがタイムリーに届くので、それらを踏まえて何ができるのか日々考えてます。
例えば、今はコロナで中々難しい時代ですが、海外の事業者に番組を販売するだけではなく、催事や商品展開などを通して新しい楽しみ方をご提供することもできたらいいなと思ってます。
平松:海外のイベントに連れて行ってもらって思うのが、「海外の人が日本のアニメに求めているものってなんだろう」なんですよ。
そもそも日本のアニメにはアメリカやヨーロッパのものとは違うものが求められていると思っていて、アメリカや中国に巨大な需要があるからといってその国に合うものを作り出したら日本のアニメは終わってしまいます。
日本でしか作れないものを今後も作っていって、それを海外の人は日本のアニメだと意識しなくてもいいんですよ。こんなに面白いものがあるんだと思った人の中に、「これは日本のMAPPAが作ったんだ」と気付く人がいればそれで十分良くて。我々は作りたいものだけを作って、そして求められていけば良いんじゃないかなと思っています。
木村:過去作だと『THE GOD OF HIGH SCHOOLゴッド・オブ・ハイスクール』は海外の会社から受託していたり、『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』といった作品は中国のゲームが原作だったり。あとはこれから配信する『Yasuke -ヤスケ-(現在Netflixにて配信中)』という作品は海外の監督が立ちながら、日本のプロダクションが制作するんですけど、こういう風に作り方も多様化していて。
大塚:やっぱり求められるものは「日本のアニメ」なんです。アメリカ人の監督さんもそうであって。
平松:今や東宝の怪獣特撮がハリウッド映画化して、あちらのテイストで楽しまれていますが、オールドファン的には「そうじゃない」と思っている人もいて(笑)。『ゴジラ』の場合は庵野秀明さんが純粋な日本の『ゴジラ』を作ってくれましたが、我々もそういった形で作っていかなければいけなくて。リメイク作品はこれからも続くと思いますし。
やっぱり自分たちが作ったものは正当に評価されたいですね。外国の人がどう解釈して、どう楽しむかは自由ですが、基準を示していかないと、とは思いますね。
ーーMAPPAのポリシーや守りたいものとはなんでしょうか?
大塚:“挑戦”じゃないですかね。安全な事ばかりだと働いているスタッフはもちろん、お客さんも面白みを失ってしまうので。
例えば、ある作品がヒットしたからといって同じような作品だけ作るという事は絶対にないですし、「次の時代はなんだろう?」という事を考えてチャレンジできる人をサポートしたいですね。
僕にその意識がなくなったらすぐに社長を交代しようと思っています。自分が守りに入り始めたり、良い人ぶりたくなったら絶対に若い人に代わろうと。そこは決めています。
平松:自分は会社第一という考えでは動かないので、今後も作品を作る人として一つひとつ全力を出していきたいです。先ほども話に出ましたが、上手くいった事を繰り返すだけでは駄目ですし、新しい表現に挑戦しないといけないなと常に思っています。
経験も長いので、ふとした時に昔の作品を見てもなかなか上手くやれているなと思う時もありますが、概ね「もっと上手くできたな」と思うんですよ。若いからこそできていた部分もありますが、「今ならもっと違うやり方があるな」とか「違う所に注目しているな」と色々反省していて。なのでそう思えなくなったら駄目だと思いますね。
木村:作品の内容的にもそうですし、展開的にも新しい事をどんどんやりたいと思います。プロダクションがこれまでやってこなかった事を沢山やれたらいいなと。
2021年6月27日に「MAPPA STAGE 2021 -10th Anniversary-」というイベントを行うのですが、プロダクション主体でこういったイベントを行う事はあまりなかったんですよ。Twitterの施策や催事もそうですが、主体的に届けていく仕掛けができるよう、今後も積極的にやっていこうと考えています。
ーーポリシーに通じるものがあると思うのですが、「MAPPAは作画が良い」というファンの声を良く耳にします。アニメ作りにおいてこの点の秘訣を教えていただきたいです。
大塚:平松さんをはじめとした素晴らしいクリエイターが粘って「一番良い形で作品を出そう」という強い意思を持っているので。
ただ逆に、組織体勢的な面で「作画をきれいに仕上げる」という事にはまだまだ課題があって。実はこれが明確な課題なんです。ひとつのラインだけが良くても駄目だし、どのラインが作っているかはお客さんには関係のない事だし。
うちは全てのラインで高品質なものを届けられる体勢を目指していて、そういう意味では僕自身、ufotableさん、京都アニメーションさんとかにはまだまだ遅れを取っていると感じていて、そこは今後の課題ですね。素晴らしいクリエイターが個の力として素晴らしい絵を出してくれている自信はもちろんありますが。
ーーベースラインを上げるという事ですかね?
