アニメ『さんかく窓の外側は夜』冷川理人役・羽多野渉さんインタビュー|初めての試みで難しかった役、“芯があるセリフ”を全部捨てた冷川というキャラクター【連載02】
2021年10月よりTOKYO MXほかにて放送中のTVアニメ『さんかく窓の外側は夜』。
本作はヤマシタトモコ先生の同名ホラーコミックが原作で、偶然出会った除霊師の冷川理人と昔から不気味なモノを「視て」しまう体質の三角康介がバディを組み、数々の事件を解決していくストーリーとなっています。
このたび、アニメイトタイムズにて声優陣やスタッフを対象にしたインタビュー連載がスタート! アニメーションならではの見どころやキャラクターへの解釈、収録現場の様子などを語っていただきました。
第2回目にお届けするのは、冷川理人役の羽多野渉さん。“幽霊”に対する見方が大きく変わる作品だと感じたそうです。また、オカルト好きな羽多野さんが今注目している話題など、大ボリュームでお届けします!
自分1人で演じきるのは難しかった
——最初に、原作または台本を読んだときの感想をお聞かせください。
冷川理人役・羽多野渉さん(以下、羽多野):ホラー漫画は結構好きでよく読んでいましたが、この作品は今まで感じたことのないような日常に寄り添うような怖さを感じました。
ただびっくりする怖さというよりは、夜1人でシャワーを浴びているときに後ろを振り向きたくないような感覚の怖さというか。
たとえばポルターガイストといった現象が起こったとして、、何か原因があってそういう現象が起きるという因果をちゃんと描いている作品なので、読み進めていくと怖くなくなっていく不思議な作品だなと。恐怖よりも興味や好奇心のほうが上回っていくと思います。
さらに、その奥にある人間同士の愛、絆、友情などいろいろなものを考えさせられる作品だと感じました。
——羽多野さん演じる冷川理人は、どこか掴めない謎めいた人物ですが、最初はどのようなキャラクターだと思われましたか?
羽多野:変わっている人だと思いました。これもやはり因果があって、何で変わっているのかが分かるまでは掴みどころのないキャラクターで、周りの人からしたら何を考えて行動しているのかが理解できない人だと。
彼の中では日本語を使って他者とコミュニケーションを取っていますが、その日本語の本当の意味や成り立ちをまったく知らないんです。なので、演じるのがすごく大変でした(笑)。
——具体的に、どのようなところが大変だったのでしょうか?
羽多野:出口がない迷宮に迷い込んでしまうというか、頭で考えることをやめる作業が役者としてはなかなか悩ましくて……。
日本語表現を正しく使って正しい距離感でアフレコをするという技術を10年近く培ってきましたが、冷川においては引き算をする必要がありました。
第1話の収録で監督さんから言われたのが「隣にいるんだけど、どこから聞こえて誰にかけているのか分からない言葉にしてほしい」と。
なので、ニュアンスなどを細かく変えて、普通の人が聞いたら違和感を覚えるセリフ回しを意識しました。これまで冷川のようなキャラクターを演じることがなかったので、僕自身初めての試みで難しかったです。
そもそも、お芝居をするときはみんな“セリフに芯があること”を目指します。活字を立体にし声にしてセリフにする作業の中で、人間の温度やその人が生きてきた人生みたいなものが感じられますし、そこで初めて“芯”ができるんですけど、“その芯を全部消してください”と第1話で言われまして(笑)。
収録中もそれは本当に苦労しましたし、羽多野渉が生きてきた年輪を感じさせないように、そのキャラクターがどうやってこれまで生きてきたのか、浮世離れしている様子や雰囲気というものを出してみてくださいというディレクションがとても新鮮な挑戦でした。
——それはまた、すごく頭の中がパンクしそうですね……。
羽多野:本当に頭の中がパニック状態でした。でも、それもたぶん監督の織り込み済みで、パニック状態のままとにかくやるよ!と引けない状態になって出たものが、結果“自分の計算ではないもの”なんです。
——なるほど……!
羽多野:家で練習してきたものとはまったく違う答えで、第1話の収録ではとにかく自分の頭の中がパンクしていました。なので正直、完成したものを見るときにはすごく怖かったです。ただ下手くそな声優に思われちゃうんじゃないかな、と。
でも、一言二言のセリフが入っているPVの公開後、原作を知ってくださっている方が「冷川っぽい話し方だった」と呟いてくださっていたのをネット上で見たときはすごく嬉しかったです。
——収録現場では、ほかに何かディレクションは受けましたか?
羽多野:表現が大きくなりすぎてしまって、監督さんに「もうちょっとここは抑えて」というディレクションをもらいました。
第1話の収録でキャラクターを表現する上では、まだふわふわとしていた状態だったので、“何で抑えるんだろう?”と理由を理解するのが難しくて。
でも、完成されたアニメーションを客観的に見たときに“あぁ!なるほど!”と。アニメーションのキャラクターと自分たちのお芝居、音楽などいろいろなものが合わさって1人のキャラクターが出来上がるんだなと強く感じました。
特に、冷川というキャラクターは自分1人で演じきるのは難しくて、監督さんや三角役の信長がいて初めて冷川が冷川になれるんです。
そういう意味ではすごく良いメンバーでお仕事ができましたし、完成したものを見て「チームプレーって本当に素晴らしいなぁ!」と改めて感じました。
——すごく素敵な現場とチームだったんですね。
羽多野:はい。コロナ禍での収録なので役者全員で集まって録ることはできませんでしたが、エピソードでやり取りする方とは一緒に録らせていただいたのですごく嬉しかったです。
基本的に、冷川と三角はずっと一緒なので、信長くんとも話をする機会がたくさんありました。信長くんも僕もそうですけど、作品に1回触れるともう愛が強くなっちゃって、収録が終わっても帰らないという(笑)。
——(笑)。
羽多野:ほかのキャストさんが収録ブースに入るときに、僕らがまだその場にいるから「何でいるんですか!?」と言われたこともありました(笑)。
そのぐらい作品の話をし出すと時間を忘れちゃって。それだけ作品愛のあるメンバーで、迎系多役の斉藤くんもこの作品がすごく大好きで詳しいんです。
たぶん『さんかく窓の外側は夜』ラジオをやったら喋りすぎて、2時間番組みたいになっちゃうと思います(笑)。作品好きな人が現場にいると、お芝居の面で何か迷ったときにもヒントがたくさんあるので、それがすごくありがたいです。
——何かヒントをもらったりしましたか?
羽多野:言葉で直接もらうというよりは、ほかのキャストさんのお芝居の中からヒントをもらいました。
冷川役でやらせていただけることをお聞きしたとき、音楽でもタイアップでED主題歌を担当させていただくことになってすごく嬉しかったですし、作品のことを深く勉強したいという気持ちもありました。
自分たちだけじゃなくて、すべてのセクションの人たちの情熱みたいなものを音楽というサイドからも見ることができたので本当に幸せです。