この記事をかいた人
- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
――ところで、インタビュー中Twitterの話題が何度かあがりましたが、兵頭さんは毎週Twitterにエピソードや感想をアップされていましたよね。それはこだわりでもあったのでしょうか?
兵頭:自発的に始めたのですが、やり始めたからには最後まできちんとやり通さなくてはと思っていました。前日、直前、直後に、オンタイムでつぶやくと決めていました。おかげさまで、3年の間に応援していただく声もどんどん増えて、嬉しい限りです。SNSという存在は『プリ☆チャン』の世界観にも通じるものですし、オンエアーとはまた別に、ここからメッセージを発信するのも『プリ☆チャン』らしいだろうと。もともとSNSは嫌いじゃなかったですしね。
――冒頭で“プリ☆チャンマニア”とおっしゃっていましたが、一つひとつのツイートに愛が溢れていて。
兵頭:自分は脚本家になる前に、設定制作(作品全体の設定の管理)という仕事をしていました。使用される設定をすべて把握しなきゃいけない立場なので、そのとき、作品に関しては誰よりも詳しいという自負があったんですね。傲慢を承知で「オレが(当時の担当していた)作品をいちばん愛している!」と豪語していました。以来、作品にシリーズを通してかかわるときには、そういう気持ちを常に持って取り組むようにしています。
『プリ☆チャン』に関しては「このキャラやこのお話の、ここがいいよね!」と、お互い『プリ☆チャン』が好きな者同士が会話するような、そんなノリを大事にしたいと思っていました。自分はこの作品が好きでしょうがない、そういう気持ちは、ツイートだけに限らず、脚本や作品づくりに自然とにじみ出てくるものですから。
――お仕事にまつわる話題があがりましたが、兵頭さんのお仕事も憧れを持たれる仕事だと思うんです。兵頭さんのようなお仕事をしたいと思っている方は、どんな「やってみよう!」をスタートすればいいのでしょう?
兵頭:自分は7年くらいアニメ制作の仕事を経験したあと脚本家になっているので、そうした経緯を知っている方から、同様の相談をされることもありますね。TwitterのDMで相談をいただくこともあって、その中には「アニメの脚本家になりたいんですけど、どうしたらいいですか?」というものも多くあります。けれど必ずしも王道があるわけではなくて、「自分の場合はこうだった」という返答しかできないんです。知り合いのライターさんもそれぞれ全く違った経緯を辿ってますし。
――では兵頭さんの場合は?
兵頭:自分は一人っ子なんですが、近所に親戚が住んでいて、そこの従兄の影響を受けて、小学生の頃『ガンダム』シリーズを観るようになったんです。そこからアニメにハマり、物語をつくることに興味を持つようになって、高校時代にはルーズリーフに小説を書いてクラスで回し読みしてもらったりするようになりました。
今のようにSNSが発達していない時代だったので、発信方法はアナログですけど、そこで「面白い」という反応をもらった体験が今の仕事につながっています。直接感想を言ってくれる人たちがいて、刺激的な影響を与えてくれる人たちがいる環境、それが今の自分を作っているように思いますね。大学に入学してから、その環境はさらに濃密になりました。
自分は大阪芸大出身なんですが、在学中は、普通にすごい芸を持っているヤツ、無茶苦茶な夢を真顔で話すヤツ、音楽学科でもないのに毎日ギターを抱えて来るヤツ、爺ちゃんの形見のハーフサイズカメラで授業中も撮影してるヤツなど、新しい価値観を教えてくれる友だちがたくさんできました。
最初の「やってみよう!」の始め方という話に戻ると、自分が大学で得たそんな経験は、今はネットを活用して気軽にできると思うんですよね。発信して、一緒に盛り上がれる人を見つけて、それを夢実現のための原動力にすればいいんじゃないかなと思うんです。自分ひとりだけでやっていると、途中でしんどくなってあきらめてしまうこともあるかもしれない。でも「面白いね、いいよね」って言ってくれる誰かがいたら、それが力になる。まずはそういう人たちと出会うことが出来れば……アニメ業界に限らず、いろいろなことをやっていく上での道が、一気に開けて行くと思います。
脚本家になりたいのだったら、ノベル系のサイトに作品を上げてみたり、各ラノベレーベルに応募してみたりというのも一手。小説を書くこと自体訓練になりますし、応募したその作品がアニメ化にでもなれば、脚本だってすぐにやらせてもらえます(笑) もちろんもっと地道な方法もありますが、それは結構時間がかかるものなので、相応の覚悟が必要です。
脚本家に限らず、とにかくアニメの業界に飛び込みたいのであれば、制作スタッフとして就職するのも一つの手です。他でもない自分がそうでしたし、プリティーシリーズの菱田(正和)監督も最初はそうです。実は菱田監督が制作スタッフだった時代、自分も同じ会社で同じく制作スタッフだったのですのが、菱田監督は新人の頃からすでに活動的でしたね。いきなり絵コンテを描いて、参加する作品の監督に持ち込んだりしていたと聞いています。当時、自分は違うスタジオの所属だったので面識はなかったんですけど、「なんかすごい新人がいるらしいぞ!」という噂は流れてきていました。
――素晴らしい行動力ですね。
兵頭:自分にはその行動力がなかったので、菱田監督には憧れましたね。プリティ―シリーズを手掛けられたとき、脚本に業界の重鎮である井内(秀治)さんが入られていたのも、制作時代から続く人間関係や経験があったからこそなんだと推測します。そう考えると、制作としてアニメ業界のキャリアをスタートすることにもすごく意味はあるということになりますよね。めちゃくちゃハードな仕事ではありますが、たとえば入って1年目でもエンディングクレジットに名前が出たりするので、取っ掛かりとしては贅沢な環境ではありますよ(笑)
――なるほど、ありがとうございます! 今日は良いお話をたくさんおうかがいできました。もっとお話を聞きたいくらいなのですが。
兵頭:またお話したいですね。インタビューは自分が聞く側になるのも、受けるのも大好きなんですよ。
――そしたら次回は2時間くらいでも……?
兵頭:全然余裕です。語っても語りつくせないほどのエピソードがあります。なんなら、脚本打ち合わせの時と同様、ぶっ通しで8時間でも(笑)。『プリ☆チャン』については、いくらでも喋っていられるんですよ。それくらい思い出がある、大切で、愛しくてしょうがない作品なんです。
[インタビュー・逆井マリ]
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
□『プリ☆チャン』の夢を大切に|音楽家・松井洋平 ロングインタビュー
キラッとプリ☆チャン シーズン3 Blu-ray BOX-3
発売日:2021/07/23
価格:11,000円(税込)
封入特典:初回仕様・特典内容
◆描き下ろし三方背BOX
◆ブックレット
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。
価格:2,530円(税込)
発売:2021/07/21
・封入特典:描き下ろしジャケットイラストステッカー(初回)
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。
価格:2,200円(税込)
発売:2021/07/21
・封入特典:描き下ろしジャケットイラストステッカー(初回)
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。
・場面写ブロマイド3枚セット(MOONLIGHT MAGIC)
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。