先代の声真似から始まったルパン人生――原点回帰を掲げる秋アニメ『ルパン三世 PART6』栗田貫一さん インタビュー│小林清志さんと新たな相棒についても
新たなレジェンドたちが揃い、ルパンをやり始めた当時に戻った気持ちでした
――その小林清志さんを引き継いで、今回から大塚明夫さんが次元を演じます(※)。このご時世ですので、なかなか一緒に収録はできないと思いますが、なにかお話はされましたか?
栗田:明夫さんはデンゼル・ワシントンやスティーブン・セガールの吹き替えをされているじゃないですか。それを聞いて、次元の声に近いとは感じていたんです。それで実際に会ったら、背は180cm以上あるし、ヒゲもあって、次元じゃん! と思って(笑)。
小林さんもそうだったけど、低音でドーンと横隔膜を響かせるような声。年齢は僕の方が2つぐらい上だけど、その声で「明夫って呼んでください」って言われても……呼べないですよ。「(大塚さんの声を真似て)いや、後輩ですから。明夫って言ってください」「いや、言えないよ」って(笑)。
すごいのは、僕が入った時は、納谷悟朗さん、小林清志さん、井上真樹夫さん、増山江威子さんがいて。超レジェンドがいたわけです。そして、今回小林さんが交代して大塚明夫がきて、これまたすごいレジェンドばっかりなんですよ。山寺宏一、浪川大輔、沢城みゆきですから。逆に入った当時に戻った気がしました。こんなにエリートが揃っちゃって、ルパンだけ僕でいいんですか? って感じるメンバーになりました。
※初回放送「EPISODE 0 ―時代―」は小林さんが最後に次元を演じ、それ以降は大塚さんが次元を演じます。
――本当にすごいメンバーです。
栗田:大塚明夫さん、いや“大塚明夫が”言っていたんだけど(笑)、変わることのプレッシャーとは別に「どうせなら、もっと若い人を選べばいいのにな」と。小林さんも88歳。僕らもそうですが、人間は年を取って声がかすれてきたりするので、いずれは変わるんです。(交代する年齢を)80歳とすれば、あと20年しかやっていけない人間に代えるより、40歳を入れればあと40年いけるのにねって冗談は、このあいだ話していました。
考えたらおっさんばかり、60歳(山寺宏一)、61歳(大塚明夫)、63歳(栗田貫一)の集まりだから。ちょっとした敬老会だよねって(笑)。でも、やっぱり小林清志という人に変わるのは、大塚明夫ぐらいの人なんだろうなと思いましたね。
転換点となったのは、納谷悟朗さんから言われたひと言
――栗田さんご自身のこともさらにお聞きします。『ルパン三世』がアニメ化50周年、そして栗田さんがルパンを担当されてから26年経ちました。TVシリーズも『PART4』『PART5』、今回の『PART6』、さらに『LUPIN the Third -峰不二子という女-』などがあり、そう考えると50年のうち半分以上になるわけですよね。ご自身の感覚としてはいかがですか?
栗田:よく「ルパンやってどのぐらい経つんですか?」「26年目かな」「え〜! そんなにやっているんですね」って話になるんです。確かに26年やっていたんでしょうけど、(金曜ロードショーの)テレビスペシャルや劇場版って2日間ぐらいで録るから、残りの363日は普通にモノマネの仕事をしていたわけです。
(新メンバーが入るまでを)凝縮したら15年間でも1ヶ月しかやっていないんですね。だから、慣れていったと思えるのは『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』で新メンバー3人(山寺さん、浪川さん、沢城さん)が入ったあたりからなんです。言ってしまえば彼らよりも1ヶ月しか多く演じていない。そのぐらいの感覚なんです。26年と言われても、正直う〜ん……って感じがします。
――そうなのですね。とはいえ、やはり演じていくにつれて、ルパンを自分の中でしっかり捉えられるようになったとか、転換点はあったのでしょうか?
栗田:7〜8年経った頃だと思いますけど、収録で絵があまり入っていない時に納谷さんが「こんなんじゃできない」と言ったことがあって。その時に「これはお前の作品なんだから(この状態で収録をするか)お前が決めろ」と言われたんです。そこぐらいからかなぁ。それまでは、僕の作品だとは思っていなかったんです。
――普通であれば、主人公を演じる人は“座長”という扱いになるかと思うのですが、その感覚もなく?
栗田:ないです。無責任とかじゃなくて、どう考えても僕じゃないでしょ、って。周りは僕が頼りにしている人たちばっかりなのに、僕に言われても……って思うじゃないですか。
――確かに。ただ、26年も経てば当然、栗田さんのルパンしか知らない人も多くなってきたわけで。その人たちがルパンのモノマネをする場合は、栗田さんのルパンを真似ると思うのですが、それって栗田さん的にはどういう感覚なのですか?
