「アイマスの未来」を掲げた“シリーズ5ブランドの総勢15人が歌う”「VOY@GER」はクール&ダンサブルな一曲! コンセプトムービー監督・錦織敦史氏が目指したこれまでの『アイマス』の枠の外とは? 烏屋茶房さん&井上馨太さん(MONACA)のコメントも
夢を叶えてくれた『アイマス』への恩返しの気持ちもあります
――未来や宇宙といった話がありましたけど、衣装もそれをイメージした感じですね。
錦織:そうですね。それ(宇宙の果てへの航海)をエスコートするような衣装であり、かつダンスが中心になってくるので柄やシルエットは簡素にして、なるべく演出や服の仕掛けで変化をつけたいなと思いました。
――服の仕掛けというのは?
錦織:CGを使った部分やテクスチャー、色が変わったり光ったり、ですね。
――こだわった手描きの良さに、そういった技術もフル活用していると。
錦織:両方あるといいなと思っています。今回の見どころとしてまず、カラーの釣井(省吾)さんをはじめ、錚々たるメンバーにお願いして背景のCGやモーショングラフィックをふんだんに盛り込んでもらっている所ですが、そこだけをメインで見せるわけでもなく、(手描きの)ダンスと共存、融合して、1曲通して見るとお腹いっぱいになれる映像美を目指しました。
――本当にひとつの作品というか、ボリューミーな内容になっているのですね。
錦織:そうですね。TVシリーズのワンシーンではなかなか作り込めない部分ってあるんですよ。そもそも、1曲通してずっと踊っているものなんてできるはずがないと思っていましたし。
――そういえば以前、音楽のPVとか予告映像が好きで、細かいお話もいっぱい描いてみたいと話していましたよね。今回の映像は、まさに夢が叶ったのでは?
錦織:今回夢が叶ったというか、『アイマス』にはずっと夢を叶えさせてもらってばかりです。アニメもあんなにふんだんに曲を使って、音楽とキャラクターをうまく使える作品はなかなかないですから。一方で、今回のように1曲まるっと作ることもできる。それって、アイドルアニメという特性じゃないと成立しないものですし、その振り幅の中で最たるものを思いっきりやらせていただきました。
といっても、『アイマス』が全部こういったところに向かっていくのではなく、可能性のひとつだと思っています。1曲まるまる全力で作画に振って映像美にこだわった作品があってもいいんじゃないですか? と僕からの提案というか。
15年以上経つと、結構いろいろなことをやり尽くしてきて、成功体験を繰り返したくなりますよね。でも、こういうのがやりたい!、と思う人が作品を作っていける環境はコンテンツとして健康的だと思うんです。その状況を作っていきたいですし、それが自分の役割なのかなと。最初のアニメシリーズをやりだした時もそういう気持ちでした。今の自分が『アイマス』のためにできることはないか、それが一番のモチベーションであり、恩返しの気持ちでもあります。
――そういうチャレンジができるのも『アイマス』の良さであり、懐の深さだと感じます。
錦織:もちろんそうですね。普通はこんなもの作らせてくれないでしょ、って作っている僕も思いましたから(笑)。コンテンツ全体から『アイマス』の未来に向けて種をまいていこう、という気持ちを感じましたね。
気がついたら原点回帰。でもそれが『アイマス』ってこと
――作品のキービジュアルやジャケットのデザインも監督がレイアウトされたそうですが、キービジュアルは最初のアーケード版を思い出した人もいたと思います。これは意識されたのでしょうか? それともたまたま?
錦織:意識はしていなかったですが、気がついたらなんとなく意識した感じになりました。デザイン周りを進めてデザイナーさんと話している時にも、原点回帰だなと思ったんですよ。
僕が初めて『アイマス』に触れた時、ゲーセンに通ってメールが来て……何か新しいものが始まった、近未来感やサイバー感を感じたんです。初期のデザイン周りや、@に込められている意味合いもありましたから。それを今の技術でもう少し未来に向けて、これまでの『アイマス』の枠の外に出ようと思ったら、意外と原点回帰になったんですね。
――やっていったら、いつのまにか原点回帰していた感覚なのですね。
錦織:結局はここに行くのかと。でもそれが『アイマス』ってことなんだろうなと腑に落ちるところもありましたね。
――ちなみに、以前のアニメや劇場版と地続きの世界であるとか、そういった直接的な関連性はないですよね?
錦織:ないですね。ある種のパラレルであり、いろいろな可能性のひとつだと思って見てもらえればと思います。
――最後に、改めてコンセプトムービーのこういった部分にも注目して欲しい、見どころをお聞かせください。
錦織:フォーメーションが狭いところですね。今回はステージが広くなったり、狭くなってフォーメーションで見せたりしています。そういったパフォーマンスが画面に詰まっているんです。それってアニメでは避けがちな部分なんですよ。5つのブランドの『アイマス』が一画面にいる混じり具合は自分でもちょっと手探りでしたので、実際にちゃんと混ざっているのか心配ではありますが、その辺も楽しんでもらえたらと思っています。
――今回の映像になにかサブタイトルをつけるとしたら、どのようなものにしますか?
錦織:そうですね……「ワクワク」かな。今回は(春香以外は各ブランドの)信号機を外して選ばれていて、自分もワクワクしながら作りたいと思いましたし、見る人にもワクワクしてもらえたらなと。今までの『アイマス』も感じてもらいたいというのは根源的なコンセプトとしてあると思いますが、見ている人に少しでも新鮮さや、このコンテンツはすごいと感じてもらいたいですね。
――この形が定番になっていくのかは分からないですけど、方向性のひとつとして楽しみにしています。
錦織:いわゆるPVやMVだけじゃなく、こういう映像をやりたい人がいて、それを実践できる環境があるならどんどんチャレンジしていける地盤が『アイマス』にできたらいいな。その要素のひとつになれたらと思っています。
――そういう意味も含めて『アイマス』の未来を感じたいと思います。ありがとうございました!
[取材・文/千葉研一]