『スター・ウォーズ：ビジョンズ』「タトゥイーン・ラプソディ」レビュー｜「声枯らして　歌え」──歌声が銀河に響く！ これはSWの世界を生きる、どこにでもいるロックな人々を描いた物語【全作レビュー連載第2回】

名もなき元ジェダイ、ジェイの歌声がタトゥイーンに響く

ライブ会場となった砂漠の惑星タトゥイーン出身であるルーク・スカイウォーカーのように銀河を救うことはできずとも、タトゥイーン中に“ロック”を響かせるメンバーたちの姿に「この生きにくい銀河においても戦いではなく自分のやりたいことを貫きたいんだという人達がいてもいい」という木村監督の“ビジョン”を感じさせられる『タトゥイーン・ラプソディ』。

木村監督のもと、『ペンギン・ハイウェイ』や『泣きたい私は猫をかぶる』などで知られるスタジオコロリドにより制作された本作は、細やかでいて温かな表現によってキャラクターたちの心情が丁寧に描かれ、冒頭の戦闘シーンや後半のライブシーンは力強い躍動感溢れる演出が施されているなど、スタジオコロリドならではの映像となっています。

また、グローバル版の声優には、主人公・ジェイ役の吉野裕行さんや、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』からジャンゴ・フェットや本作にも登場するボバ・フェットを演じられている金田明夫さんが出演。

さらに、「スター・ウェイバー」のメンバーとして後藤光祐さん（ギーザー役）、藤田昌代さん（K-344役）、勝 杏里さん（ラン役）と、シリーズファンだけでなく、アニメファンにも嬉しいキャスティングとなっています。

作中ではジェイの歌も披露されており、「声枯らして　歌えeverybody」のフレーズからはじまる「GALACTIC DREAMER」では、「フィグリン・ダンとモーダル・ノーズ」のように音楽を通して「スター・ウェイバー」の生き様を歌い上げます。その歌声は、木村監督が描いた「“ロック”における反骨精神」を見事に表現。

映像や演出、キャスト陣の演技、音楽などの要素により表現された、日本アニメーションとしての『スター・ウォーズ』となった本作は、これまでのシリーズ作品とは全く異なる作品となっています。

それでいて全くの別作品を観た、という思いにはならず、視聴後にはしっかりと『スター・ウォーズ』を観たという気持ちにさせてくれました。それは、随所に散りばめられた『スター・ウォーズ』へのリスペクトと、木村監督の明確な“ビジョン”がスタジオコロリドやキャスト陣によって表現されているからでしょう。

[文/太田友基]

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『スター・ウォーズ：ビジョンズ』とは

ディズニープラスにて独占配信

ジョージ・ルーカスが黒澤明作品や日本文化から多大な影響を受け制作した「スター・ウォーズ」の創造のルーツとも言える日本へルーカスフィルムが強いリスペクトを込めた「スター・ウォーズ」史上初の一大アニメプロジェクト。「スター・ウォーズ」の創造のルーツとなった“日本”、そしてその日本から新たに誕生する、「スター・ウォーズ」への期待が、世界的に高まっていく中で、エグゼクティブ・プロデューサーであるジェームズ・ウォーは「これは私たちが愛する“アニメ”という文化を生んだ日本へ贈るルーカスフィルムからのラブレターです。」と日本アニメに対する熱い想いを語る。参加したクリエイターたちが、＜スター・ウォーズ＞そして＜日本のアニメ＞への熱い情熱を持って創り上げる、独自のビジョンで描いた9つの「スター・ウォーズ」は9月22日(水)16時よりディズニープラスにて全9話一斉に日米同時配信される。

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