栗田:基本的に今もモノマネの仕事をしているし、僕は“本物”って感覚がないんです。今でも、山田さんのマネをしろと言われたらいつでも出来るし、山田さんの真似を録音して聞くと安心するんですよ。そっくりだから。逆に、僕がルパンとして喋った声を録音すると、気持ち悪くてしょうがないんですね。
でも、一般の人が僕のルパンのマネをやってくれたら、僕はそういう感じなんだと思うだろうし……。モノマネを今でもやっている人間としては、特別な感覚というよりも「モノマネ上手いね」となりそうです(笑)。
――ちなみに、ルパンといえば、ジャケットの色も毎回話題となります。栗田さんが最初に見た、原点となっているルパンは何色のジャケットでしたか?
栗田:赤ですね。『ルパン三世 PART2』かな。その前のルパンも子供の頃に見てはいたけど、ちゃんと面白いなと思って見ていたのはここからですね。
[取材・文/千葉研一]
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画像をクリックすると、関連記事にとびます。TVアニメ「ルパン三世 PART6」作品情報
2021年10月より日本テレビ系全国放送開始!
日本テレビでは10/9(土)24時55分より放送開始
※各局の放送日時は公式 HP でご確認ください
配信:Hulu 他配信サイトで配信予定
※配信先情報は、公式 HP で順次公開
イントロダクション
その男の名はルパン三世。怪盗アルセーヌ・ルパンを祖父に持つ大泥棒。
宝石、美術品、隠された財宝、不老不死の秘密、はては可憐な少女の心まで、彼に盗めぬものは何ひとつない。
相棒は凄腕ガンマンの次元大介。そして、居合抜きの達人・石川五ェ門。類まれな美貌と頭脳を持つ魔性の女・峰不二子。
執念で地の果てまでルパンを追い続ける銭形警部。
そんな個性豊かな面々とルパンが繰り広げる、ハードボイルドで、スリリングで、コミカルで、エキセントリッ
クな物語――。
モンキー・パンチが生み出したコミック『ルパン三世』は、それぞれの時代の空気を取り込みながらアニメーションで展開され、世界中のファンを虜にしてきた。
そして2021年。アニメ化50周年を迎える今、ルパンがまた、動き出す!
新作アニメーション『ルパン三世 PART6』は、ルパンを紐解く2つのキーワードでストーリーを展開。
1クール目は、〈ミステリー〉! 王道かつ斬新な、謎多き物語が幕を開ける。
そのシリーズ構成を務めるのは、映像化作品多数の推理小説家でありアニメ・特撮の脚本も手がける、大倉崇裕。そして各話脚本にはゲストとして、辻真先、芦辺拓、樋口明雄、湊かなえ、押井守が参加。
小説界・アニメ界を賑わす、豪華な顔ぶれが名を連ねる。
エメラルドグリーンの背広に身を包んだルパンが繰り広げる、新世界のための〈原点回帰〉ーークール&ミステリアスな冒険を見逃すな!!
ストーリー
舞台はロンドン。
ルパンのターゲットは、英国政府を影で操る謎の組織・レイブンが隠したお宝――
その手掛かりとなる一枚の絵。
立ちはだかるスコットランド・ヤードやMI6。ルパンの動きを察知して現れた銭形警部。そして、ルパンの前に現れた探偵――その名はシャーロック・ホームズ!
シリーズ構成・大倉崇裕のメインストーリーと、豪華脚本陣のオムニバスエピソードが絡み合う、謎多き〈ミステリ・ルパン〉が今、幕を開ける!
スタッフ
原作:モンキー・パンチ
監督:菅沼栄治
シリーズ構成:大倉崇裕
キャラクターデザイン:丸藤広貴
美術監督:松宮由美、備前光一郎、小倉宏昌、西澤 航、李 凡善、竹田悠介
色彩設計:宮脇裕美
撮影監督:佐々⽊明美
編集:吉武将人
音響監督:清水洋史
音響効果:倉橋裕宗
音楽:大野雄二
メインテーマ:「THEME FROM LUPIN III 2021」
作曲:大野雄二、編曲:大野雄二、演奏:Yuji Ohno & Lupintic Six with Friends
制作:トムス・エンタテインメント
製作:ルパン三世PART6製作委員会
キャスト
ルパン三世:栗田貫一
次元大介:大塚明夫
石川五ェ門:浪川大輔
峰 不二子:沢城みゆき
銭形警部:山寺宏一
八咫烏五郎:島﨑信長
アルベール・ダンドレジー:津田健次郎
ホームズ:小原雅人
リリー:諸星すみれ