『竜とそばかすの姫』大ヒット記念! 細田守監督インタビュー|ベルのデザインの秘密は? 今後の海外展開は? 周囲の反響は? 映画公開後だから話せたあれやこれ
高知のみなさんはお得な映画!?
ーー作り終わった印象はいかがですか?
細田:『竜とそばかすの姫』ではいろいろ手応えがあったので、それをベースに更に良い作品、新しい面白い作品ができたら良いなって考えています。
ーーその手応えとは?
細田:具体的にはCGです。今までの作品ではCGは作画の補足的な役割で使ってたんですが、今回はメインで使いました。主人公の気持ち、感情表現をCGで表現するっていうことに踏み込んで挑戦したんです。
いままでのCGアニメって、どこかぎこちなくて、魂の入っていない人形のようになりがち。でも今回の『竜とそばかすの姫』で、僕らで本気で取り組めば、かなり魂を入れて存在感を出していけるなと実感しました。これからはもっとCGを駆使して、現実を超越するような絢爛豪華な映像の楽しさを表現していきたいですね。
よく、手描きとCGどっちが良いかみたいな話もありますけど、そんなのツールの違い、筆の種類の違いだけであって、表現する内容によって変えればいいと思っています。高知の田舎にひっそり佇む少女を繊細な手描きで表現する意味も、アニメーション映画として充分にあると思うので、手描きも引き続き積極的に表現していきたいです。
ーー今回、高知のみなさんはすごく盛り上がってくれていたそうですね。
細田:『竜とそばかすの姫』は、現実とバーチャルの世界の2重性を楽しめる映画ですが、高知の方々はその上で自分たちのよく知る風景、っていうレイヤーが加わるので、3重の意味で面白いらしいですよ。「高知県民は他の地域の人よりもお得です」って。
高知の街のように、川が中心を流れている地方都市ってすごく美しい。魅力的な街を舞台に多感な時代を過ごす学生たちを描くと、それだけで映画になる。
アニメが世界中の人と楽しめる幸せを
ーー今後は海外展開も本腰を入れていくと思います。カンヌ国際映画祭はいかがでしたか?
細田:『竜とそばかすの姫』はカンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクションである「カンヌ・プルミエール」部門で上映されました。カンヌのメインの上映の中の1つとして新設されたものです。
コロナの影響で制作が間に合わない可能性があって、それでもなんとかギリギリ完成させて、上映の10日前に映画祭に納めたんです。ワールドプレミアということで映画記者、批評家たちも含めた1000人以上の観客が先入観なくあの場で初めて観た。
それで上映が終わったら、観客は総立ちで10分以上のスタンディングオベーションをしてくれた。この映画にとても感じ入ってくれたことが、拍手からすごく伝わってきて、観たかったものを観た、心地よかったっていう思いがしっかり感じることができた。
ーーなるほど。ヨーロッパやアメリカでの今後の展開についてはどう思われますか?
細田:作品本位で世界中の人と繋がれたら良いなと思います。アニメであるとか、日本作品であるとか、そういうカテゴライズが必要ないっていうこと、飛び越えることができるっていうことを作品が体現してくれたら良いなと思います。
これはかつて日本の中でもそうで、「アニメは子供の見るものだ」とか、「オタクだけのものだ」とかというところから、徐々に壁を突き崩して、より広い価値を少しづつ獲得してきた歴史があったわけですよね。
ーーこれから『竜とそばかすの姫』が、アジアから始まり、ヨーロッパや欧米に広がっていくと思います。このインタビューは、翻訳を行い各国にもお届けできればと思っています。そんな世界中の観客の方々に、監督からメッセージはありますか?
細田:世の中が変化していく中、映画そのものの見方も変化していく時代です。その国で作られた映画がその国でしか楽しめないっていう時代じゃなくて、どこで生まれた映画もみんな等しく楽しめるように変わってきています。
世界中が多様化していく中で、もっとたくさんの人と共有できるように広がっていくでしょう。それによってさらにいろんな価値の変化がグローバルに起こっていくと思いますし、今はその渦中だと思うんですよね。
その中で今、僕らがどういう時代を生きているのかを描いたのが『竜とそばかすの姫』です。いろんな国の方がそれぞれ自分自身を重ねて楽しんでもらいたいなって思っています。