『竜とそばかすの姫』大ヒット記念! 細田守監督インタビュー|ベルのデザインの秘密は? 今後の海外展開は? 周囲の反響は? 映画公開後だから話せたあれやこれ
興行収入58億円を突破し、大人気となっている細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』。抑圧された現代を映し出すように、高知の田舎町からインターネットの大海原で歌姫として大躍進を遂げる少女の物語は、多くの人々の心に影響を与えています。
本作では、インターネットの世界≪U≫のCG描写や、その中で主人公・すずのアバターである「ベル」の存在、現実とインターネットを舞台とした新たな二面性など、細田監督の中でも新たな試みとなった部分が見られました。
これらはどのように作られ、またどのような評価を受けているのでしょうか? そして、今後の海外へ向けた意識は?
今回のインタビューでは、そんな映画が公開された今だからこそ気になる質問を細田監督にぶつけてみました。映画をご覧になった方も、これからご覧になる方も、このインタビューを読めば作品の印象がまたガラッと変わるはず。
なお、今回のインタビューは多言語に翻訳し、海外にも発信していきます。世界中に細田監督のメッセージが届くことを祈って!
こちらもチェック!
□『竜とそばかすの姫』細田守インタビュー|【アニメスタジオの今と未来・番外編】
□『竜とそばかすの姫』齋藤優一郎インタビュー|【アニメスタジオの今と未来・連載第3回】
インターネットが世界を変えていくのは世界共通認識
ーー以前、映画公開前に一度インタビューさせていただきましたが、今回は映画公開後の反響や今後の海外での公開に向けてのお話などをお聞かせいただけたらなと思っております。
細田:はい。
ーー『竜とそばかすの姫』は興行収入58億円と発表されて、大ヒットを記録しています。映画公開後の周囲の反応はいかがですか?
細田:本当にたくさんの人に観ていただけています。とても気に入ってくださったみたいで、好意的なリアクションを聞いてホッとしています。複数回見てくださる方もいらっしゃるようですし、非常に良かったなと思っています。
ーー特に印象に残っているコメントなどありますでしょうか。
細田:音楽が素敵だったとか、ベルの歌がすごかったって話もありますし、美術の絢爛豪華さや映像の美しさが圧倒的だったっていう話もたくさんいただいています。
でもやっぱり「作品のテーマが自分にすごく刺さりました」っていう声が、いちばん多く届きました。インターネットと共にある僕らの社会の中で、今を生きるたくさんの人たちが今回のテーマに共感してくれた。
ネットで誰でも発信ができる時代の中で、誹謗中傷の問題や匿名性の危うさ、その中でどうやって立ち向かうか。素顔を出すことの勇気、現実とバーチャルの人とのつながりの大切さなど、さまざまなことが非常に刺さりましたという声が多かったです。
これは日本だけでなくて、フランスのカンヌ映画祭で上映頂いた際の反応もそうでした。ネット社会という世界共通の課題をちゃんと映画として描いて、そのグローバル性と今日性がよかったと言ってくださる声が多かった。
インターネットを題材にしていて、世界の人の課題であるっていうこともあると思うし、やはり世界中がコロナ禍の中、みんな抑圧されて不自由さを感じていて、そこから開放してくれるようなものがこの作品に含まれていたんでしょうね。
ーーやはり海外でも日本と同じような認識で見てくださるんですね。
細田:この『竜とそばかすの姫』が描いていた、インターネットが僕らの生活をどんなふうに変えていくのかというのは、やっぱり世界各国共通の課題であり興味の対象なんですね。
今はコロナ禍で、世界が同じような苦しみを抱えていて、「そっちの国も大変だけどうちも大変だから共に頑張ろう」みたいな一種の共感覚みたいなものがある。コロナについてフランス人と話していても、まるで隣の町の人と話しているような感覚があるんです(笑)。
そういう意味では、インターネットが世界のいろんな壁を下げる役割があるのと同じように、コロナというのも、心理的なハードルを下げている事象な気もしていて。こういう状況下で映画を公開する意味を考えさせられますね。
ーー非常に興味深い内容です。その中でも特に10代の方たちからの共感があるような気がします。
細田:若い人たちにとって、インターネットは「もうひとつの現実」であり、現実と合わせて、ふたつの世界を生きている感覚がはっきりとあると思います。なので、今まであった壁やハードルを意識しない若い人がかなり多いのではないでしょうか。
親・大人世代はインターネットに対して危機意識を持っていて、子供には触れさせたくないという気持ちが少なからずある。しかし、若い人は「ネットはこれからの世界になくてはならないものだから、自分たちの新しいツールとしてガシガシ使っていこう」と思っている。
確かにインターネット社会には功罪あるけれど、若い人にはそういうのを乗り越えて、臆病にならないで強く生きてほしい。古い世界をぶち壊して、新しい世界を打ち立ててほしいっていう気持ちが僕には強くありますね。