『エヴァンゲリオン』シリーズを楽しむための「鍵」、人類補完計画をわかりやすく解説! ゼーレのシナリオとは? ゲンドウのシナリオとは?
『新世紀エヴァンゲリオン』は主人公・碇シンジ少年が、「エヴァ」に乗り自身の心の葛藤と戦いながら、目の前の日々を生き抜いていくお話です。しかし、その裏に大きな力が働いています。NERVやゼーレといった組織がこの世界を牛耳っており様々な思惑が錯綜しているのが徐々に明かされていきます。迫力のあるアクションと陰謀渦巻く展開が物語の魅力の1つになっています。
そこで出てくるのが「人類補完計画」です。TVシリーズと旧劇場版(以下、旧シリーズ)そして新劇場版シリーズどちらを通しても、作品の謎の1つであり、劇中での大きな目的として描かれている要素です。今回は、流行の「エヴァ」を見てみたけど補完計画って何だ?という方に向けて「人類補完計画」を解説!
「人類補完計画」は、物語でも非常に重要な要素ではありますが、作品を作る上での緊迫感を演出する装置でもあります。そしてそれ以上に私達が現実で受け取るメッセージ的な役割が強く、監督や制作サイドの思いでもあると思います。
また新劇場版では、保管計画事態がキャラクターの個人的な行為にまでなっていて、その描写も抽象的で一種の芸術のようなインパクトのある映像になっていましたね。作品のストーリー上でも、映画の観客として受け取るメッセージとしても、私達の解釈によって大きく意味が異なり兼ねないのが「人類補完計画」であり、『エヴァンゲリオン』でもあります。そしてその受け取り方は、正解不正解など存在するはずもなくどれも素晴らしいものだと思います。作品の重要なキーとなるのが、「人類補完計画」なのです。
ストーリーの重要な計画でありながら、不完全な謎としてあり続けるものなのが「人類補完計画」です。25年の時を経て、さらにその概念の幅が広くなっていく『エヴァ』を象徴するものでもありますよね。
さてそんな「人類補完計画」を今回は簡単に説明します。旧シリーズと新劇場版で異なる点があるため2つに分けて進めてきます。
旧シリーズの「人類補完計画」
なぜ実行するのか
まずは、なぜ計画を実行するのかについて。
「不完全な人類という存在を知恵の実と生命の実を用いて、完全な単体の生命体にすること」
一言で言えば「人類補完計画」にはこのような目的があります。個体に寿命があって繁殖行為をしなければいけない。知恵の実で授かった、心の存在のおかげで互いに傷つけあい、争い合う、他人のことを完全に理解して安心することもできずに不安になったり、裏切り合ったりしてしまう。
そのような愚かな人間を、使徒の持つ生命の実を用いて完全な1つの生き物にしてしまおう、というのが「人類補完計画」の概要になります。(使徒となぜ戦うのか、使徒とは一体何なのか等使徒に関する疑問は、別の記事にて扱っております。)
だれが実行するのか
ゼーレと呼ばれる組織と、NERVを率いる碇ゲンドウが中心となって補完計画を進めています。
死海文書という人類の運命が記された物体を発見した人間たちは、それに抗うべくアダムに槍を使うが実験は失敗。セカンド・インパクトが起こってしまいます。その後、人類に用意された運命を利用し完全な生物になろうとしたのが、補完計画だと捉えて良いでしょう。
これが劇中で度々登場する「ゼーレのシナリオ」というものです。
一方で、補完計画には「ゲンドウのシナリオ」も存在します。孤高の天才学者であったゲンドウがなぜこの計画に参加したか。それはゲンドウが唯一心を許した碇ユイの存在があったからです。そんな彼女は、初号機に取り込まれてしまい二度と会うことができない。
それを覆して、もう一度ユイに会いたい、そして愛する人と完全にわかり合って1つになりたいという思いを補完計画で達成しようというのが「ゲンドウのシナリオ」です。
どうやら「人類補完計画」には中心と呼ばれる1つの存在、人類をこの先どう導くか決定できる存在があるようです。いわば神のような存在。
ゲンドウは自身がアダムと融合し、リリスに接触することで自分が中心の補完計画を実行し、ユイに会おうとしました。実際、旧シリーズの劇場版では、リリスの魂の器であった綾波がゲンドウではなくシンジを選びました。そしてシンジは、どれだけ傷つくことがあっても「他人」という概念が存在する世界を望んだ。
例の砂浜でお互いを傷つけながらも謝罪したり許したり、誤ったりしながらこの世界を生きていこう、というメタファーになったのではないかと個人的には思っています。
つまり「人類補完計画」はゼーレやNERVが一丸となって叶えるべき願いでありながら、ゲンドウ個人の思惑でも進められていた、ということになります。
人類を、どのようにして補完するのか
この部分はかなり難解です。語られていない情報も多く、ファンの中でも解釈や考察が異なる部分です。
人類の補完を行うには、準備がかなり必要なようです。条件や必要なモノが揃って初めて儀式がスタートします。
補完計画を行うにはサード・インパクトを起こす必要があります。アダムとリリスが接触することで起きるとされているので、アダム(魂は渚カヲル、肉体はゲンドウが所持)とリリス(魂は綾波レイが肉体はジオフロントにある)が必要です。
そして覚醒したエヴァ初号機(パイロットである碇シンジも含む)、ロンギヌスの槍などを用いてサード・インパクトを起こし、エヴァから発する「アンチATフィールド」によって人の心の壁を取り払い、人類を生命のスープと呼ばれるLCLの状態に変化させ、争いのない補完された世界を作る、ということになります。
槍を喪失したり、ゲンドウがレイに拒まれアダムを奪還されるなどイレギュラーなことも多く用意していたシナリオとは異なるものとなりましたが、旧シリーズでは、テレビ、映画を含め二度補完計画の発動が描かれていたということです。
ATフィールドが、使徒やエヴァが持つ武器のようなものではなく、生き物が持っている心の壁だということもここで明かされていました。
つまり?
必要な条件とモノを揃えて、インパクトを起こす。それによって人は心の壁がなくなり人としての形を失う。そして記憶や体験などすべてが共有され、死という概念も個という概念もなくなり穏やかな世界になる。
それが人類を補完するということになりますが、シンジはその世界を否定し人間らしく生きることを選んだ形になります。
これが旧劇場版における、「人類補完計画」の概要になります。TVシリーズ、旧劇場版どちらも抽象的なラストシーンになり、困惑した人が多く存在しました。これを解釈して行くのが『エヴァ』の醍醐味であり魅力でもあります。
ちなみに旧劇場版の有名なラストシーンは物議を醸し、今でもその解釈や考察がなされています。非常にインパクトの有るシーンなので当然です。
私も初見時はとにかく意味がわかりませんでした。それから何年か越しに『シン・エヴァ』が公開されるということで映画館で上映されていたのを観に行きましたが、不思議と腑に落ちることもありましたね。
みなさんもぜひ作品を見返したり、他人の意見を調べてみてください。今だからこそ理解でき、受け取ることのできるメッセージがきっと残されているはずです。