『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『THE TWINS』今石洋之監督インタビュー|TRIGGERが作れば「スター・ウォーズ」でも日本のアニメになる
日本を代表するアニメーション制作会社が『スター・ウォーズ』を新たな視点で9つの作品を描くビッグプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。現在、ディズニー公式動画配信サービスDisney+ (ディズニープラス)で独占配信中です。
本稿では、『THE TWINS』を手掛けた今石洋之監督へ行ったインタビューの模様をお届けします。
『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の中でもトップクラスに個性が出た『THE TWINS』。ひと目見れば今石監督×TRIGGERが作ったとわかるその世界が不思議と『スター・ウォーズ』の世界にマッチしているのはなぜなのでしょうか?『THE TWINS』が生まれたその軌跡に迫ります。
やる気満々の企画書が3日で完成!?
ーー『THE TWINS』はどのように作っていったのですか? ルーカスフィルムからのオーダーは?
今石:細かいオーダーはなかったんですよね。けっこう自由に作ってくれっていう感じだったと思います。その中でうちのチームはその企画と脚本を若林広海が作ってくれて、デザインのコヤマシゲトさんも最初から入ってくれました。
実は、企画書の段階でかなり作り込んだんです。もうその企画書にカラーのキャラ表とか入っていて(笑)。
ーーえー! すごい(笑)。
今石:ドロイドのデザインも書いてあって、色も付いていて、もう明日からコンテインにできますっていうくらいのやる気満々の企画書を作っていましたね(笑)。
ストーリーに関しては僕よりもスタッフが「スター・ウォーズ」に詳しいので、その辺はだいぶ任せて作っていましたね。
ーーそれはやっぱりスタッフのみなさんが「スター・ウォーズ」が好きだから、「やったぜ!」と盛り上がったからこそ、それだけスタートが早かったということですか?
今石:そうですね。いつもなら何をやるのかの意思疎通に半年くらいかかるものが、今回は3日ぐらいで終わるっていう(笑)。それはすごく面白かったですね。
ーー素人目では、「スター・ウォーズ」らしさと今石監督×TRIGGERらしさを混ぜ込むのに苦労したのかなと思っていました。
今石:むしろ、オリジナルで「スター・ウォーズ」ができるのだから、「スター・ウォーズ」で挑戦してみたいことをふんだんに入れていこうってなったんです。だから、むしろ間引くのが大変でしたね。
いつものTRIGGERというよりは、「スター・ウォーズ」でやりたいネタを優先した感じはあります。その中でTRIGGERのことを知らない人達が作品を見た時に驚くような。「『スター・ウォーズ』でこんなことやっちゃっていいの?」みたいな部分は限界まで入れてあると思います。突っ込まれること前提で入れているみたいな(笑)。「いや分かってやってますよ! これ!」って(笑)。
ーーとは言いつつも、戦うシーンで星みたいにキラキラ光るエフェクトが入っていたり、TRIGGERらしさを感じました。
今石:そこは日本のアニメっぽくしようとしていたんです。原作が実写映画だからそれから引用しようということではなく、それを解釈して日本のアニメっぽくするっていう意識。
つまり、私達がやるとTRIGGERのアニメっぽくなるっていう感じじゃないですかね。
今石監督が「スター・ウォーズ」を作るなら……?
ーーそもそも今回のお話が来たときはどのようなお気持ちでしたか?
今石:これまでもアメリカの映画が日本のアニメでオムニバスを作るという前例がありました。『マトリックス(アニマトリックス)』や『バットマン』などですね。そのパターンを「スター・ウォーズ」でもやるんだなと思いました。
会社としては、社長が「スター・ウォーズ」が人生のほとんどを占めているような人間なので、やらないっていう選択肢はなかったんですよね。「これは絶対やるぞ」みたいな感じだった気がします(笑)。やれなかった時のことはあまり考えなかった(笑)。
ーー(笑)。その中でも、今石監督自身がやるとしたらこうするよな、みたいな気持ちはありましたか?
今石:ひとつ思い付いたのはあったんですけど、しなかったですね(笑)。
ーーえー!
今石:これはズレ過ぎてるなと思って辞めた案はありました(笑)。 なんかエンタメにならないなっていうのがあって。今回はちゃんと真面目にやった方がいいやつだなとも思ったんです。
ーーなるほど。では、本当に「何でも好き勝手やってください」ってなっていたら、いつものTRIGGERの作品みたいになっていたんでしょうか?
今石:今のTRIGGERよりも酷いものだったんじゃないですかね(笑)。でもそれは、人様の作品でやることではないですからね。