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『FGO -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』鈴村健一×杉田智和 インタビュー

『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』鈴村健一さん×杉田智和さんインタビュー 表裏一体のソロモンとゲーティアの在り方

※本編の重大なネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

2021年7月30日より全国劇場で特別上映されている『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』(以下、『FGOソロモン』)。大人気スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』(以下、FGO)第1部の最終章をアニメ化した、原作ゲームファンにとっては待望の作品です。

今回は公開から月日が経ってていることもあり、作品の重要なネタバレが前提のキャストインタビューを敢行。カルデアの暫定的な指揮官であるロマニ・アーキマン役を務める鈴村健一さんと、「人理焼却」を目論む人類の敵・魔術王ソロモンや、その尖兵であるレフ・ライノール、そしてすべての元凶であるゲーティア役を務める杉田智和さんに、それぞれの役どころについて独自の視点から語ってもらいました。

覚悟と感慨深さをもって臨んだ収録

――『FGOソロモン』では、杉田さんは魔術王やレフ・ライノール、そしてゲーティアなど、非常に重要な役どころで出演されていますが、収録に臨んだ際の印象について教えてください。

杉田智和さん(以下、杉田):収録に臨んでまず印象に残ったのが、魔術王やレフ教授、そしてゲーティア、それぞれが一様に寂しい目をしていたことです。彼らは神のごとき力と視点をもちながら、結局はマシュに理解してもらうことはできなかった。それに対して「寂しいんだろ?」と慰めの言葉をかけて寄り添おうとするのは間違いで。ただ、寂しい目だけがこちらを見つめてくるので、自分も視線をそらさないようにしなければ、と思い演じました。

彼らの視線がどこに向けられているのか、そして何を考えているのか。常に向き合いながら演じないと、彼らにはなれないと思ったんです。だから、本番中はあまり台本に目を落とさず、画面をしっかり見据えるようと心掛けました。

鈴村健一さん(以下、鈴村):最初にロマニ役をいただいた時から、彼の正体や結末について知らされていました。ですので、他の『FGO』アニメシリーズでロマニを演じる際も、『FGOソロモン』にたどり着くために演じている、という感覚で収録に臨んでいました。

他の『FGO』シリーズでのロマニは、どちらかというとちょっと抜けているお兄さんで、シリアスな空気を和ませるムードメーカー的な存在でした。ただ、TVシリーズ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』の序章にあたる「Episode 0 Initium Iter」でロマニの過去が描かれましたが、僕はあのお話こそがロマニにとっての最終回だと思いながら演じていた部分もありました。Episode 0でロマニの背景についての「種まき」を終えていましたが、『FGOソロモン』でようやく「収穫」にたどり着けたので、とても感慨深かったです。

ソロモンとゲーティアは表裏一体の関係

――鈴村さんはロマニについてどのような人物としてとらえていらっしゃいますか?

鈴村:肉体的には凡人ですが、その精神性は「超人」だと思います。かつて「聖杯戦争」で勝利を収めたソロモン王は、すべての力を捨てて「人」となることを聖杯に願いました。しかし人になる刹那、「千里眼」の力で人類の未来に破滅が訪れる光景を垣間見てしまった。王だとかサーヴァントだとか、そういうしがらみから解放されて、人として人生を生きようと思っていた矢先にですよ。

その後のことはEpisode 0で語られていますが、ロマニは一分一秒たりとも休む間もなく、破滅を回避するための方法を探して奔走し続けてきたんです。普通では考えられないような使命感と、責任感に押しつぶされそうになりながら生きてきたのだと思いますが、『FGOソロモン』でついに目的を達成した。その意思の力は、まさしく「超人」だなと思います。

――そんなロマニを演じる際に、どんなことを心掛けたのでしょうか。

鈴村:お芝居をする時は、現実にはあり得ないシチュエーションだったとしても、自分の身近な事柄に置き換えて感情を乗せるようにします。しかし「神からもらった力を捨てて人間になる」「その直後に、世界の終焉を垣間見る」という体験を、自分の人生の中で相当するものと置き換えるのは難しくて……。

ただ「誰かのために生きる」という感覚は、誰もが絶対に持っていると思うんです。それをどれだけ増幅するかだと考えて演じたつもりです。そのうえで、人類のために10年という歳月すべてを捧げられたロマニは、やっぱりすごいやつだなと思いました。

――これまでのロマニと比べて、演じ分けなどを意識した部分はありましたか?

