「ビビってるんですかァ?」をキメることが私の最初で最後の仕事――アニメ『終末のワルキューレ』ブリュンヒルデ役・沢城みゆきさんインタビュー
人類存亡を懸けた、神と人とのタイマン勝負を描いた大人気マンガ『終末のワルキューレ』がアニメ化され、6月17日よりNetflixで全世界独占配信されている。
豪華キャスト陣の熱のこもったお芝居、グラフィニカによるハイクオリティな映像、マキシマム ザ ホルモン/島爺によるOP/EDテーマなど、どこを切り取っても凄まじい熱量で、血湧き肉躍る、超絶バトルアクションアニメを創り上げた。
今回、神と人類の壮絶バトルを仕掛けた張本人、半神半人のブリュンヒルデを演じる沢城みゆきに、作品の魅力を聞く。
真逆のことを意識しながら言う――声優としての技術の粋も垣間見える演技に注目
――『終末のワルキューレ』という作品に触れたときの印象を教えてください。
ブリュンヒルデ役・沢城みゆき(以下、沢城):オーディション原稿をいただいたのが最初で、そのあとに原作を拝読するという順番だったのですが、マンガの絵を見ただけでもセリフが聞こえてくるような雄弁な絵で。ブリュンヒルデ(以下、ヒルデ)も一人の女の子なのかな?というくらい、いろいろな表情をする子でした。
テープオーディションだったので、その表情に一番適しているであろうセリフを自宅で入れていたんですけど、すごく大きな声を出さないとできないセリフがあって、それを言うとアップライトピアノが共鳴しちゃうんですね(笑)。今までそんなことはなかったから、自分で(吸音材として)クッションを持ってきたりしながら録っていました。
ブリュンヒルデの中でキャッチーであり、戦いが始まるゴングの代わりになる「ビビってるんですかァ?」というセリフがあるんですけど、それを録るときに一番ピアノがファーンと鳴っていたので、そのくらい熱量が高い作品なんだなと思いましたし、セリフひとつひとつに値段がついていくようなキャッチーなセリフがたくさんあったので、声優として腕をふるえる作品なんじゃないかと思って、楽しみになった記憶があります。
――最近は、自宅でテープオーディションを録ることも多いのですか?
沢城:前からそういうことはあったのかもしれないですけど、私の場合、コロナ禍での朗読劇で、それぞれ自宅から音を持ち寄ってやってみようという企画があったんです。そのときにさすがにiPhoneでは限界だと思ったので、専用の機材を揃えました。
ただ、自分で自分にOKを出す難しさは増すんですよ。だから「全然終わらない……」みたいなこともあります(笑)。
――ブリュンヒルデは、すぐに「これだ!」というテイクが録れたのですか?
沢城:どこまでやり過ぎていいのかはやっぱり迷いましたね。これがオーディション会場であれば、「ちょっとやり過ぎなので抑えてください」とか「もっとやってください」と言われるけれど、怒られないレベルはどのくらいなのかで悩んだ気はします。でもこれって、盛り盛りでやってもいいやつだよね?という感じではやりましたけど(笑)。
――原作や台本を読んだときに印象的だったシーン、気になったシーンはありますか?
沢城:原作は未完ですし、ヒルデに関しては描かれていないところもたくさんあるんでしょうけど、おそらくアニメでいうところの第1話ですよね。そこの「ビビってるんですかァ?」をキメることが私の最初で最後の仕事というか(笑)。
これさえカッチリやっておけば、あとはおまけみたいなものというくらい、すべての始まりを告げる大事なセリフだし、ヒルデの中でもキーになってくるセリフだと思ったので、そこに全力投球する感じでした。
あとは、PVで使っていただいている「イッツァ パーリィータイム」というセリフも彼女の腹黒さや業の深さが見える、飾り付けをたくさんできるセリフだったので、どう言えば一番面白いかなというのを技術的にも考えながら、音としてはキャッチーなものにしたかったので大事にしました。
――アフレコも終わっていますが、改めて『終末のワルキューレ』の魅力は、どこにあると思いましたか?
沢城:短い時間で語るのが難しい気もするし、ひと言で言える気もするんですけど(笑)、「分かりやすいけど浅いわけではない」ということでしょうか。
人って懇切丁寧に説明されると、みんなのことを好きになっちゃうんだな、というか。エンタメとしての派手さはあるけど、作品としての深さもあって、それが掛け算になっているところが最大の魅力だと思います。
そこが、多くの人が注目して、実際に話題になっている理由のように思いますし、それに尽きる気がします。だいたいがどちらかになるんですけど、この作品はどちらも満点に近い状態で掛け算になっているんですよね。
――ブリュンヒルデというキャラクターを演じるときに、大切にしていたことは何ですか?
沢城:彼女は見目麗しい、上品で端正な顔立ちなんですけど、そこからびっくりするくらいゲスい発言がたくさん出てくるんです。これも掛け合わせの魅力がすごくある子だなと思いました。
なので声を当てるときは、すでに絵は美しいので、声としても上品さを損なわず、本当に「クソジジイ」と思いながら言うというか(笑)。そういう気持ちは失わずに、でも美しくという真逆のことを同時にやるような面白みがあって、とにかくレンジの広さに尽きる気がします。