この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
ーーそれぞれ演じているキャラクターについてどう分析して演じましたか?
染五郎:チェリーの人見知りな部分や人と話すのが苦手なところが僕ととても似ていて。なのであえて役を作り込まずにアフレコしました。やっぱり、自分と共通する部分をそのまま出さないと自分がやる意味はないと思ったので、半分自分、半分チェリーという気持ちで演じました。
ーー今回は取材もかなり多いと思います。
染五郎:そうですね。
イシグロ:主人公の宿命だからこれ。出ずっぱりだからね。
ーーしかし、初アフレコとは思えないほどの実力でした。
イシグロ:杉咲さんもそうなんですよ。現場でアフレコ終わった後で流すんですよ。途中の絵でもこんな感じに声が付きましたって。本当にすごかったですよ。大絶賛でした。
染五郎:……。
イシグロ:ほんとに、ほんとに!
一同:(笑)。
イシグロ:めちゃくちゃ良いじゃんって。染五郎くんは自分の声があまり好きじゃないって話をしてて、逆にそういう部分が何か繋がったのかもしれませんね。
演出する側からするとそういうのはラッキーではあるんですよ。僕は純粋に彼の声とお芝居を見てお話を持って行ったわけですが、パーソナリティがリンクしてるっていうのはたまたまですから。
ーースマイルはいかがでしょう。どういう女の子だと思いましたか?
杉咲:コンプレックスはあるんですけど、でもすごく暗くなるわけではなくて、基本的にはとても明るくポジティブで前向きな女の子だなと思いました。
イシグロ:そこは絶対にぶれないようにしようと思いました。暗いところに閉じ込めちゃいがちなんですけど、そっちの方がやっていても楽しいかなと。なんだけど、基本的なポジティブな姿勢っていうところが、キャラクターからブレてしまうとこの子にならなくなっちゃうので、ずっと気をつけてました。
杉咲:すごい健気で凛としていますよね。事前にイラストをいただいていたので、台本を読む前からスマイルの表情を見るだけで、どんな人柄なのかなっていうのは想像がついてました。
イシグロ:ありがたいです。
ーーこれだけ明るいキャラクターだと演じていて楽しそうだなと思いました。
イシグロ:あ、どっちなんだろ。俺もそれ聞きたいかも。
杉咲:んー、難しかったです。これまで私が演じてきた役は、明るいっていうよりも、何かを抱えていたり悲しい感じが多かったので。
動画配信のシーンとか最初の方に録ったので、ちょっとドキドキですね。
イシグロ:いや、半端なかったよ!
一同:(笑)。
杉咲:えー! 大丈夫でしたか!
イシグロ:アフレコの時にも言ったけど、やっぱりプロだなって思ったよ。あぁーすげぇなパーソナリティって思った(杉咲さんはTOKYO FMの番組『杉咲花のFlower TOKYO』のパーソナリティ)。ほんとに良かったよ。
杉咲:ありがとうございます(笑)。でも、難しかったです。
ーー染五郎さんと杉咲さんは、本作のどんなところが好きですか?
染五郎:先ほどと同じような話になってしまうんですが、やはり俳句とか日本語は美しいなって改めて思いました。そこがすごく好きで、良いなと思うところです。
杉咲:笑える描写がたくさんあって、とにかく本当に明るい気持ちで映画を観れるところですね。
すごく元気になるし、音楽も素敵で、悲しいシーンもさっき監督がおっしゃったように、どこかテンポが良かったり、 観ていてずっしり落ち込むというよりかは、どこかに希望を感じながら、きっとチェリーやスマイルだったら乗り越えられるんだろうなって思いにさせてもらえるんです。パワーをもらえる作品になっています。
ーーでは最後に、イシグロさんが本作を通じて伝えたかったことは何でしょうか?
イシグロ:二人も言ってくれましたけど、ポジティブなメッセージを作品の中に植え付けたいっていうのは、ずっと思っていたんですよ。群像劇として作ったこのプロットが、最終的に二人を基軸にした恋愛ものや青春ストーリーになりましたが、染五郎くんが言ったとおり俳句を扱ったりすることによって新たな発見があるのかなと思います。
DJ的にはDIGっていう感じですけど、要は自分たちの文化の中にこういうクールなものっていうのが備わっているんだって再発見できたりとかするのは、ギミックとして植え付けられて僕は良かったなと思います。
あとはやっぱりドラマですよね。恋愛基軸でチェリーとスマイルがどう恋愛が成就していくのか。彼らが欠けている部分、つまりコンプレックスを補う結果、恋に繋がっていくっていう過程っていうのは、二人が出会って関係するからこそです。
自分がいいと思っていない、嫌いと思っていることは、視点を変えてみるとそれが魅力になっているんです。
だから、映画を観終わった後にすごくポジティブになって、もしかしたら自分の至らない部分は、人から見ると良いことなのかもしれないっていうメッセージは受け取ってもらえると嬉しいですね。本当にそこが伝わってくれって思いながら、ずっと作っていました。
ーー今の時代だからこそっていう感じがしますね、
イシグロ:自己肯定感をちゃんと持てるようにというのは、僕は作り手の側なので。何か人生に影響したいですよね。だから、観て感じて、次の日から頑張ってみようと思ってくれるだけでもいいんですけど。40歳手前でこんなものが作れるんだぞっていう、忘れてねぇぞ青春! っていう感じです。
[インタビュー/石橋悠 撮影/相澤宏諒]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。