鈴村:ロマニがソロモンとしての正体を現して以降は、お芝居を少し変えるべきかと思ったんです。それで収録前のテストの時、ソロモンが宝具を使う際の詠唱を神々しい感じでやってみたんですが、なんだか自分でも違和感があって。演出サイドからも「やっぱり、いつものロマニで行きましょう」という指示がありました。それで、逆に何も変えないことを意識してロマニを演じきったんです。

――普段のロマニを崩さないように、ということでしょうか。

鈴村:そうですね。「崩さない」というよりは、ロマニとソロモンは中身も意識も同じ人で、ずっと地続きのままブレることがなかった、ということなんだと思います。

――では、杉田さんはロマニの人物像について、どのように感じていますか?

杉田:人知を超えた究極の倫理と道徳の持ち主だと思います。肯定される側の人間であり、人に「光」を与える存在。その真逆に位置するのがゲーティアなのかなと。どちらが「表」でどちらが「裏」かは決められませんが、いうなれば「別側面」といえる間柄ではないでしょうか。

鈴村:どうしても「光」であるソロモンの方が「表」っぽく見えるけど、ソロモンの場合はそうとは言い切れない。ソロモン=ロマニも根っからの善人というわけではないしね。

杉田:ソロモンは「大いなる意思と思想」で、救いを求める民を放置し、ただ見守るだけでした。一方、ゲーティアは全人類を導こうと考えて行動を起こしましたが、それは結局「独善」に過ぎなかった。そんな神に等しい存在もたまには寂しくなるから、「人に作られた存在」という点で自分と境遇が似ている女の子に「俺と一緒にきてくれないか?」と言ってみたら「えっ、イヤです……」とフラれてしまったと……。

一同:(笑)

杉田:2回くらい誘ってみたけど、箸にも棒にもかかりませんでした。そうこうしているうちに、目の前に正しい答えをもつ者――ソロモンが急に現れちゃったもんだから、これはもう静かに消えるしかないなと。

鈴村:言い方はアレだけど、つまりはそういうことなんだよね(笑)。ソロモンは神に等しい力を持つ自分が、人々のやることに介入するのを避けた結果、何もしないという選択をした。一方、ゲーティアはすべての人類を救おうとした結果、一度人類を滅ぼしてリセットしようとした。そんな両者のどちらが正しいかなんて、誰にもわからない。

――ゲーティアは作中では「人類悪」と呼ばれる存在ですが、単純な「悪」ではないと。

杉田:もしも大いなる力を持った人間が、数々の悲劇を見て「彼らを救いたい」と思ったら、誰しもがゲーティアと同じ選択をする可能性はあると思うんです。だからこそ、ゲーティアも最後は恨み言を残すような去り方はしたくなかった。それをやってしまったら、自分が「悪」であると認めてしまうことになるから。

鈴村:ゲーティアは「人類悪」と呼ばれる存在だけど、とてつもない「人類愛」も感じるんです。彼が言っていること、やっていることは、突き詰めていくと「こうすると人類を救えるはずだ」ということですから。

人はお互いに異なる価値観・個性を持つがゆえに、衝突することもあるし、トラブルも起こすし、誰かを傷つけることもある。そういう問題は人が存在する限り起こり続ける。ゲーティアはそれをなんとかするため、一度人類というものをリセットするという方法を選んだのだから、じつはとても愛情深い存在だったのではないかと思います。他人に理解されるものではなかったけれど、「人はこうすべき」という倫理を越えた極端な価値観で人を愛し、救おうとした。「人類悪」ってそういう存在なんじゃないかなと思うんです。

「人類を救いたい」という思いで、地球の誕生からすべてをやり直し、優生思想すら凌駕する価値観の統一を成し遂げたのなら……。もしゲーティアの計画がうまくいっていたら、本当の「神」になれたかもしれませんね。

(C)TYPE-MOON / FGO7 ANIME PROJECT
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