先代の声真似から始まったルパン人生――原点回帰を掲げる秋アニメ『ルパン三世 PART6』栗田貫一さん インタビュー│小林清志さんと新たな相棒についても
小林清志さんと一度だけ本気で衝突した理由とは?
――今回、大きな出来事として次元大介役の小林清志さんが卒業となりました(※)。栗田さんがルパンを引き継いだ当初からいらっしゃる小林さんはどのような存在でしたか?
栗田:山田さんが倒れられて「ちょっと手伝ってほしい」と言われ、てっきり山田さんが入れ残したセリフを一言二言いれて、わからないように放送する――そういった、モノマネ冥利な話だと思ってスタジオに行ったんです。そうしたら、なんのセリフも入っていない『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』という劇場版があって。
それのルパン役をやってと言われたけど、どうやってマイクに向かって、どうやって喋っていいかもわからず。それで横を見たら、小林清志さん(次元大介役)、納谷悟朗さん(先代・銭形警部役)、増山江威子さん(先代・峰不二子役)、井上真樹夫さん(先代・石川五エ門役)という、子供の頃から見ていた人たちが喋っているわけです。
最初の印象なんて覚えていないですよ。そこに立たされても記憶が残らないですよね。いきなり大リーグのマウンドに少年野球のピッチャーが立つみたいなものですから。関係者がスタンドにいっぱいいるマウンドに立って、「はい投げて」と言われたってキャッチャーまで届きはしないです。
※初回放送「EPISODE 0 ―時代―」は小林さんが最後に次元を演じ、それ以降は大塚さんが次元を演じます。
――この中にいきなり入ったらそうなりますよね。
栗田:小林さんの最初の印象も「次元だ」と思っただけで、本人がどんな人だとか気にする余裕なんかなかったです。僕が一番若かったですし、声優の世界を何も知らないで立ったわけですから、最初は「こういう人たちがあの声を出していたんだ」って感じでした。
でも、その後は、小林さんにしても納谷さんにしても「山田さんがいたらどうだったんだろうな」といつも思っていました。山田さんと小林さんの関係はどうだったんだろうって。
――では、横で演じているすごい人という感覚から、小林さんと演じている感覚になったのはいつ頃でしょうか?
栗田:『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』で、ルパンと次元が「お前のために来てやったのに」「そんなこと頼んでねぇ。お前なんか仲間でもなんでもない。ビジネスパートナーだ」みたいな掛け合いをした時かな。その時に、僕が小林さんと話したような気がしたんですよ。次元と喋っているけど、小林清志さんという方とセリフを交わした気がしたのは、そこからですね。
――引き継いだ際は色々プレッシャーがあったかと思いますが、小林さんにかけられた言葉であるとか、特に印象に残っていることはありますか?
栗田:何本目の作品だったかは覚えていないですけど、僕がスタジオでずっと喋っていると、気がついたらブース内は僕だけだったんです。当時の僕は、大変だし、わからないし、となっていて……。
小林さんクラスの大ベテランですと当然の事なんですけど、(出番で)ブースを出たり入ったりなので、ブース内の様子はわからず「どこから?」と。段々と「なんで一緒に居てくれないんだろう、こんなに出来ない僕が一生懸命やっているのに」とか、色々と思えてきちゃって。ストレスというか、追い込まれてしまって、そのようなことを小林さんに直接言ったことがあるんです。
周りはビックリしますよね。小林清志をつかまえてあいつはなんてことを言うんだって。でも、そのぐらい甘えたかったんです。もっと横に居てくださいよって。清志さんは清志さんで、僕の言葉に本気でムッときたらしく、その夜の打ち上げの時に「このやろう」「すいません。でも僕はこういう気持ちで言いました」との事があったんです。
そうしたら納谷さんが「お前たち何やってんだ」と。説明したら「栗ちゃんの言う通りだ」って。そして、これからはなるべくブースを離れないようにしよう、ってなったんです。それがあって以降、家族に入れてもらえた感じというか。
なんというか、納谷さんが親父みたいでしたね。井上さんは一番近いお兄さん、増山さんはいつも見守ってくれるお姉ちゃん。小林さんは納谷さんが亡くなられた後は、(親父として)ずっと見守ってくれたのかなって。あの人たちからしたら、当時の僕のルパンなんて気持ち悪くて仕方なかったと思うのに……。