『エヴァンゲリオン』シリーズを楽しむための「鍵」、人類補完計画をわかりやすく解説! ゼーレのシナリオとは? ゲンドウのシナリオとは?
新劇場版の「人類補完計画」
なぜ実行するのか
怒涛の展開と、難読な映像の連続で視聴者に衝撃を与えた旧シリーズの結末。そして「人類補完計画」、その約10年後に制作されたのが『エヴァンゲリヲン新劇場版シリーズ』です。旧シリーズのリビルドを目的とした本シリーズは、2007年から今年2021年にかけて制作が続けられ無事完結しました。
「人類補完計画」はそんな新劇場版シリーズでも重要な儀式として描かれています。補完計画の動機や、目的は基本的には同じですが、条件や方法にかなり変化が見られます。
目的は、脆弱な存在である人類を進化させ完全な生命体になること。これは新劇場版でも「死海文書」に書かれていたことが原因です。人類は使徒に滅ぼされるか、生命の実を得て新しい生命体になるかどちらかの選択を迫られており、後者を選ぶために必要なことが「人類補完計画」だったということでしょう。
だれが実行するのか
これもゼーレとゲンドウ率いるNERVが率先して進めている計画ではありますが、旧シリーズと違うのは、最初に補完計画を提唱したのが葛城ミサトの父である葛城博士であったことです。
旧シリーズでは南極で起こったセカンドインパクトが、アダムの機能を制限するための実験の失敗でしたが、葛城博士はセカンドインパクトにより「海の浄化」を行ったとされています。
新劇場版の「人類補完計画」にはフェーズが存在するようです。人間が新たな生命となる前に、土壌づくりのようなものを施す必要があり、それが海・大地・魂それぞれ3つの浄化をする必要があると劇中で語られていました。葛城博士が起こしたセカンドインパクト、シンジが起こしたニアサードインパクト、加持リョウジ(父)が食い止めた、サード・インパクトでほとんどの海と大地の浄化は済んでおり(このあたりからゼーレのシナリオと食い違う)、フォースインパクトは魂の浄化を目的とするものでした。
上記がゼーレが目論む「人類補完計画」です。そして旧シリーズと同様に、ゲンドウが描きたいシナリオももちろん存在します。劇中では「アディショナルインパクト」と呼ばれるものでした。
こちらも基本的には、自らが人を捨て神の器となり「碇ユイ」ともう一度あった上で魂を浄化するというものでした。複数回に分けてサード・インパクトを起こしたり、アスカを使徒化させたり、カヲルを始末しておくことがアディショナルインパクトに必要な事象で、ゼーレのシナリオには無かったことだったと予想されます。
ゼーレは最終的にフォースを引き起こせば問題ないと考え、口出しはしなかったんじゃないでしょうか。
どのように「人類補完計画」をするか
さてここからが難しい問題です。先程から「浄化」という言葉を使っていますが、簡単に言えば海や大地をコア(使徒についている赤い玉のようなもの)化させるということです。赤くなってしまった大地や海はコア化したものであり、「L結界密度」という値が非常に高くなっている場所でリリンには生活が不可能だと言われていました。
世界をコア化させ、L結界密度を高くし、それに対応できる姿に人類を変化させる。そして心の壁を取り去ってすべてを同期させた状態にしようというのが補完計画です。そのシナリオの隙間に、「アディショナルインパクト」を起こそうというわけですね。
その起こし方やメカニズムを、あの映像からすべて理解することは難しいですが、必要なものは以下のものかと思われます。
まずはエヴァンゲリヲン13号機、それに使徒化したアスカを取り込むこと、ゲンドウがネブカドネザルの鍵を使って人でなくなること、ロンギヌスとカシウス(もしくは両方ロンギヌス?)2つの槍、異なる槍を作り出すための黒き月とAAAヴンダーの同型艦となる船たち、アディショナルインパクトの舞台となる扉の先であるマイナス宇宙、マイナス宇宙に存在するすべての始まりの場所「ゴルゴダオブジェクト」、さらにその中にあるとされているエヴァンゲリオンイマジナリー、シンジを使った13号機と初号機のシンクロなどなど、ゲンドウのワガママを叶えるために我々が把握しなければいけない事象が複数存在しています。
つまり?
