TVアニメ『キングダム』-合従軍編-信役 森田成一さん×嬴政役 福山 潤さんW主人公対談|「炎を絶やさぬように」臨んだアニメの行く末と政や信たちの生きざまを見守って
コロナ渦の収録は大人数のキャラとキャスト出演の作品だからの難しさも
――ちなみに収録はコロナ渦の影響はありましたか?
福山:コロナ渦に入る前に収録が始まって、途中で収録が中断して。
森田:13話までは、全員で収録していました。
福山:この作品が一番影響を受けた作品かなと思うくらいで。なぜかといえば、出演者が多いし、ガヤの数も多いため、個別収録では1日で録り切ることができなくて。
収録再開後の最初の頃はスタジオを3~4つ使って、1人でも多く一緒に録ろうとスタッフの方たちがスケジュールを調整してくださったり、マイクなどの消毒もこまめにやってくれました。そのおかげで我々、キャスト陣はそれほど大きな弊害なく、無事に収録することができました。
――特に第3シリーズは、キャラクター数が多いですからね。
福山:香盤表にも引くくらいの名前がありますから(笑)。一般的な30分アニメの場合、1ページで20人くらいの役が書いてあるんですけど、この作品は1ページに30人くらいの役が書かれていて、それが4ページにも渡っていて、配役も100を超えるのも当たり前で。
森田:うちの現場は毎回、30人くらいの役者さんが来てますからね。更に兼ね役の方もいらっしゃるので、役は倍以上になって。別々に録音するのはやりにくいし、スタッフさんの大変さもあるし。よくここまでまとめてくださったなと感謝しています。
福山:描いている戦場が1話の中でいくつもある場合は、戦場ごとにチームを作ればいいんですけど、1つの戦場でずっと話が進行していく時は一緒に録れない方も出てきて。そこも話数によって、うまくやりくりしていただきました。演者がリアルタイムでかけ合わせられるのかを重視してやっていく方向が業界全体で定まってきたあたりでクライマックスを迎えたので不都合はあまり感じませんでした。
「合従軍編」の単行本発売は第2シリーズ収録後だったため何度も朗読!? スケールの大きさに勝てないという苦悩も
――第3シリーズ「合従軍編」の原作を読んだり、実際に演じてみて感じた印象をお聞かせください。
福山:さすがに刊行当時の原作で読んだ時の印象とは変わってきました。特に「合従軍編」のクライマックスにあたる蕞(さい)での攻防は、アニメの第2シリーズの収録が終わった頃くらいで。僕らも熱が全然冷めていないので、コミックが出たら声に出して読みますよね、何度も。
森田:そうなんだ(笑)。
福山:原作が手元になくてもセリフを言えてしまうくらい(笑)。周りや演出とか関係なく、自分の想いのままストレートにやれるので楽しくて。
でもいざ第3シリーズで演じるとなると、6年の歳月の中で自分も分別がついてきて、ただ声を張ったり、想いを込めればいいわけではなく、自分が意図しない何かの手を借りなければいけないなと思ったら気が重くなって(笑)。だけど難しいと感じながらもセリフに向かい合えたことに喜びを感じていることが7年前とは大きな違いかもしれません。
森田:もし第2シリーズからすぐに第3シリーズが始まっていたら今の形にはなっていないだろうなって。時間を空けたことでスタッフの皆さんもより練り込まれたと思うし、その間に僕も成長できたし。でも「合従軍編」のスケールの大きさにまだ勝てないなとも感じていて。そんな悩みも含めて、今の信とシンクロしているなと。
政は自分が描く国造りを見出して、まい進しているけど、信はどう進んでいけばいいのか、まだわかっていないんですよね。大将軍になるという目標はあるけど、王騎が死ぬ直前に馬上から、将軍の視界を見せられてしまったことによって、自分の中でどう受け止めればいいのか、まだ整理がついていないままで。僕も今、心の中では同じような立場にいることが、かえって演じるうえでもプラスになっている気がします。
そして政を含め、他のキャラクターがブレずに進んでくれているので、「もし僕がグラついても大丈夫。思い切りやろう」という安心感があります。