大塚:そうですね。「真の力強いクオリティ」というものは会社として辿り着かないといけないので。「平松さんお願いします」だけではいけないので、そこに対しての課題は明確にあって、いつかは乗り越えられると思いますが、今は一生懸命改善しようと努力している段階です。
平松:シリーズ単位で考えると、どうしても1、2、3話の制作段階ではまだ放送が始まっていなくて、早めにスタートしていて時間もかけられるとはいえ、どうしても1クールだと13話、2クールだと26話にかけて段々とクオリティが落ちていくという所があるんです。落ちていくとしても最後まで駆け抜ける中での目標に対して、制作と僕らアニメーター・演出家では少し考えが違う事があって。
僕がキャラデザと作画監督をやる場合は第1話に必ず入るようにしていて、できれば絵コンテも一緒にやるようにしています。というように第1話のクオリティを上げて、総合的なハードルを上げてしまうんですよ。第1話が中くらいだと全体のクオリティがすごく低くなってしまうので、たとえ制作に文句を言われようと第1話ではちょっと無理をします。下がる事を前提におくのも失礼ですが、どうしてもそうならざるを得ないので、「なら最初に上げてしまおう」となるわけですね。
あと、視聴者の皆さんが言う「作画が良い」の基準はどこなんでしょう? そこはすごく気になっています(笑)。ファンと我々では基準にギャップがあるかもしれないので。
大塚:だいぶギャップはありますね。
平松:原作の絵があって、それ以上に整えられていればいいという人もいれば、そうでなかったり。色々な価値観があるとは思いますが、ファンがMAPPAに対して「作画が良い」と思ってくれているならありがたいですし、我々が考える「作画が良い」はファンの考えるそれとイコールではないので、その考え方の違いが伝われば良いなと思います。
木村:甘めに見てもらって助かる時もあれば、「意外と厳しいな」と思う事もあったりしますね(笑)。
平松:原作の絵を変えないでほしいというファンの声があったりして。やっぱりそういうのは原作の絵に沿ったクオリティを見られると思うんですけど、僕個人としては原作をアレンジして良いと思っていて。
ものによりけりですが、アニメーションというひとつの表現として見てもらえるともっといいですね。そういう作品を作る事で見る側の目を育てて、我々も育つと思うので。
ーーこれからのMAPPAの目標のようなものがあれば教えてください。
大塚:もうすぐ設立10年になるんですけど、改めて「突っ走ってきたな」と思います。先ほどもお話したように「守るより攻める」みたいに結構無茶もしてきて。守りを固めるわけじゃないですが、今後はアニメを作る会社として成長するにあたって、あえて自分たちにもっと目を向けないといけないという気持ちがすごく芽生えていているんです。
自分たちのアニメを作る能力が、どんなものなのかしっかり判断しようと。他社がどうとかではなくて、そういうターンに入っているんだと思います。
アニメ業界は今注目されていますが、それを自分たちの力に代えられるのか? という答えがそのうち出るんじゃないかなと思うんです。
「日本のアニメはすごい」「日本のアニメを作ってる俺たちすごい」みたいな自画自賛だと一時のブームとしてそのうち衰退すると思うので、そういう意味でもすごく大事な時期であって。誰かに変えてもらうのではなく、自分たちの力で日本のアニメの存在感を示さないといけないと思います。
平松:MAPPAは、20代から30代になったみたいな時期ですね。若さに頼ってできてきた20代でしたが、30代からはまた変わりますからね。
全ての作品にはそれぞれ個性だったり、作っているチームが違って良い所があるのでそこをしっかり届けられればという部分が会社としての目標です。
ーーそれでは最後に、皆さんがこれからMAPPAでチャレンジしたい事はありますか?
木村:MAPPAには多様な作品を作るすごいクリエイターさんたちがいっぱいいます。僕は役割的にそういったクリエイターさんたちが活躍できる座組みを作ることなので、引き続きそこに注力していきたいと思います。その結果、世界のファンの方々が楽しめるよい作品を作り、届けられたらうれしいです。
平松:監督です。短編で監督をした事はありますが、長編はまだないのでやってみたいと思っています。
大塚:色々な事をしていますが、人を育てるという事はずっとやってきてはいますが、より力を入れたいです。アニメを仕事にする人たちをいかに育てるのか。やっぱりアニメはチームで作っているので、アニメに携わる人間を育成できる会社としても良い成果を獲得したいと思っています。
[インタビュー/石橋悠 写真/MoA]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
日時 :2021年6月27日(日)14:00開場/15:00開演/20:30終了予定
会場 :J:COMホール八王子(〒192-0904 東京都八王子市子安町4丁目7-1)
MAPPA公式YouTubeでLive配信も決定!
主催 :MAPPA
運営協力:サンライズプロモーション東京
■『呪術廻戦』
出演:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美
■『進撃の巨人』The Final Season
出演:梶裕貴、 井上麻里奈、 佐倉綾音
■『ゾンビランドサガ リベンジ』
出演:本渡楓、 田野アサミ、 種田梨沙、 河瀬茉希、 衣川里佳、 田中美海
■『平穏世代の韋駄天達』
出演:COMING SOON!
■『RE-MAIN』
出演:上村祐翔、 西田征史、 松田清
■『Yasuke -ヤスケ-』
出演:ラション・トーマス
■『チェンソーマン』
出演:林士平、大塚学
and more…
続報をお楽しみに!
■総合MC 向清太朗(天津)
※順不同。こちらはステージ順を表すものではございません。
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