つまり抑えておけば良いことは、新劇場版シリーズで起こったすべてのことは碇ゲンドウ自身が、補完の中心となりユイにあうために必要であった、ということです。
『シン・エヴァ』のラスト間際の一連のシーンは、ゲンドウの内面を描く部分が多くこれまで以上に彼にフォーカスされました。新劇場版シリーズは終わってみると、ゲンドウが望みを叶えるために奮闘した話とも解釈ができますね(構想当初は別として……)。
ヴィレとの衝突や、息子との対決などを経てついにアディショナルインパクトが起き、世界はゲンドウのエヴァイマジナリーである綾波一色になってしまいます。しかし、結果的には、シンジとヴィレ一向によって「人類補完計画」は失敗し、新たに「ネオンジェネシス」が起こされました。
ゲンドウはアディショナルを起こしたものの念願のユイには会えません。そんな中息子と対話し、関係を見直していく。そして自分自身とも向き合い、シンジの中に「ユイ」を見つけ途中でアディショナルインパクトを放置して文字通り途中下車していきました。
これは個人的解釈になりますが、シンジの中にユイを見つけるということは、シンジがエヴァ初号機とフルシンクロしていたので、そこに存在しているユイを実感したということと合わせて、シンジは遺伝子的にもユイを体内に宿しているという事に気づいたのだと思います。
その後人類補完計画の中心は、またもやシンジになります。旧シリーズと違うのは、綾波に選ばれて中心となったのではなく、自分自身の意思で落とし前をつけるためにここへやってきたということですね。
そんなすべてを乗り越えたシンジが、全部が一緒くたになった生ぬるい世界を選ぶはずもなく、また過去のように世界を元通りにすることも選ばず、『エヴァ』というものが必要のない世界に書き換えることを選択します。この時点からメタ的な監督や制作サイドの意向とも重なっていきます。
ちなみに
そしてここから先は私の個人的解釈によるものなので、面白半分でお願いします。
それぞれのキャラクターの魂を、キャラクターが望む場所へと還したシンジは、シンクロした初号機と、父親の13号機と一緒に自らも『エヴァンゲリオン』という作品の主人公として消えることを決意し、ヴィレの槍を使います。
そのときに、ユイが現れシンジの背中をそっと押し、ゲンドウと一緒に犠牲になり息子を救うのです。このときにシンジはすべてを理解します。ゴルゴダオブジェクトの中に居たとされる母親の目的、父親のいう「神殺し」、マリの存在もなんとなく理解したんじゃないでしょうか。
聖なる槍などと共にゴルゴダオブジェクトに存在していたと言われているユイは、地球外の生命体(アダムスと呼ばれる種?)であり、封印柱などの人類が未知の高度な文明をもたらしたのも彼女らだと予想できます。
ユイは人類の運命を知りすべてを計画し、最後は息子を救ってゲンドウと共に消滅するというシナリオを描いていたのではないでしょうか。
ゲンドウがアディショナルインパクトを起こすことも承知の上でエヴァ初号機内に留まっていた。ゲンドウがそれを知っていたのかわかりませんが、人ではない存在=神であるユイにもう一度会って見送ることが、父さんのいう「神殺し」なのではないかなと思います。ユイはゲンドウにとって女神のような存在でもありました。
かくして、「人類補完計画」あらため「ネオンジェネシス」が完了。シンジは現実世界のとある駅からマリと共に走り出していきました。
それぞれの「人類補完計画」
新旧の「人類補完計画」、形は違えど様々な欲望や思惑が動きつつもどこか切ない人間の運命が垣間見えたものでもありました。
このような基本的な情報の他にも、モチーフとされている神話や聖書に関する情報を用いた考察。制作陣のインタビューや設定資料集から読み解いていく真実、そして自分自身で醸成していく意見や感想などなど「人類補完計画」や『エヴァンゲリオン』にはまだまだ楽しみ方や解釈が存在するはずです。
様々なトラブルを乗り越えてたどり着いた、『シン・エヴァ』も見れば観るほどに違った解釈や発見があるはず! ラストランを存分に楽しんで、これからも続くエヴァライフをエンジョイしていきましょう!
[文/ヨウイチロウ]
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